10日、競泳のリオデジャネイロ五輪日本代表選考会を兼ねた「第92回日本選手権水泳競技大会」最終日が東京辰巳国際水泳場で行われた。女子50メートル自由形決勝は池江璃花子(ルネサンス亀戸)が24秒76で優勝。100メートルバタフライ、200メートル自由形と合わせて今大会3冠を達成した。女子200メートル背泳ぎ決勝は酒井夏海(スウィン南越谷)2分10秒43で制し、100メートルに続き背泳ぎ2冠を成し遂げた。男子50メートル自由形は中村克(イトマン東進)が22秒09で初制覇。男子1500メートル自由形は山本耕平(ミズノ)が13分59秒61で2年ぶり3度目の優勝を収めた。池江、酒井、中村、山本はいずれも派遣標準記録に届かず、この種目での五輪代表決定とはならなかった。

 

 男子100メートルバタフライ決勝は藤井拓郎(コナミスポーツクラブ)が52秒03で実質8連覇(2011年は中止のため国際大会代表選考会)を果たした。派遣標準記録(51秒64)には届かず、同種目でのリオ五輪行きの切符獲得はならなかった。しかし、藤井は400メートルメドレーリレーの派遣標準記録(52秒36)をクリア。自由形の中村、平泳ぎの小関也朱篤(ミキハウス)、背泳ぎの入江陵介(イトマン東進)とのメドレーリレーメンバーとして代表入りを決めた。

 

 日本女子、次代のエースが躍進

 

 7日間で4種目12レースに出場した池江は、全種目で表彰台に上がった。タフな15歳は最終日の女子50メートル自由形を制して、3冠を達成した。

 

 準決勝2位で通過した池江は、50メートル自由形の日本記録保持者だ。決勝は連覇中の内田美希(東洋大)との一騎打ちが予想された。池江はスタートから飛び出すと、内田らをそのまま振り切った。自らの日本記録には0秒02届かなかったものの、24秒76で制した。この種目での派遣標準記録(24秒59)は突破できなかった。

 

 それでもリオ五輪への切符は100メートルバタフライ、800メートルフリーリレー、400メートルフリーリレー、400メートルメドレーリレーの4種目で手にした。今大会を振り返り、「良い記録も悪い記録もある。悔しかった経験を生かして、夏に頑張りたい」と語った。高校1年生がリオ五輪で世界に挑む。

 

 大会のラストを飾る女子200メートル背泳ぎは酒井が優勝。中学3年の酒井は背泳ぎ2冠で締めた。

 

 準決勝をトップ通過した酒井は堂々の第4レーン。決勝はスタートから飛ばした。50メートルを30秒05と高速水着時代にマークされた日本記録よりも速いペースで入った。100メートルで身体半分ほど抜け出したが、ラスト50メートルを切って川除結花(イトマン)にかわされる。それでも抜き返し、大会初制覇を成し遂げた。

 

 優勝タイムは2分10秒43。派遣標準記録には1秒67及ばなかった。「順位よりも派遣を切ることに目標にやっていたので、すごく悔しいです」。初優勝を決めても悔し涙を流した。個人種目ではいずれもリオ行きは決まらなかったが、100メートルで400メートルメドレーリレーの派遣標準記録(1分0秒25)は0秒13クリアしており、20年ぶりの中学生五輪代表となった。リオに向けて「自分はまだまだ。みんなに迷惑をかけないように、精一杯頑張っていきたいです」。14歳は意気込んだ。

 

 今大会で34人が五輪代表入りを決めた。4年前のロンドリン五輪より7人が多かった。中でも10代の池江と酒井は合わせて6種目で優勝した。200メートルバタフライで16歳の長谷川涼香(東京ドーム)、200メートル個人メドレーで15歳の今井月(豊川高)が代表入り。4年後の東京五輪への期待が高まる。女子は新時代の到来を予感させた。

 

 最終日の決勝結果は次の通り。

 

<男子50メートル自由形・決勝>

1位 中村克(イトマン東進) 22秒09

2位 塩浦慎理(イトマン東進) 22秒14

3位 伊藤健太(ミキハウス) 22秒40

 

<男子100メートルバタフライ・決勝>

1位 藤井拓郎(コナミスポーツクラブ) 52秒03

2位 川本武史(中京大) 52秒36

3位 安江貴哉(日大) 52秒43

 

<男子1500メートル自由形・決勝>

1位 山本耕平(ミズノ) 13分59秒61

2位 平井彬嗣(郵船ロジスティクス) 14分3秒34

3位 吉田惇哉(日大豊山高) 15分10秒41

 

<女子50メートル自由形・決勝>

1位 池江璃花子(ルネサンス亀戸) 24秒76

2位 内田美希(東洋大) 25秒19  

3位 松本弥生(ミキハウス) 25秒53

 

<女子200メートル背泳ぎ・決勝>

1位 酒井夏海(スウィン南越谷) 2分10秒43

2位 川除結花(イトマン) 2分10秒71

3位 後藤真由子(神奈川大) 2分10秒91

 

※選手名の太字は五輪代表に内定。藤井は男子400メートルメドレーリレーの代表。

 

(文/杉浦泰介)