魔裟斗、4年ぶりの王座奪還ならず――。
 10月3日、日本武道館で「K-1 WORLD MAX 2007 〜世界一決定トーナメント決勝戦〜」が行われ、05年王者のアンディ・サワー(オランダ/シュートボクシング オランダ)が2年ぶり2度目の優勝を飾った。
 日本のエース魔裟斗(シルバーウルフ)は決勝トーナメント1回戦の準々決勝で04、06年王者ブアカーオ・ポー.プラムック(タイ/ポー.プラムックジム)に判定勝ち、続く準決勝でアルトゥール・キシェンコ(ウクライナ/キャプテン オデッサ)にKO勝利をあげたが、決勝でアンディ・サワー(オランダ/シュートボクシング オランダ)に敗れ、悲願の優勝はならなかった。
(写真:2年ぶり2度目の優勝を手にしたサワー)
 歴代世界王者4人が顔を揃えた過酷な決勝トーナメントは、目の離せない試合が続いた。
 会場がもっとも沸いたのは、日本のエース魔裟斗と王者ブアカーオとの決勝トーナメント準々決勝だった。
 史上初の連覇を狙うブアカーオに対し、前日の会見で「どんな形でもいいからとにかく勝ちたい」とコメントしていた魔裟斗は、その言葉どおり、気合十分。会場を包む「魔裟斗」コールに後押しされるように、序盤からスピードのある右ストレート、アッパーを繰り出し積極的に攻める。
 ブアカーオは、右ローキックを中心に応戦。1R終盤、魔裟斗の左アッパーからの右ストレートでブアカーオがダウン。2R以降、ブアカーオのローキックでやや攻撃の脚が止まる魔裟斗だったが、右ストレート、アッパーなど確実にヒットさせていく。3Rも危なげなく戦いきり、判定3−0で大きな白星をあげた。
(写真:ブアカーオ(左)を攻める魔裟斗(右))
 敗れたブアカーオは試合後、「ローキックが効いていた感触はあったが、魔裟斗のパンチへの対応でキックとのコンビネーションが出せなかった」と振り返り、「残念だが言い訳ができない負け。魔裟斗は技術面、精神面でレベルアップしていた。今日は完敗」と魔裟斗の勝利を称えた。

 最大の山場と見られていたブアカーオ戦を突破した魔裟斗は続く準決勝、初戦で剛腕・マイク・ザンビディス(ギリシャ/Zambidis Club)を延長の末に破った20歳の新鋭アルトゥール・キシェンコ(ウクライナ/キャプテン オデッサ)と対戦。1Rにはキシェンコの右ストレートで腰を落としかけるなどヒヤリとする場面もあった魔裟斗だが、2R41秒、激しい打ち合いの中で左フック一閃! マットに沈んだキシェンコは立ち上がることができず、魔裟斗はKOで決勝進出を決めた。

 逆のブロックも激戦が続いた。もう1人の日本人ファイター佐藤嘉洋(フルキャスト・名古屋JKファクトリー)は、準々決勝で初代王者のアルバート・クラウス(オランダ/チーム・スーパープロ)と戦い、最後まで一歩も引かない激しい打ち合いを演じたものの、判定で敗れた。
 サワーは準々決勝でドラゴ(アルメニア/チーム SHOW TIME)と対戦、2R1分43秒KO勝ちをおさめた。

 準決勝のサワー×クラウスは、実力者どうしの見ごたえのある試合となった。パンチで圧力をかけるクラウスにサワーは左ミドル、左ロー、パンチの連打からの右ローで応戦。お互いに動きを止まることなく攻め続ける。サワーのローでダメージを見せるクラウスだが、一歩も下がらない。互いにも譲らない激戦となったが、判定2−0でサワーが3年連続で決勝にコマを進めた。

 魔裟斗×サワーの決勝戦。序盤から激しい打ち合いが繰り広げられる。サワーは魔裟斗のパンチをしのぎながら、ローキックで攻める。2R終盤、、魔裟斗の脚が限界に達し、立っているのもやっとの状態に。3R開始前に魔裟斗のセコンドがタオルを投入。サワーの2年ぶり2度目の優勝が決まった。
 ブアカーオ戦では勝利をあげたものの、4年ぶりの王座奪還は惜しくも逃した魔裟斗は、ブアカーオ戦でのすねへのダメージを明かし「1回戦が終わった時にもうやめたかった(笑)。でも今まで優勝するためにやってきたし、悔いの残らないようにベストを尽くした。スタミナは問題なかったけど、足がダメだった」と振り返った。悔しさを見せながらも力を出し切ったという充実感も漂わせた魔裟斗は「トーナメントはもういい(笑)。元気になったら大みそかにアンディと決着つけたらいい」とサワーへのリベンジへの意欲も見せた。

(写真:会見ではサワーも満身創痍だったことを明かした)
 王者に返り咲いたサワーは、リング上で「勝てて嬉しい。最近、2人目の息子が生まれたので、今日の勝利は息子に捧げたい」と喜びを語った。試合後のインタビューでは「トーナメントはいろんなことが起こり得る。それを理解した上で自分の戦いをすることに集中した。魔裟斗戦で自分のすべてを出し切った。今はあちこち痛んでいる。家族のみんなにベルトを見せたい」と笑顔を見せ、魔裟斗の「大みそか決着」発言に対しては、「自分はいつでも準備できている」と受けて立つ構えを見せた。

 谷川貞治K-1イベントプロデューサーは、ブアカーオから白星をあげた魔裟斗について「たいしたものだな、と。ブアカーオ戦の後、普通に歩けない状態だった。拳も痛めていた。通常であれば戦える状態ではなかったが、決勝でも2Rまで戦い切ったことは素晴らしい。やはりMAXを背負う選手。今まで自分が出会った格闘家の中でナンバー1」と絶賛。「神様は1つ宿題を残してくれた。今日ブアカーオを倒したので、次はサワーを倒してほしい」と期待を寄せた。

“絶対王者”と呼ばれたブアカーオを自ら指名し、王座奪還に向け大きな勝負に出た魔裟斗だが、悲願達成はならず。ベルトこそサワーに譲ったものの、日本のエースとしての存在感を存分に示した。

試合結果は以下のとおり。

<第1試合> ※スーパーファイト
○HIROYA(日本/フリー)
3R判定3−0
×クォン・オルチャン(韓国/清武ジム)

<第2試合> ※リザーブファイト
○ヴァージル・カラコダ(南アフリカ/ウォリアーズMMAアカデミー)
3R1分56秒KO
×小比類巻貴之(日本/チーム ドラゴン)

<第3試合> ※トーナメント準々決勝
○魔裟斗(日本/シルバーウルフ)
3R判定3−0
×ブアカーオ・ポー.プラムック(タイ/ポー.プラムックジム)

<第4試合> ※トーナメント準々決勝
○アルトゥール・キシェンコ(ウクライナ/キャプテン オデッサ)
3R判定1−0ドロー 延長3−0
×マイク・ザンビディス(ギリシャ/メガジム)

<第5試合> ※トーナメント準々決勝
○アルバート・クラウス(オランダ/チーム・スーパープロ)
3R判定3−0
×佐藤嘉洋(日本/フルキャスト・名古屋JKファクトリー)

<第6試合> ※トーナメント準々決勝
○アンディ・サワー(オランダ/シュートボクシング オランダ)
2R1分43秒KO
×ドラゴ(アルメニア/チームSHOW TIME)

<第7試合> ※トーナメント準決勝
○魔裟斗
2R0分41秒KO
×アルトゥール・キシェンコ

<第8試合> ※トーナメント準決勝
○アンディ・サワー
3R判定2−0
×アルバート・クラウス

<第9試合> ※スーパーファイト
○イ・スファン(韓国/韓国体育館)
3R判定3−0
×安廣一哉(日本/正道会館)

<第10試合> ※トーナメント決勝 
○アンディ・サワー(準決勝第8試合勝者)
2R終了TKO(タオル投入)
×魔裟斗