昨年に引き続き、今年も四国アイランドリーグPlus選抜チームを率いて、北米遠征に参加しました。約3週間に渡って北米強豪の独立リーグ“Can-Am League”に所属する6球団と19試合戦い、結果は8勝11敗。惜しくも勝率5割には届きませんでしたが、内容的にも接戦が多かったので十分な結果だと思います。昨年は右も左も分からないような状態でしたが、今年はスタッフを多く連れて行ったこともあり、非常に充実した遠征になりました。

 

 目立った活躍をしたのは、3割以上の高打率を残したザック・コルビー(高知)と平間隼人(徳島)です。ザックは開幕戦でいきなり2ランを放ち、その後も好調を維持したことでカナダのトロワリヴィエール・エーグルスにレンタル移籍が決まりました。7月3日から20日までの短期間ですが、アイランドリーグからCan-Am Leagueへのレンタル移籍は初めてです。

 

 北米遠征で選手たちは刺激をたくさん受けたようで、加藤次郎(香川)は「このまま残りたいです」と言っていました。彼は残念ながら現地の球団から誘いがなかったので、泣く泣く帰国しましたが、加藤のように海外でのプレーを望む選手はいると思います。今回のザックのレンタル移籍をきっかけに、今後さらにリーグの交流が深まれば嬉しいです。

 

 外国人チームには機動力とコントロールで勝負

 今回の遠征を通じて、外国人選手と日本人選手の戦い方の違いを感じました。外国人バッターは体格が大きくてパワーがあるので、対戦していてホームランでゲームを簡単に引っくり返されることがしばしばありました。日本人選手は体が小さいので、パワーでは到底敵いません。また、外国人投手が投げる球は速くて重いので、打ってもなかなか飛ばないんです。機動力などを生かした細かい野球で対抗すべきでしょう。

 

 ピッチャーではアイランドリーグに重い球を投げられる選手はいませんが、その代わりにボールのキレでは負けていません。ボールにキレがあると球速以上に速さを感じるので、外国人バッターにも有効でした。あとは、コントロールを生かした配球の組み立て方で補っていかなければなりません。体の大きい外国人選手に勝つためには、ただ投げて打つのではなく、工夫しながら戦うことが大切です。

 

 今回はアメリカとカナダを移動して試合を行いましたが、海外の球場はグラウンドが全面天然芝だったので、選手たちは慣れるまでに時間がかかりました。内野が芝生だとボールの勢いが死んでしまうので、人工芝や土のグラウンドでなければ一二塁間や三遊間を抜けるヒットが内野ゴロになるシーンも見受けられました。またグラウンドの土が日本よりも硬かったので、キャッチャーはワンバウンド捕球に苦戦し、パスボールが多かったです。

 

 ただ今年は何よりもチームワークが素晴らしかった。昨年は初めての遠征だったということもあり、他チームの選手には遠慮がちでした。しかし、今年は四ツ谷良輔(愛媛)と宗雪将司選手(香川)らが中心になってチームをまとめてくれました。選手同士が声を掛け合って遠慮せずにプレーできたのは、いい雰囲気作りをしてくれた彼らのお陰です。

 

 さて北米遠征が終わり、いよいよ7月31日から後期が始まります。徳島は前期本塁打トップのハ・ジェフンが東京ヤクルトに移籍したことで、4番バッターが抜けました。正直、4番の穴を埋めるのは厳しいですが、選手たちには「お前らにとってチャンスだ」と発破をかけています。“どうしよう”ではなく、“ラッキー”とプラスに捉えて後期を迎えて欲しいですね。前期は首位に0.5ゲーム差の2位だったので、後期は優勝できるよう頑張ります。

 

中島輝士(なかしま・てるし)プロフィール>:徳島インディゴソックス監督
1962年7月27日、佐賀県出身。柳川高時代はエースとして3年春の甲子園に出場。プリンスホテルに進んで野手に転向する。87年のソウル五輪予選で日本代表に選ばれて活躍。本大会でも好成績を残し、チームの銀メダル獲得に貢献する。89年に日本ハムにドラフト1位で入団。1年目に史上2人目となるルーキーの開幕戦サヨナラ本塁打を放つ。92年はオールスターに出場し、打率.290、13本塁打をマークした。96年に近鉄に移籍後、98年限りで引退。その後は近鉄や日本ハムで打撃コーチ、スカウトを歴任。11年には台湾の統一セブンイレブンでコーチとなり、12年途中からは監督に昇格する。14年は徳島のコーチを務め、15年から監督に就任。


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