11日、世界ボクシング評議会(WBC)フライ級タイトルマッチ12回戦が、東京有明コロシアムで行なわれ、王者・内藤大助(宮田)が同級14位の亀田大毅(協栄)を3−0の判定勝ちをおさめた。
 これで内藤は徳山昌守(金沢)が持つ世界王座の国内最年長防衛記録を1年8カ月更新した。
(写真:判定ながら挑戦者・大毅(右)に完勝の内容で初防衛を果たした王者の内藤)
 注目の一戦は、終わってみれば王者の完勝だった。
 序盤、ガードを固めて突進する挑戦者・大毅に対し、内藤は足を使いながら左右のボディー、フックと多彩なパンチで攻める。
 内藤は3R、右まぶたが切れるアクシデント(レフェリーは有効打と裁定)に見舞われたが、その後も手数で圧倒。一方の大毅は堅いガードで内藤の攻撃こそしのぐが、思うような距離がとれないのかまったく手が出せない。
 9R、大毅は頭突きやクリンチの際に内藤を投げ飛ばしたり、反則のパンチを繰り出す。思わず熱くなった内藤が倒れた大毅にパンチを与え、1点の減点。大毅の立て続けのラフファイトに、場内をブーイングが包む。
 異様な雰囲気の中、迎えた最終12R。大毅は距離を詰めるも、手が出ない。内藤を持ち上げるなど反則行為を繰り返し、計3点の減点。荒れた展開となったが、手数で圧倒した王者・内藤が、117−107、117−107、116−108の3−0で挑戦者を下し、初防衛とともに、国内最年長防衛記録更新を果たした。

 試合後、内藤は、リング上で「亀田に勝ったという結果を素直に喜びたい。ポンサクレックに比べると全然弱かった。亀田に黒星をつけたということで、国民の期待に応えられたと思う」と喜びを語った。
 前日の調印式で「負けたら切腹する」と息巻いていた大毅は、場内からヤジが飛ぶ中、足早にリングを去り、予定していた会見もキャンセルしノーコメントのまま会場を後にした。

内藤、「国民に喜びを伝えたい」
 荒れた試合となったが、王者の貫録で完勝を果たした内藤は、試合後の会見で「自分にはキャリアがある。亀田だからといって特別な意識はなかったが、プレッシャーや緊張は普段以上にあった。それが力みにつながったかもしれない。殴り合いして勝てる自信もあったが、結局殴り合いにはならなかった。ファンの声援は本当にうれしかった。一人一人、お礼を言いたい気分」と笑顔で振り返った。
 大毅の印象については「力の差は見せられたと思うが、思ったよりやりにくい相手だった。よく練習しているだけあって、パンチも当たらなかったし、フェイントにも引っかからなかった」と語り、「(大毅は)見えないところで反則が多かった。そんなことしなくても、良い選手なのだから、もっと良いところを磨いた方がいいと思う。もっと良い試合ができたはず」と、冷静に語った。
 大毅の「切腹」宣言については、「負けても切らないことは最初から分かっている。どうせ『内藤は約束していないから成立していない』と言われるだけ」と流し、「喜びを誰に伝えたいか?」との質問には「国民です(笑)」と笑顔で答えた。
 宮田会長は、「内藤のキレのあるパンチが空振りしていたし、大毅君は良い選手だと思った。ただ、(反則行為によって)私たちが作り上げてきたリングを汚されたという思いはある。非常に残念。内藤も悔しかったと思うが、我慢して最後までクリーンに戦ってくれた」と愛弟子を称えた。
 今日の結果で、今後、亀田兄弟の長男・興毅が内藤に挑戦する可能性も出てきたが、「しばらくゆっくり休みたい」と苦笑いでかわした。

大橋秀行・東日本ボクシング協会会長のコメント
「(大毅は)精神的な強さは見せたと思うがジャブが出なかった。最後(12R)はいただけなかった。まだ18歳。もう少し左ジャブが打てるようになれば怖い存在になるのではないか」