6月1日、男子バレーボールのロンドン五輪世界最終予選が東京体育館で開幕する。植田辰哉監督率いる全日本男子がロンドンの切符をつかむには、全体の1位あるいは2位以下のアジア最上位が条件となる。最終戦でようやく決めた女子以上に厳しい戦いとなることは間違いない。果たして、“龍神NIPPON”は“火の鳥NIPPON”に続くことができるのか。
 4年前、東京体育館は歓喜の渦に巻き込まれていた――。2011年6月7日、北京五輪の切符獲得まであと1勝と迫っていた日本はアルゼンチンと対戦し、フルセットの末に勝利を挙げ、1992年のバルセロナ大会以来となる五輪出場を決めた。その北京に続いて、2大会連続での出場を狙う日本は、3枚の切符が争われた昨年のW杯では12カ国中、過去最低タイの10位に終わっている。

 ラストチャンスとなる今大会、厳しい戦いになることは必至で、万全の状態で臨みたい日本だが、主力メンバーに故障者が出ており、不安は拭えない。特に3月に右足を手術したエースのWS清水邦広の状態が気になるところだ。ワールドリーグにはベンチ入りもしておらず、実戦感覚を取り戻すのに時間を要することが予想される。また、司令塔でもあり、チームの精神的支柱でもあるキャプテンのS宇佐美大輔はふくらはぎの肉離れを起こし、今月中旬に行なわれたワールドリーグ浜松大会を欠場している。その影響もあって、日本は最終予選前の最後の実戦となった同大会で3連敗を喫した。

 だが、勝利には至らなかったが、内容は決して悪くはなかった。ロシア、セルビアに対し、代表合宿で最も力を入れて強化してきたブロック、ディグといったディフェンスが機能し、フルセットにまでもちこんでいる。また、ジャンプフローターサーブに磨きをかけたことも、ディフェンス力につながっている。あとはオフェンスでどれだけ決めきれるかだ。

 カギを握るのはWS福澤達哉だ。清水を欠いたワールドリーグではベテランのWS山本隆弘とともに、ポイントゲッターとしての役割を果たした。福澤はチームの平均身長よりも低い189センチだが、そのジャンプ力はチームで右に出る者はいない。スパイクの最高到達点355センチがどれほど高いかは、イランのエース、身長198センチのハムゼ・ザリニが336センチということからもわかる。また、2メートル台の選手を数多く擁する豪州にも、福澤以上のジャンプ力をもつアタッカーは決して多くはないのだ。相手の高い壁を前に、彼のアタックがさく裂するか否かが勝敗を分けることになる。

 日本の現実的な目標となるアジア枠には、日本のほか、世界ランキングではアジアトップの中国、昨年のアジア選手権で初優勝し、初の五輪出場を狙うイラン、平均身長199センチという驚異的な高さとパワーを兼ね備えた豪州、そして世界ランキング20位、五輪には00年シドニー大会以来出場していないものの、最近2年間の対戦成績は1勝4敗と、日本には強い韓国など、強力なライバルたちがズラリと並んでいる。

 日本は優勝候補の筆頭に挙げられるセルビアと初戦で対戦し、その後、第3戦から韓国、中国、豪州とアジアのチームとの3連戦が続く。この3連戦での成績が大きく響くことになる。そして、最終戦には成長著しく、最も勢いのあるイランが待ち構えている。このイラン戦の前にどれだけ勝ち星を積み重ねることができるかがポイントとなりそうだ。

 4大会ぶりに出場した北京五輪では、日本として初の未勝利に終わった。「五輪での借りは、五輪でなければ返せない」と植田監督は言う。だが、その屈辱を晴らすには、まずは切符を獲得しなければ、その舞台に立つことさえも許されない。6位入賞の92年バルセロナ大会以来となる五輪での勝利、そして金メダルに輝いた1972年のミュンヘン大会以来となるメダル獲得への挑戦権を全力で奪いにいく。