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(写真:6番・山崎<背番号27>の3ランに沸くトヨタ自動車のメンバー。どこからも点を取れる打線が強みである)

 10日、第49回日本女子ソフトボールリーグ第8節神奈川大会3日目がサーティフォー保土ケ谷球場で行われた。前日に決勝トーナメント進出を決めたトヨタ自動車レッドテリアーズは、伊予銀行ヴェールズに13-1と圧勝。開幕からの連勝を17に伸ばした。その他の試合はHonda RevertaがNECプラットフォームズRed Falconsを5-3で、日立サンディーバが戸田中央総合病院Medicsを2-0で下した。

 

 先発アボット、3回8奪三振パーフェクト

トヨタ自動車レッドテリアーズ   13 = 4301140

伊予銀行ヴェールズ        1 = 0001000

勝利投手 山根(6勝)

敗戦投手 庄司(3敗)

本塁打 (ト)山崎2号3ラン、山本1号ソロ

      (伊)山崎1号ソロ

 

 決勝トーナメント進出決定から一夜明けても、常勝軍団は変わらぬ強さを発揮した。完全試合でシャットアウト勝ちしたトヨタ自動車に対し、延長11回に及ぶ熱戦を落とした伊予銀行。両軍の勢いと実力の差はスコアボードに如実に表れた。

 

 トヨタ自動車は初回に1番のナターシャ・ワトリー、3番の長崎望未が出塁すると、5番の渥美万奈が伊予銀行の先発・庄司奈々の球をライト前に弾き返した。1点を先制すると、続く山崎早紀がレフトスタンドへホームランを叩き込んだ。上位が塁を貯めて、中軸が還すという理想的なかたちで4点をリードした。

 

 一気に流れを引き寄せたトヨタ自動車はその後も攻め手を緩めない。2回表には2番手の大西理帆子からワトリーがヒットを放つ。長崎が四球を選び、坂元令奈がデッドボールで塁を埋める。すると、先制点を叩き出した渥美がレフト線を破って、走者を一掃した。序盤で7-0とほぼ勝負を決めた。

 

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(写真:山根<中央>は宮下コーチが「人と球筋が違う」という動く速球を武器にバッターを打たせて取るピッチングスタイル)

 投げては先発のモニカ・アボットが3回をパーフェクト。5者連続を含む8三振を奪って、完全試合を達成した前日に引き続き、申し分のないピッチングを見せた。トヨタ自動車は4回表に1点を追加すると、そのアボットに代えて山根佐由里を送った。勝利投手の権利を得る前の交代。個人記録よりも今後のチームを考えた起用法ということだろう。

 

 2番手の山根は先頭打者に一発を浴びるなど立ち上がりに不安定な部分を見せたものの、3イニングを1失点に抑えた。今シーズン6勝目。これで自身のリーグ戦連勝記録を42に伸ばした。5年間、リーグ戦では負けていない山根。投手コーチを務める宮下雅志が「結果として負けていないだけ。大事な試合はアボットがいるので、本人も任せられる相手に“負けるわけにはいけない”という感覚なんだと思います」と語る。山根自身も「自分だけで勝っているわけではない。チームの勝利が続いているという感じ。自分自身では何も思っていないです」と意識はしていない。

 

 5回に相手のバッテリーミスから1点を追加したトヨタ自動車。6回には長崎の二塁打を機に、山崎の2点タイムリーと途中出場の山本絵梨奈の2ランで4点を追加した。終わってみれば13-1の完勝だった。これで開幕から17勝0敗。順延となった1日目の試合(11日)で勝利すれば、決勝トーナメントへの1位通過が決まる。攻守にスキがほとんど見当たらない状態だ。

 

 トヨタ自動車の強さをエースのアボットが「チームとして戦うことができる。我慢するところと、積極的にいくところの塩梅がいい」と口にすれば、この日も先発マスクを被った経験豊富なキャッチャーの峰幸代は「簡単に勝っているわけじゃない。みんなが試合に向けてきちんと準備して、仕事としてしっかりやっている」と証言する。

 

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(写真:今シーズンから打席でのスタンスを広げている長崎。2日間全8打席で出塁するなど、ボールがよく見えている)

 勝利を積み上げていくことで、チームへの信頼も深まっている。「チーム力がある。後半戦が始まって苦しい試合も多かったが、そこを勝ち切れた。チーム内でも信頼感があるので、苦しい場面でも勝ち切れるのかなと思う」と山根。そして長崎は言う。「我慢強く守って最後は誰かが打つ。どのバッターが来ても安心して見ていられる。“誰かが打ってくる”という思いはあります」。この日も3つの四球を選ぶなど、全4打席で出塁した長崎が時につなぎ役に徹せられるのが何よりの証拠だろう。どこからも点を取れる打線は相手に脅威でしかない。

 

 常勝軍団の指揮を執る福田五志監督は「どんなゲームでもあきらめずやる。どこかでいいと思っていたら勝てません」と話した。ひとつの白星に満足することなく、次を目指す。昨シーズンはリーグ戦で1位になりながら、ナゴヤドームでの決勝で敗れて準優勝だった。今シーズン、既に進出を決めている決勝トーナメントの舞台は神宮球場だ。王座奪還――。彼女たちの視線はそこのみに向けられている。

 

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(写真:日本リーグ通算最多本塁打記録更新に王手をかけた山田。あわやホームランの大ファウルを放ったが、ノーヒット)

 高卒5年目・小薗、2安打完封

戸田中央病院Medics   0 = 0000000

日立サンディーバ      2 = 011000×

勝利投手 小薗(8勝3敗)

敗戦投手 大平(2勝4敗)

本塁打 (日)佐々木5号ソロ

 

 1番・芝崎、6回に勝ち越し2ラン

NECプラットフォームズRed Falcons   3 = 0002100

Honda Reverta               5 = 000212×

勝利投手 メロー(6勝7敗)

敗戦投手 三木(3勝14敗)

本塁打 (H)芝崎2号2ラン

 

(文・写真/杉浦泰介)