昨年のドラフトでオリックスから3位に指名された最速152キロの本格派右腕・佐藤達也。彼が野球を始めたきっかけは実にユニークに富んでいる。佐藤は今では珍しい7人兄弟の末っ子だ。3人の兄の趣味は、全員バスケットボール。そんな環境で育った佐藤がバスケットに興味をもったのはごく自然なことだった。当然、佐藤は「自分はバスケットをやっていくのだろう」と思っていた。ところが、地元の中学校にはバスケット部がなかった。そこで佐藤が選んだのが野球だったのだ。果たしてそんな彼がどのようにして野球を続けてきたのか。そして今、彼にとって野球とは――。
―― オリックスに3位指名を受けた時の気持ちは?
佐藤: 指名されたとしても下位だろうと思っていたので、3位という順位にはビックリしました。オリックスさんは大学時代からスカウトの方が熱心に見に来てくれていた球団なので、指名されて純粋に嬉しいと思いました。昨季はクライマックスシリーズ進出までもう少しだっただけに、今季は自分が入ったことで、力になれればと思っています。

―― 野球を始めたきっかけは?
佐藤: 実はもともと野球をやりたくて始めたわけではないんです。漫画『スラムダンク』の影響もあったと思うんですけど、3人の兄はバスケットが大好きで、家にはNBAのビデオがあったりしたんです。だからものごころついた時には、自分もバスケットに興味をもっていました。ところが、中学にはバスケット部がなかった。それで友達も入るというので、仕方なく野球部に入ったんです。まぁ、野球も嫌いではなかったので。

―― その野球を続けてきたのはなぜ?
佐藤: 高校ではバスケ部に入ろうと思っていた時期もありました。でも、地元の高校の野球部に誘っていただいたので、続けてみようかなと。大学、社会人も同様です。ただ、野球がなかったら今の自分はいないということは確かです。なんだかんだ言っても、自分にとって一番大事なモノになっているんですよね。

―― 野球に面白味を感じ始めたのは?
佐藤: 高校時代ですね。当時、プロに注目されているバッターと対戦するのが楽しかったんです。と言っても、バンバン打たれていましたけどね(笑)。それでも楽しかった。「やっぱり、すごいなぁ」なんて思いながら、レベルの高い選手と対戦するのが好きでしたね。

―― プロを意識し始めたのは?
佐藤: 大学3年くらいからだと思います。その頃からエースとして投げるようになって、スカウトの方も見に来てくれるようになったので。とは言っても、自分ではプロに行けるとは全く思っていませんでした。ただ、周りから「プロに行けるんじゃないか」と。だから4年の時にドラフトで指名がなかった時は、悔しさがなかったと言えば嘘になりますけど、正直「やっぱりな」と。自分ではプロに行けるほどの実力はまだないと思っていましたから。

 先輩・長野との対戦で実感したい成長

 社会人野球の名門・ホンダに入社し、3年間で球速は148キロから152キロに伸びた。このことが大学ではできなかったプロへの扉をこじ開ける最大の要因になったと佐藤は言う。自らを「先発ではなくリリーフタイプ」と分析する佐藤に、プロでの課題、目標を訊いた。

―― 球団からはどんな点を評価されたのか?
佐藤: 指名のあいさつの時に「先発でも中継ぎでも、どちらでもいける」と言ってもらいました。ただ、自分としては中継ぎの方が合っているかなと。最初から行くよりも、試合の状況を見ながら肩をつくって、ここぞという場面で行く方が、スイッチが入るんです。もちろん、将来的には先発をやってみたいという気持ちもあります。そのためには、もう2種類くらいは球種を増やさないと厳しいですね。

―― プロに入ってからの課題は?
佐藤: コントロールと変化球の精度を上げることですね。今までは勢いで押すタイプだったのですが、プロではそれだけでは通用しません。両サイドのコントロールを磨いていかないといけないと思っています。それと、スライダーだけでなく、フォークボールに自信をつけたいですね。そうすれば、もっと空振りもとれるようになって、ピンチの場面で三振が取れるような理想のピッチングができると思います。

―― フォームでの修正点は?
佐藤: 普段から姿勢が悪いので、投げる時も前かがみになってしまいがちなんです。そうすると、前に体重がいってしまって、頭の上下動が激しくなる。それがフォームの乱れる原因になっているんです。そういう部分をきちんと修正して、安定したピッチングができるようにしたいと思います。

―― プロで対戦したい打者は?
佐藤: ホンダで1年間一緒だった長野久義(巨人)さんです。実は自分が入社して初めてバッティングピッチャーをやった時に1人目が長野さんだったんです。そしたら初球を逆方向のライトスタンドに軽々と運ばれました。もう、そのパワーには圧倒されました。早くも社会人でやっていくのは無理だと思いました(笑)。結局、長野さんがホンダに在籍していた1年目は、自分は試合には全く出ることができませんでした。相変わらず、バッティングピッチャーでは長野さんにボコボコに打たれていましたしね(笑)。あれから少しは成長していると思うので、今の自分がどれだけ投げられるようになったのか、そういう意味で長野さんと対戦したいなと思っています。

―― プロでの目標は?
佐藤: 昨季の日本シリーズでは、福岡ソフトバンクも中日も、リリーフのピッチャーがすごくしっかりしていました。ああいうふうに日本シリーズの舞台で投げられるようなピッチャーになりたいですね。

 7人兄弟の佐藤にとって、彼が野球を続けることは決して容易ではなかった。だが、両親はもちろん、6人の兄弟たちが経済的にも精神的にも、佐藤を支え続けてきてくれた。だからこそ、彼はプロ野球選手になることができたのだ。インタビュー時にも飾らず、自然体の佐藤。ゆったりとしたその口調からも一見、楽観的に見えるが、家族への感謝の気持ちは人一倍強い。佐藤の恩返しはこれからが本番だ。

佐藤達也(さとう・たつや)プロフィール>
1986年7月26日、埼玉県生まれ。中学から野球を始め、高校で外野手から投手に転向。北海道東海大では3年秋に最優秀投手、ベストナインを受賞するなど、リーグ通算18勝をマークした。2009年にホンダに入社し、10、11年には都市対抗野球大会に出場。最速152キロの直球とスライダーが武器。178センチ、75キロ。右投右打。

(聞き手・斎藤寿子)

☆プレゼント☆
 佐藤達也選手の直筆サインボールを抽選で2名様にプレゼント致します。ご希望の方はより、本文の冒頭に「佐藤達也 選手のサインボール希望」と明記の上、住所、氏名、連絡先(電話番号)、この記事への感想をお書き添えの上、送信してください。当選は発表をもってかえさせていただきます。たくさんのご応募お待ちしております。