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(写真:「組織を少しずつ改善したい」と新体制の意図を説明する伊東委員長)

 24日、日本陸上競技連盟は新体制で第1回目となる強化委員会を都内で開き、北京五輪男子400メートルリレー銅メダリスト・朝原宣治氏が強化育成部門「ダイヤモンドアスリート」プログラムマネージャーに就任することとなった。加えて日本陸連は2日の新体制発表時点では決まっていなかった「TOP8ターゲット」の男子長距離、「ワールドチャレンジ」の男女中距離、女子ハードル、男女投擲、女子跳躍・七種競技の強化コーチなども発表した。

 

 11月1日にスタートした新体制は、男子100メートル日本記録保持者の伊東浩司氏が強化委員長を務める。第1回目の会合が行われ、新たなゴールへ向けて歩みを進めた。

 

「いよいよ伊東体制が第一歩を踏み出しました。前任者として皆さんと共に東京へ向けて大いに盛り上げていきたい」

 そう語るのは、前強化委員長の麻場一徳氏だ。麻場氏は強化育成ディレクターに就任し、サポート役に回る。「しっかり個のレベルを上げて、東京ではもっとメダルや入賞が増えるように努力していきたい」と意気込んだ。

 

 2020年東京五輪に向けての強化育成部門の柱とも言えるのが「ダイヤモンドアスリート」だ。そのプログラムマネージャーには朝原氏が就く。麻場ディレクターは「陸上界にとって素晴らしい先輩をリーダーにしながら、より充実したプログラムにしていきたい」と口にした。

 

 これまで強化育成部長を担当していた山崎一彦氏はトラック&フィールド/競歩のディレクターを伊東強化委員長と共に務める。担当は「TOP8ターゲット」だ。「ここのレベルをどれだけ引き上げられるか。この4年間でどれだけ躍進していくかがポイントになります」と山崎ディレクター。「まずは2年間で新しいことをやりながら、強化をしていければと思っています」と抱負を述べた。入賞が目標となる選手たちを世界最高峰リーグのIAAFダイヤモンドリーグに送り込むことを目指す。

 

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(写真:「来年3月には東京五輪の方針を示したい」と話す河野ディレクター)

 かつては“お家芸”と呼ばれたマラソン復活にも期待がかかる。男子はバルセロナ五輪、女子はアテネ五輪以来、表彰台に届いていない。マラソン強化戦略プロジェクトリーダーとして先頭を走る瀬古利彦氏をサポートする役目なのが、長距離・マラソンの河野匡ディレクターである。河野ディレクターは「マラソンは皆様が期待する結果と現状が合っていない」と分析する。

 

「メダルということの期待の大きさは感じている。我々が目指さなければいけないのは東京五輪でのメダル獲得だと認識しています」と河野ディレクター。現場責任者となるオリンピック強化コーチには「熱い考えがある」と期待を寄せる。

 

 男子マラソンのオリンピック強化コーチに就任した坂口泰氏はロンドン五輪まで男子マラソン部長を務めていた。

「もう話は来ることはないと思っていたので、びっくりした。瀬古さんに憧れて早稲田(大学)に行ったわけだから。これだけの長い年月を経て、一緒に仕事ができるのは何かの縁だと思う。やらせてもらえて光栄です」

 

 リオデジャネイロ五輪の男子マラソン代表は3名とも30代だった。東京五輪へ向けて若い世代の強化も急務だ。坂口オリンピック強化コーチは若手の中では今年の東京マラソンに挑戦した一色恭志(青山学院大学)、服部勇馬(トヨタ自動車)らに期待する。マラソン未経験の鈴木健吾(神奈川大学)にも興味を示している。

 

 坂口オリンピック強化コーチは「世界にチャレンジしていくことが必要だと思う」と、選手たちには攻めの姿勢を求める。目指すのは「本物のマラソンランナーを作る」こと。トラックや駅伝中心ではなく、ワールドメジャーズなど世界のマラソンスケジュールを中心に戦う。そういった選手を生み出す土壌を醸成していくつもりだ。

 

 新たな強化策のスタートに日本陸連の鼻息は荒い。だが、まだまだ走り出したばかり。今後の行方に注目したい。

 

(文・写真/杉浦泰介)