広島対北海道日本ハムの日本シリーズは、広島が本拠地マツダスタジアムで2連勝を飾りました。広島は地の利をいかした戦い方をしていて、投打で強さが際立っていました。

 

 第2戦では珍しいシーンが生まれました。6回裏に田中広輔とキャッチャー大野奨太のクロスプレーがリプレー検証の結果、アウトからセーフに代わりました。リプレー検証の結果で判定が覆ったのは、日本シリーズ史上初の出来事です。このシーンをスロー映像で確認するとセーフに見えましたが、翌日のスポーツ紙が掲載していた写真を見ると、大野のグラブは田中のヘルメットに触れているように見えました。

 

 正直、このプレーを見て、日本ハムの大野には呆れてしまいました。必死だったから仕方ないのかもしれませんが、大野は田中のヘルメットにタッチしていることに気付けなかった。だから、2度タッチしにいった。しかし、2回目のタッチをしたことで、映像を確認した審判たちにタッチはしていなかったという判断を下されたのでしょう。大野が自信を持ってアピールしていれば、判定は変わらなかったかもしれない。そこが非常に残念でした。

 

 このプレーをきっかけに、広島は6回に一挙4得点を奪いました。第2戦はこのクロスプレーのシーンばかり取り沙汰されていますが、試合の流れが変わった場面は、もう少し前にあったと思います。

 

 4回表に代打を出すべきだった!

 4回表2死一、二塁の場面で、守備の名手・菊池涼介がエラーをしました。このエラーで、日本ハムは同点に追いつきました。日本ハムはなおも2死一、三塁と追加点のチャンス。にもかかわらず、打席にはピッチャーの増井浩俊がそのまま立ちました。ここが日本ハムのターニングポイントだったと思います。

 

 なぜ、日本ハムベンチは増井に代打を送らなかったのか。おそらくリリーフ陣に不安があったから続投させたのだと思います。しかし、相手の先発は今季最多勝の野村祐輔。簡単に得点を奪えないことくらいは、分かっていたはずです。

 

 広島サイドは今季わずか4失策の菊池がまさかのエラーで動揺していたと思うので、そのスキを日本ハムは付け入るべきだった。それぐらいのあざとさは必要だったと思います。ましてや、日本ハムは勝頭の大谷翔平で初戦を落としているので、あそこで一気に勝負をかけるべきだったと思います。

 

 シリーズのキーマンは中田翔

 第2戦が終わった後にいろいろな方々と今後の日本シリーズの勝敗を予想しましたが、みんな口を揃えて「キーマンは中田翔」だと言います。

 

 中田は初戦で、クリス・ジョンソンのインサイドのスライダーとカットボールに苦しめられ、チャンスでことごとく凡退しました。インサイドのボールを意識しすぎた結果、打つポイントが前になっているんです。調子を取り戻すには、もう少し時間がかかると思っていましたが、第2戦で2本もヒットを放っています。もしかしたら、これを機に中田は復活したのかもしれません。

 

 日本ハムが逆転日本一を達成するためには、彼の復活は必要不可欠です。一方、32年ぶりの日本一を目指す広島にとっては、中田を封じられるかがカギとなるでしょう。

 

 今日から日本ハムの本拠地・札幌ドームで試合は行われます。第3戦の予告先発は、有原航平対黒田博樹。広島が3連勝を飾るためには、黒田博樹が中田に対してインサイドをえぐれるかどうかが重要になります。もし中田がインサイドを気にせずに思いっきり踏み込んでくるようなら、3戦目以降の中田は怖いですね。第3戦は黒田対中田にぜひご注目を!

 

image佐野 慈紀(さの・しげき)
1968年4月30日、愛媛県出身。松山商−近大呉工学部を経て90年、ドラフト3位で近鉄に入団。その後、中日−エルマイラ・パイオニアーズ(米独立)−ロサンジェルス・ドジャース−メキシコシティ(メキシカンリーグ)−エルマイラ・パイオニアーズ−オリックス・ブルーウェーブと、現役13年間で6球団を渡り歩いた。主にセットアッパーとして活躍、通算353試合に登板、41勝31敗21S、防御率3.80。現在は野球解説者。


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