7月16日に開催された「HERO’S2007 〜ミドル級世界王者決定トーナメント開幕戦〜」の一夜明け会見が17日、都内ホテルで行われ、日本人選手としてただ一人準決勝進出を決めた宇野薫(和術慧舟會東京本部)は「昨年とはまた違うプレッシャーを感じている。プレッシャーをいかにエネルギーに変えられるか。頑張るだけです」と、9月に予定されている準決勝、決勝への意気込みを語った。
(写真:悲願の優勝へ意欲を見せる宇野<右>と、前田SV)
 開幕戦で、永田克彦(新日本プロレス・NEW JAPAN FACTORY)戦に、判定3−0で勝利した宇野は、「昨日は少し硬くなって動きには納得していない。反省点として頭に浮かんだことがいろいろあるので、しっかり練習して決勝トーナメントに臨みたい」と語った。
 16日に行われた開幕戦で、宇野、ブラックマンバ(インド/フリー)、ビトー“シャオリン”ヒベイロ(ブラジル/ノバウニオン)がそれぞれ勝利し、準決勝進出を決めた。ここに今大会を負傷欠場した昨年王者のJ.Z.カルバン(ブラジル/アメリカントップチーム)、カルバンの出場が間に合わない場合はスーパーファイトでアルトゥール・ウマハノフ(ロシア/SKアブソリュート・ロシア)にTKO勝ちを収めたアンドレ・ジダ(ブラジル/シュートボクセ アカデミー)が加わった4選手が、ミドル級の頂点を目指す。
 強豪揃いの顔ぶれに「永田選手に勝った時、次は厳しい試合になるなと思った」と本音をのぞかせながらも「昨年とはまた違うプレッシャーを感じている。プレッシャーをいかにエネルギーに変えられるか。頑張るだけです」と意気込んだ。残り2カ月、悲願の優勝に向け調整に励む。

船木、7年ぶりのリングへ「身体が動く限りやりたい」
 2000年5月、“400戦無敗”の伝説の格闘家、ヒクソン・グレイシーと激闘を演じて以来、7年ぶりとなる現役復帰を発表した船木が、復帰を決めた経緯、意気込みを語った。
 船木は現役引退後、俳優として映画などで活躍してきたが、K-1やHERO’Sのテレビ解説を務める中、桜庭和志や田村潔司らが戦う姿を見て「同じ年代の選手が身を削って戦っているのに、自分が解説席に座っているのがやりきれないという気持ちになってきた」と心境を語った。さらに今年に入って柴田勝頼と「ARMS」を結成し、一緒に練習していく中で「柴田を通して現役選手の目でリングを見たときに、戦えるのではないか。まだ力が残っている。自分が上がれるリングがあるのなら、上がりたい」と現役復帰を決意し、約半月前に谷川イベントプロデューサーに思いを伝えたという。

 決して短くはない7年のブランクについて、前田日明SVは「7年間という期間は、負傷個所の治癒や、それまでやってきたことをゼロから組み直す良い時間だったのではないか」と語り、「自分にとっても思い入れのある選手。今までの総合格闘技の経験を再構築して、リング上で新しいものを見せてくれると思う」と期待を寄せた。

 復活の舞台は大みそかのリングとなる。対戦相手について船木は「誰でもいい」と語り、「今でもヒクソンの腕の感触が残っている。向こうがOKしてくれるなら、ヒクソンともう一度やりたいという思いもある」と7年越しのリベンジマッチにも意欲を見せた。また、同年代の桜庭、田村についても「マッチメイクをされれば、ぜひ」と前向きな姿勢を見せた。

「7年もたてば、当時の自分のことを知らない格闘技ファンも多いと思う。だが、リングの中は100%選手のもの。その選手が背負っているものすべてが、リングで表現されると思う。ありのままの自分を出せば、見に来てくれたお客さんに、損をさせない自信がある。
 リミットは考えていない。身体が動く限り、観たいと言ってくれる人がいる限り、やりたいと思っている。自分がもう一度、引いていくときには、皆がメインエベンターになるくらいの選手になるはず。最後の橋渡しをしたい」
 熱い思いをこう語った船木。残された時間は決して長くない。自らリング復帰を決めた格闘家の第二章が始まる。

※講談社『月刊現代』2005年6月号、二宮清純「スポーツラジカル派宣言」にて掲載されました。