今季の四国アイランドリーグPlusは2007年以来、四国4球団による構成となる。チーム数は減ったものの、米独立リーグから各球団が2名ずつ外国人選手を獲得。NPBより育成選手の派遣も認められ、既に広島から3名がアイランドリーグ入りしている。さらに河原純一(元中日、愛媛)、橋本将(元横浜、愛媛)、桜井広大(元阪神、香川)と実績のある元NPB選手が復帰を目指して四国へやってきた。レベルの高い選手が入団したことにより、試合内容の向上はもちろん、選手育成の面でもさらなる効果が期待できそうだ。昨季以上の「Plus」を目指して8年目のリーグ戦に臨む各チームの戦力と注目選手を紹介する。
徳島インディゴソックス
★11年成績
前期 22勝8敗2分 1位
後期 18勝11敗3分 2位

 昨季は球団創設7年目にして初の年間王者に輝いたものの、独立リーググランドチャンピオンシップではアイランドリーグ勢で初めて日本一を逃した。コーチから昇格した島田直也監督は「今季に向けてのいい宿題ができた」と振り返る。野手は11名が残留し、主砲の大谷龍次、リーグ2位の打率(.370)を残した松嶋亮太(写真)に、新外国人のアレックスが加わったクリーンアップは強力だ。また下位にも長打力のあるベテラン根鈴雄次がおり、対戦相手は息が抜けないだろう。懸案だったリードオフマンにも3年目の俊足、東弘明が入る。機動力を活かした攻撃もより可能になった。

 不安なのは昨季の最多勝(15勝)大川学史、セーブ王(18S)の富永一(広島)が抜けた投手陣。レギュラーキャッチャーの山村裕也も現役を引退してNPB審判員に転向し、バッテリーの再構築が連覇へのカギを握る。新戦力では山口直紘(桜丘高−明治大学−千葉熱血MAKING)が「ボールにキレがあり、制球もまずまず」と指揮官の評価が高く、ローテーション入りした。キャッチャーは強肩の新人、山城一樹(浦添商高−東京ガス)で固定できそうだ。先発がゲームをつくれば、昨季、セットアッパーとしてリーグ初の防御率0点台(0.68)をマークした岩根成海がいる。カープドミニカアカデミーから派遣されたシモンやバレンティン、米独立リーグからやってきたジェイソンら助っ人の力も借りつつ、連覇を目指す。

香川オリーブガイナーズ
★11年成績
前期 13勝17敗2分 3位
後期 19勝9敗4分 1位

 昨季はリーグチャンピオンシップで敗れ、独立リーグ日本一奪回を目標に掲げる今季、攻撃面では心強い選手が入った。元阪神の桜井だ。3年前には一軍で12本塁打を放っており、パンチ力は折り紙付き。ヒジの故障に泣き、まだ守備はできないが、8日のホーム開幕戦では早速3安打を放ち、格の違いをみせつけた。主軸がしっかりしているだけにトップバッターの水口大地の出塁がポイントとなる。また新外国人のペレスは足とパワーを備えた内野手。「変化球への対応が課題」と西田真二監督は語るが、日本の野球に慣れてくれば打線を引っ張る存在になるかもしれない。

 投手は昨季の最多勝エース、高尾健太(写真)の出遅れが心配だ。伊藤秀範コーチは「練習生も含め、チーム内の競争で各選手のレベルは上がっている」と新しい力の台頭に期待を寄せる。新戦力の渡邊靖彬(藤枝明誠高−京都ジャスティス)は「球の回転が良く、ストレートとスライダーのコンビネーションで打者を牛耳れる」(伊藤コーチ)タイプ。また高卒左腕の中野耐(天王寺高)は制球力が良く、140キロ台の速球が投げられる。早い時期にデビュー登板が見られそうだ。5年目の西村拓也、1年目の後藤真人(天理高−佛教大−アークバリアドリームクラブ)と左の中継ぎも揃っており、“左腕王国”になる可能性を秘めている。また広島の育成選手、山野恭介は速球を武器に先発、中継ぎどちらでも使える。冨田康祐(横浜DeNA)に代わる抑えはイタリア代表としてWBCにも出場したマエストリが務めそうだ。

愛媛マンダリンパイレーツ
★11年成績
前期 18勝10敗4分 2位
後期 15勝14敗3分 3位

 徳島が年間王者になったことで四国4県で唯一、V経験のないチームになった。星野おさむ監督は「勝利と育成の両立」をテーマに2年目のシーズンに挑む。その点で大きな力になりそうなのは元NPB選手の河原と橋本だ。「練習の姿勢ひとつとっても若手のいい見本になっている」と指揮官もその効果を認める。橋本は扇の要、かつ打線の中軸として活躍が見込めるだろう。河原も昨季、中日で30試合に登板しており、調整さえできればフル回転が可能だ。

 投手陣では昨季2ケタ勝利(10勝)をあげた古舘数豊が先発の中心になる。変化球でストライクがとれ、バッターがタイミングを合わせにくい投球が魅力だ。また5年目の入野貴大(写真)も変則フォームを活かし、秋のドラフト指名を狙う。新人では27歳の井上貴信(北陵高−久留米工業大−佐賀スピリッツ)が「インコースにいいボールを投げられる」(星野監督)と好評価を受けている。野手では高知から昨季の盗塁王・流大輔が加わり、機動力が増した。昨季はクリーンアップがなかなか固定できなかったが、こちらも先述の橋本と新外国人のブレットがポイントゲッターとして期待できる。パンチ力のある高田泰輔、岡下大将らが開花すれば、強力打線に変貌を遂げるだろう。

高知ファイティングドッグス
★11年成績
前期 12勝16敗4分 4位
後期 11勝19敗2分 4位

 昨季は前後期とも下位に低迷した。しかし、3年前の独立リーグ日本一に貢献した右の野原慎二郎、左の吉川岳は健在で投手力は悪くない。また米独立リーグからやってくるチャーリーも制球力があり、計算できる。ルーキーではサイドスローの吉岡憧平(小倉西高−近畿大産業理工学部(中退))が楽しみな存在。球速は130キロ台だが、定岡智秋監督は「コントロールの良さとボールのキレで勝負できる」とみている。また速球派右腕の孫一凡(高知中央高)も近い将来、NPBを目指せる素材だ。

 投手陣をリードするキャッチャーは、飯田一弥(福岡ソフトバンク)が抜けた穴を肩の強さが売りの新人・屋宜宣一郎(知念高−沖縄国際大)が埋める。打線は新外国人のキースが4番に座り、昨季、いずれも打率3割以上をマークした西本泰承、曽我翔太朗が脇を固める。21歳の若きホームラン王・迫留駿(写真)が確実性を増せば、かなりの得点が見込めるだろう。NPBでも指導経験豊富な弘田澄男総合コーチ、高柳秀樹コーチが就任し、コーチングスタッフも充実した。高知球場に待望のナイター設備が完成したことにより、夏場の炎天下に試合をする必要がなくなった点もプラス材料だ。昨季は相次ぐケガ人に悩まされただけに、故障者防止も巻き返しの必須条件である。

(石田洋之)