バルセロナからメッシ、ネイマール、スアレスがいなくなったらどうなるか。あるいは、レアル・マドリードからクリロナ、ベンゼマ、ベイルがいなくなったら。

 

 もはや別のチームである。

 

 五輪サッカーは、だから難しい。これがW杯であれば、予選での戦いから本大会でのシステムなり実力なりを占うのは決して不可能ではない。突如として17歳の天才児が現れる、などということがない限り、チームの戦力はそんなに変わるものではないからだ。

 

 ところが、五輪サッカーでは3人のオーバーエージ枠が設けられている。言ってみれば3人の助っ人が加わるわけで、チームは、予選の時とはほぼ別物になっている可能性もある。よって、五輪サッカーの勝敗を占うのは、W杯よりはるかに難しいものなのだ。

 

 大きな大会が行われる際、わたしはブックメーカーのオッズを確認するのが常なのだが、さしもの予想のプロたちも、五輪サッカーにはてこずっているようだ。

 

 というのも、オッズの多少のズレはあれど、人気の順番に関してもどこもほぼ同じ場合が多いW杯と違い、五輪サッカーの人気はブックメーカーによってかなり違いがある。

 

 日本が入ったグループBを見ても、あるブックメーカーがナイジェリアをグループの1番人気に推しているかと思えば、あるブックメーカーはコロンビアを推している。また、あるブックメーカーはスウェーデンが一番力が落ちると見ているが、あるブックメーカーでは日本の力がどん尻に違いないと踏んでいる。

 

 つまりは、どこがグループを勝ち抜けても不思議ではないし、どこが優勝しても驚きではないのが五輪のサッカーなのである。まして、今年のサッカーはレスターの優勝に始まり、アイスランドの躍進、ポルトガルのユーロ優勝など、何十年に一度あるかないかという大荒れの展開が続いている。リオ五輪でも本命ブラジルがそのまま優勝する、とはちょっと考えにくい。

 

 願わくば、大荒れの波に乗って日本も突っ走ってもらいたいものだが、カギを握るのは、やはりナイジェリアとの初戦ということになるだろう。

 

 96年のアトランタ以降、日本は5大会連続で五輪本大会に駒を進めているが、初戦を落としてからのカムバックは一度もない。初戦で負ければ、ほぼアウト。そんな歴史を考えれば、何が何でもナイジェリア相手に勝ち点をゲットする必要がある。

 

 ただ、ものは考えようで、もし初戦を落とし、それでも決勝トーナメント進出を果たせたとしたら、W杯を含め、日本サッカー界にとって最初の快挙ということになる。若い選手たちにとっては、目指し甲斐のある勲章ではないか。

 

 全敗もあれば全勝もある。それが、今回の五輪における日本の立ち位置だとわたしは見る。個人的な期待値は、4年前よりも、高い。

 

<この原稿は16年7月21日付『スポーツニッポン』に掲載されています>


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