13日、リオデジャネイロ五輪女子代表選考会を兼ねた名古屋ウィメンズマラソンがナゴヤドームを発着点に行われ、ユニス・ジェプキルイ・キルワ(バーレーン)が2時間22分40秒で大会連覇を果たした。日本人トップはキルワと39秒差の2位に入った田中智美(第一生命)。ロンドン五輪代表の木崎良子(ダイハツ)は10位、アテネ五輪金メダリストの野口みずき(シスメックス)は23位に終わった。リオ五輪の男女日本代表は17日、日本陸上競技連盟の理事会で決まる。

 

 最終選考会となった名古屋の舞台には、強行出場の可能性もあった福士加代子(ワコール)は欠場したものの、千両役者たちが揃った。日本記録保持者の野口、13年世界選手権4位の木崎と実績のある選手が出場。昨年の世界選手権代表の早川英里(TOTO)、14年の横浜国際女子マラソンで優勝した田中、同レースで10代日本人最高のタイムを叩き出した岩出玲亜(ノーリツ)などの実力者たちもエントリーした。

 

 レースは3人のペースメーカーに引き連れられ、先頭集団は15人以上の大所帯で進んでいった。入りの1キロは3分21秒。ペースは上下しつつ、5キロ通過は17分3秒だった。すると5.5キロあたりで早くも野口が遅れる。その後はなかなかペースが安定しないまま、少しずつ集団からふるい落とされながら、終盤戦へと突入していった。

 

 一気に展開が動いたのはペースメーカーがいなくなった30キロを過ぎたあたりからだ。キルワが一気にペースアップ。直後の給水地点ではスペシャルドリンクに見向きもせず、集団から抜け出した。一昨年のアジア競技大会では金メダル、昨年世界選手権では銅メダルに輝いたケニア出身の帰化選手が、実力を如何なく発揮した。

 

 そのキルワにいち早くついていったのが、田中である。2年前の横浜で優勝したのにも関わらず、代表を逃したのはタイムと内容に乏しいと判断されたからだ。序盤で先頭グループにつかず第2集団からの逆転勝ちは消極的ととられた。雪辱に燃える田中は、“文句なし”での代表入りを狙っているのだろう。

 

 縦に割れた集団。キルワ、田中に続くのはマラソン2戦目の小原怜(天満屋)だ。シドニー五輪の山口衛里以来4大会連続で代表に輩出している天満屋の25歳が、追いかける。小原は1年前の名古屋でマラソンデビューを果たした。しかし給水地点で転倒するなど3時間オーバーの124位に終わった苦い経験がある。木崎、岩出、初マラソンの清田真央(スズキ浜松AC)らが遅れる中、大きなストライドから小原は田中をつかまえる。

 

 37キロの手前で、ついに小原がキルワから離されていた田中をとらえた。一旦はかわすが、すぐに田中も食らいつく。リオへの想いを懸けた白熱のつばぜり合い。残り2キロ、1キロとなっても、並走を続ける。田中と小原のマッチレースの決着は、最後の最後まで分からなかった。ナゴヤドーム内に入る直前で田中がスパートをかける。最後の直線で前に出た田中を小原はとらえることができなかった。最後はわずかに1秒差で田中が先着した。田中は2時間23分19秒でフィニッシュし、自己ベストを3分近く更新した。

 

 優勝はキルワに譲ったが、田中は選考漏れの悔しさを晴らす快走だった。これでリオ五輪へ向け、大きく近付いた。大阪国際女子マラソンで2時間22分17秒の好タイムで優勝した福士加代子(ワコール)の代表入りも有力視されている。正式決定は17日の理事会を経てからだが、昨年の世界選手権での7位入賞で内定を勝ち取った伊藤舞(大塚製薬)以外の代表枠は、福士と田中になりそうだ。

 

 上位の成績は次の通り。

 

1位 ユニス・ジェプキルイ・キルワ(バーレーン) 2時間22分40秒

2位 田中智美(第一生命) 2時間23分19秒

3位 小原怜(天満屋) 2時間23分20秒

4位 清田真央(スズキ浜松AC) 2時間24分32秒

5位 岩出玲亜(ノーリツ) 2時間24分38秒

6位 桑原彩(積水化学)2時間25分9秒

7位 竹地志帆(ヤマダ電機) 2時間25分29秒

8位 ベテレヘム・モジェス(エチオピア) 2時間26分36秒

 

(文/杉浦泰介)