日本スポーツのイメージ確立へCI必要
コーポレーション・アイデンティティー(CI)という単語を初めて目にしたのは、確か、学生時代に読んだ自動車雑誌だったと思う。
これからのメーカーは、一目見ただけでどこの会社が作ったものかがわかるようなデザインやロゴが必要になる。それがCI――そんな内容だった。車種ごとにバラバラだった日本車のデザインやエンブレムは、次第に共通したものになっていく。値段の安さが最大の武器だった日本は、このころから洗練、高付加価値といったそれまでとは違ったイメージを獲得していった。
同じことは、スポーツについても言えるのではないか。
早稲田大学のスポーツは、どの競技を見ても「あ、ワセダだ」とわかる特徴がある。つまり、どの競技のユニホームにも、スクール・カラーであるエンジがあしらわれている。早稲田スポーツの伝統と人気は、もちろん関わってきたすべての人々の努力の賜物だが、カレッジ・アイデンティティーとも言うべきエンジ色が果たした役割も、かなり大きなものがあったとわたしは思う。最近、関東学院大学が各競技のユニホームをモスグリーンで統一したのも、同じ狙いによるものだろう。
にもかかわらず、五輪に出場している日本選手には、統一されたイメージがない。セクラセブンズ。アカツキファイブ。サムライブルー……。各競技がそれぞれにキャッチコピーを作るのはともかく、ユニホームの色までバラバラなのはいかがなものか。
基本、各国のユニホームは2つの種類に分類される。国旗の色を基調としたものか、サッカーの代表チームに準ずるか、である。どちらにしても、見ただけでどこの国かわかるようになっている。
長くサッカーに関わってきたわたしは、たとえばブラジルの黄色、イタリアの青を目にしただけで「うわ、強そう」と感じてしまう。小さなクルマであっても、メルセデスのエンブレムがついていれば特別に思えてしまうように、あるいはエンジのユニホームを前にすると、なんとなく気おされしてしまうように、である。統一したイメージは、ブランドの価値を高めるだけでなく、ちょっとした武器にもなる。
近年、スポーツの国際競争力は急速に高まってきている。4年後には東京での五輪開催も控えている。スポーツによる日本のイメージ向上を狙うには、これ以上ない最高の、そしてひょっとしたら最後のタイミングに差しかかっている。
サッカーなのか。日の丸なのか。それともサクラなのか。日本のスポーツを、日本以外の人々にも魅力的なものにしていくためには、日本スポーツとしてのCIが必要だとわたしは思う。
スポーツ庁とは、こういう決断を下すために作られたものでもあるはずだ。
<この原稿は16年8月12日付『スポーツニッポン』に掲載されています>