4月20日の横浜DeNA戦が終わった時点で新井貴浩の通算安打は1994本。4月中での大台達成は、ほぼ確実な情勢だ。

 

 だが、カウントダウンが、このまま順調に進む保証はどこにもない。兄貴分の阪神現監督・金本知憲は、あと1本と迫ってから、大台達成までに19打席を要した。

 

 逆にいえば、プレッシャーとの戦いは、これからかもしれない。簡単に登れない山だからこそ、2000本には価値があるのだろう。

 

 過去に2000本安打(日米通算含め)を達成した日本人選手は48人いる。気になるのは、記録達成のその年に引退した選手が7人もいることだ。まるで記録を置き土産にでもするかのように。

 

 名前を挙げれば、加藤秀司(2055本)、和田一浩(2050本)、小久保裕紀(2041本)、新井宏昌(2038本)、野村謙二郎(2020本)らがそうだ。

 

 一方で巨人の井端弘和1軍守備走塁コーチのように、2000本安打達成を 目前にしてスパッと身を引いた選手もいる。「2000本安打を記録すれば皆、名選手なのか。僕は、そうは思っていない。2000本に届かなくても、素晴らしい選手はたくさんいる」。今年のキャンプで会った際には、そう語っていた。正論といえば、正論だろう。

 

 新井の兄貴分の金本は2000本達成から4年間プレーし、通算安打記録を2539本にまで伸ばした。大学、あるいは社会人を経てプロ入りした選手の中で、この数字は門田博光(2566本)、福本豊(2543本)に次いで、第3位である。

 

 話を新井に戻そう。産みの苦しみを味わうかどうかはともかく、彼が2000本安打を達成することは、まず間違いあるまい。

 

 問題は達成してからである。あくまでも2000本はゴールではなく、通過点だと思ってプレーしてもらいたい。幸か不幸か、カープに新井を超える和製のクリーンアップヒッターは、まだ育っていない。チーム事情を考えれば、2000本くらいで満足してもらっては困るのだ。

 

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)


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