9日、公益財団法人日本水泳連盟はロンドン五輪の競泳日本代表選手を発表した。今月2〜8日に行なわれた日本選手権の結果、男子13名、女子14名の計27名が日の丸を胸に、ロンドンの舞台に立つことが決定した。今回の競泳チームは4大会連続出場で最年長となった北島康介(アクエリアス)やアテネ大会以来となる寺川綾(ミズノ)といった経験者がいる一方で、萩野公介(御幸ヶ原SS)や渡部香生子(JSS立石)、大塚美優(スウィン大宮)、内田美希(スウィン館林)と4人の高校生が入るなどフレッシュなメンバーも多い。「センターポールに日の丸を」をスローガンに、“トビウオジャパン”がチーム一丸となってメダルを狙う。
 今から64年前、第二次世界大戦の敗戦国であった日本はロンドン五輪の舞台に立つことができなかった。当時、ロンドンの地で競泳が行なわれた同日、同時刻に競泳日本選手権が開催され、“フジヤマのトビウオ”の異名をもつ古橋廣之進(故人)が2種目で金メダリストを上回るタイムで優勝した話は、今でも語り草となっている。
「ロンドンでの五輪開催は3回目だが、日本は今大会が初めて。そういう意味では日本にとって思い入れの強い大会となる」
 そう語る泉正文日本水泳連盟専務理事の口調からも、日本競泳界の並々ならぬロンドン五輪への思いが伝わった。

 今回のチームの目標は金メダルを含む8個のメダルと20個の入賞。メダルに近い選手としては、北島、立石諒(NECGSC玉川)、松田丈志(コスモス薬品)、入江陵介(イトマン東進)、寺川、星奈津美(スウィン大教)、鈴木聡美(山梨学院大)、渡部の6人の名前が挙がった。しかし、目標達成のためには“チームづくり”が何より重要だ、と平井伯昌ヘッドコーチは言う。
「今回のチームは年齢差もあるし、五輪経験者よりも初出場の選手の方が多い。そういう中でミーティングできちんとチームづくりをしていきたい。そして、自分以外の選手の成功を喜べるチームにしたいと思っている」

 また、アテネ、北京に続いての3大会連続2冠に期待が寄せられる北島は、現在の心境を次のように語った。
「今は、いいことも悪いことも全て自分で受け入れられることができているので、挑戦するワクワク感、ドキドキ感が楽しいと感じている。プレッシャーはもうあまり感じてはいない。自分がやってきたことを全て出すだけだと思っている。4度目の五輪なので、いろいろな経験を踏まえてプレッシャーに打ち勝つ自信もある。五輪を楽しむと言うと語弊があるかもしれないが、きちんと準備をして、胸を張ってコース台に立てるようにしたい」

 国民はもちろん、最年長という立場からもチームからの期待の大きさは本人も十分に分かっていることだろう。しかし、平井ヘッドコーチからも「達人の域」と言われるほど心身ともに充実ぶりを見せている北島に、不安はない。
「レベルの高い選手が多い日本選手権できちんとトレーニングしてきたことが出せたことで、世界に対しても怖さはなくなった」
 そう語る北島の表情には、酸いも甘いも経験してきたベテランの冷静さと強さが垣間見られた。

 今回、メダリストには競泳日本代表オフィシャルパートナーであるGMOクリック証券株式会社から、「協賛社賞」として、メダル1個獲得につき、金メダル獲得者には3000万円、銀メダルには300万円、銅メダルには100万円が贈呈される(リレー種目は出場人数で均等に割る)。これを受けて佐野和夫日本水泳連盟会長は次のようにコメントした。
「昨年の世界水泳選手権での強化費に続いての取り組みということで、連盟としては感謝している。選手にはモチベーションアップにもつながる。こうした期待に応えられるよう、選手にはぜひ頑張ってもらいたい」

 果たして“トビウオジャパン”は悲願の「ロンドンの空に日の丸を」何度、掲げることができるのか。27名の精鋭たちの活躍を心待ちにしたい。

 代表選手は次の通り。

【男子】
松田丈志(コスモス薬品)自由形、バタフライ
入江陵介(イトマン東進)背泳ぎ
渡邉一樹(セントラルスポーツ)背泳ぎ ※初出場
北島康介(アクエリアス)平泳ぎ
立石諒(NECGSC玉川)平泳ぎ ※初出場
金田和也(金田SC)バタフライ ※初出場
萩野公介(御幸ヶ原SS)個人メドレー ※初出場
高桑健(自衛隊体育学校)個人メドレー
堀畑裕也(日本体育大学)個人メドレー ※初出場

【女子】
上田春佳(キッコーマン)自由形
寺川綾(ミズノ)背泳ぎ
鈴木聡美(山梨学院大)平泳ぎ ※初出場
松島美菜(セントラルスポーツ)平泳ぎ ※初出場
渡部香生子(JSS立石)平泳ぎ ※初出場
加藤ゆか(東京SC)バタフライ
星奈津美(スウィン大教)バタフライ
加藤和(山梨学院大)個人メドレー ※初出場
大塚美優(スウィン大宮)個人メドレー ※初出場
高橋美帆(日本体育大)個人メドレー ※初出場

【リレー】
小堀勇氣(能見SC) ※初出場
外舘祥(イトマン) ※初出場
石橋千彰(中央大) ※初出場
藤井拓郎(KONAMI)
松本弥生(日本体育大大学院) ※初出場
内田美希(スウィン館林) ※初出場
伊藤華英(セントラルスポーツ)
高野綾(イトマン) ※初出場