6年目を迎えたBCリーグが、21日いよいよ開幕する。今季は6球団中、群馬ダイヤモンドペガサス、新潟アルビレックスBC、富山サンダーバーズ、福井ミラクルエレファンツと4球団が新指揮官に代わるなど、フレッシュさが漂う。昨季は石川ミリオンスターズが連覇を達成。さらに四国アイランドリーグplusとのチャンピオンシップでリーグ史上初の優勝を果たし、栄冠に輝いた。果たして、今季はどのチームが独立リーグ日本一の座を争う権利を得るのか。各チームの戦力を分析したい。
<上信越地区>
 新監督&新人19人とゼロからのスタート 〜群馬ダイヤモンドペガサス〜
 昨季は創設以来、守り続けてきた上信越地区チャンピオンの座を新潟に明け渡した群馬。今季はその雪辱を果たし、3季ぶりとなる王座奪還への気持ちは強い。創設以来4年間、指揮を執ってきた秦真司前監督(現・巨人1軍バッテリーコーチ)の後継者として、2代目指揮官に就任したのが五十嵐章人監督だ。昨季までの5年間、福岡ソフトバンクの2軍コーチを務めており、その指導力に注目したい。さらに、選手も19人が新人と大幅に入れ替わった。特に投手陣は昨季のチームから残ったのは4年目の堤雅貴(高崎商業高)と2年目の栗山賢(日本文理高−鷺宮製作所)のみ。それだけに新たに加わった投手陣の活躍は不可欠となる。注目の一人が、NPB出身でコーチを兼任する藤田宗一(島原中央高−西濃運輸−千葉ロッテ−巨人−福岡ソフトバンク)だ。主にセットアッパーとして活躍し、NPBでの通算登板は600試合を数える。チームにとっては唯一のサウスポーということもあり、貴重な存在だ。また、入団当初からNPB入りに大きな期待を寄せられている堤にも注目したい。威力ある直球とキレのあるスライダーを武器とする右の本格派の堤は、7勝、8勝、7勝と3年連続チーム最多勝利を挙げ、エースとしてチームからの信頼も大きい。しかし、防御率はリーグトップの1.55を誇った1年目が最高で、2年目は2.51、3年目は3.02と下降線をたどっている。果たして4年目の今季は1年目の輝きを取り戻すことができるか。一方、1年目の昨季、肩の故障で前期は本来のピッチングができずに苦しんだ栗山は、フォーム改造が功を奏し、9月の信濃戦では完封勝利を収めた。2年目の今年、その真価が問われる。独立リーグ経験者の清水信寿(豊田西高−中京大−エイデン愛工大BLITZ−三重スリーアローズ)にも即戦力としての期待が寄せられている。150キロ台の直球が自慢の米独立リーグ出身、ロバート・ストレッカーも面白い存在だ。昨夏、県大会でベスト4進出の立役者となった内山哲次郎(前橋工)には、地元からの期待がかかる。まさにゼロからのスタートである群馬。オープン戦では1勝3敗と負け越したが、果たして本番ではどんな野球を見せてくれるのか。

 投手陣の再建がカギに 〜新潟アルビレックスBC〜
 昨季、初めて地区チャンピオンシップを制した新潟。特にリーグトップのチーム防御率2.96を誇った投手陣は安定感抜群だった。だが、チーム最多の11勝をマークし、先発の大黒柱だった雨宮敬(巨人)、貴重な左の先発として地区優勝に貢献した正田樹(東京ヤクルト)、高卒ルーキーながら7勝を挙げ、さらなる飛躍が期待された渡辺貴洋(ともに巨人)がNPB入り。さらに不動のクローザーとして君臨した高津臣吾は、今季は兼任監督に就任し、「あくまでもメインは監督業」と、自らは戦力としては計算していないことを明言した。それだけに、投手陣の再建が今季のカギを握ると言っても過言ではない。そんな中、3年目の寺田哲也(作新学院高−作新学院大)への期待が高まっている。これまで6勝9敗、6勝6敗と一度も勝ち越したことはない寺田だが、今季は低めへのコントロールがよく、安定したピッチングを見せている。オフにコロンビアのウインターリーグでチームの初優勝に貢献した間曽晃平(横浜商業高−神奈川大)、阿部拳斗(中越高−新潟証券)らとともに、投手陣の柱を担う。一方、打線の中心は長打力をウリとする昨季打点王の福岡良州(流通経済大学付属柏高−流通経済大)と、抜群のミート力を誇り、昨季首位打者の稲葉大樹(安田学園高−城西大−横浜ベイブルース)だ。監督に就任した高津は、今季が現役最後としている。日米韓台を渡り歩き、経験豊富な指揮官がどんな采配を見せるのか、注目したい。

 今季こそ唯一優勝未経験の汚名を返上! 〜信濃グランセローズ〜
 昨季は後期、残り3試合で優勝マジック2と、初優勝まであと一歩と迫った信濃グランセローズ。その優勝争いを演じたメンバー15人が残っているだけに、チームには安定感がある。特に昨季リーグトップのチーム打率2割8分をマークした打線は、今季も好調だ。09年には首位打者に輝き、昨季もリーグ2位となる3割6分3厘の高打率を残した竜太郎(松商学園高−明治大−ヤマハ−オリックス−東北楽天)をはじめ、ともに打率3割台をマークした今村亮太(佐久長聖高−東京経済大)、原大輝(広島国際学院高−北海道東海大)ら好打者を中心に、パワーのある新助っ人、元阪神のマルコス、さらに、10年の首位打者で今季、群馬から移籍した大谷尚徳(世田谷学園高−立正大−フェデックス)や、NPB出身で長打力のある大平成一(波佐見高−北海道日本ハム)もおり、今季の打線も高い得点能力を誇る。一方、投手ではイタリアのプロリーグで活躍したカルロスに期待が寄せられる。188センチの長身から投げ下ろされる140キロ台の直球は威力十分。カーブ、スライダー、チェンジアップ、シンカーと変化球も多彩だ。2年連続リーグワーストの失策数を記録した守備が最大の課題でもあり、初優勝へのカギでもある。主将に就任した松本匡礼(松商学園高−松本大)や、新潟から移籍してきたユーティリティープレーヤーのハヤト(浦和学院高−千葉熱血MAKING−サウザンリーフ市原)を中心に、堅固な守備をしきたい。

<北信越地区>
 元阪神の杉山が守護神に 〜富山サンダーバーズ〜
 4季ぶりのリーグ優勝を目指す富山。そのカギを握るのが、守護神として期待を寄せられている元阪神の杉山直久(舞鶴東高−龍谷大)だ。オープン戦最終戦となった16日の福井戦では最終回にマウンドに上がり、最速145キロの直球を中心にキレのあるボールで打者を翻弄。順調な仕上がり具合を見せた。さらに、リリーフ候補の一人、最速156キロを誇る米マイナーリーグ出身のメサが課題の制球力を克服し、戦力として加われば、豪華な投手リレーが見られそうだ。一方、打線は元東北楽天の松井宏次(磐田農業高−東海大−きらやか銀行−東北楽天)、強肩強打を誇る元横浜の杉本昌都、そして大阪桐蔭時代には甲子園で活躍した俊足(50メートル5秒8)の生島大輔(早稲田大−JR東日本)と、好打者が並ぶ。オープン戦ではなかなか結果を出せなかった富山だが、ポテンシャルの高い打者が多く揃うだけに、開幕後は本領発揮といきたいところだ。

 今季は打のチームに!? 〜石川ミリオンスターズ〜
 今季も森慎二監督が率いる石川は、リーグ初の3連覇、そして昨季に続いて独立リーグ日本一の座を狙う。注目は米国マイナーリーグ出身などの外国人選手を入れるなど、強化を図ってきた打線だ。3勝1敗1分の成績を収めたオープン戦では、勝利した全3試合で6点以上を奪い、一応の成果を見せている。既存選手の中では昨季、打率(2割9分8厘)、打点(45)、本塁打(11)といずれもチーム最多をマークした主砲の謝敷正吾(大阪桐蔭高−明治大)に注目したい。福井、新潟とのプレーオフでは5試合連続打点を叩き出すなど、リーグ連覇に大きく貢献した。NPBへの挑戦は今季が最後と語っているだけに、昨季以上の活躍が期待される。一方、投手陣は昨季リーグ記録となる17勝を挙げた絶対的エースの南和彰(神港学園高−福井工業大−巨人−カルガリーパイパース)が残留し、元横浜の松山傑(横浜商科大附属高−北海道日本ハム−横浜)と元広島の松田翔太(金沢学院東高−広島)が加わった。さらに米マイナーリーグ3Aでプレーした経験のあるハモンドは貴重な左腕として期待されている。今季は、投手戦を得意としていた昨季までとはひと味違う石川が見られそうだ。

 新加入・伊勢田のパワーに注目 〜福井ミラクルエレファンツ〜
 昨季は後期で優勝したものの、地区チャンピオンシップでは石川に敗れ、2年連続プレーオフで涙をのんだ福井。2年間、指揮を務めた野田征稔前監督に代わって指揮官に就任したのが現役時代、内野のユーティリティープレーヤーとして活躍した酒井忠晴監督だ。その酒井監督同様、ユーティリティープレーヤーとして阪神、ソフトバンクでプレーした大城祐二(沖縄水産高−TDK千曲川)、さらに一発のある伊勢田翔(横浜商科大高−新潟アルビレックスBC−紀州レンジャーズ)が加入。昨季、全打撃部門(打率、打点、本塁打、盗塁)でリーグベスト10に入った内田享良や、昨季限りで現役を引退し、今季よりコーチに就任した織田一生の穴を埋める即戦力として期待される。一方、投手陣は10年に最多勝(16勝)に輝き、昨季もチーム最多の9勝と、今や自他認めるエースとなった藤井宏海(福井高−千葉ロッテ−三菱自動車岡崎)、藤井とともに投手陣の柱である高谷博章(北海高−浅井学園大)に、石川から移籍した蛇澤敦(北越高−ルネス学園金沢)、190センチの長身から投げ下ろす140キロ超の直球を武器とする大型右腕・関口貴之(小豆島高−東北福祉大−九州三菱自動車)などが加わり、コマは揃った。今季こそ、地区チャンピオンシップの壁を破り、次なるステージに進出したい。