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(写真:キックボクシング界からRIZINに参戦するRENA<左>と那須川)

 14日、RIZIN実行委員会は都内で会見を開き、年末にさいたまスーパーアリーナで行う「RIZIN FIGHTHING WORLD GP 2016」(12月29日、31日)の追加対戦カードなどを発表した。キックボクシング界の新星・那須川天心(チーム天心)の総合格闘技(MMA)デビュー、無差別級トーナメントに出場予定だったヴァンダレイ・シウバ(ブラジル)の欠場が正式に決まった。

 

 昨年末に旗揚げ興行を開催したRIZIN。榊原信行実行委員長は「目指すところはサッカーのチャンピオンズリーグ。世界中から最強を競い合う。歴史を重ねて磨いていきたい」と鼻息が荒い。

 

 しかし、目玉カードのひとつとされていたミルコ・クロコップ(クロアチア)vs.シウバは立ち消えになった。シウバは5月に交通事故に遭った影響もあり、コンディションが完璧ではない。本人は出場を希望していたが、ドクター、陣営などはストップをかけた。榊原実行委員長も「ファンが見たいのは最高のシウバ。ここは断腸の思いで、あえて発表させていただきたい」と欠場に至った苦悩を語った。

 

 代替選手については現在交渉中。榊原実行委員長によれば「4、5人」に絞っており、「世界中からシウバの代わりとなる期待以上の選手」と最終調整をしているという。週明けには発表される見通しだ。日本でもお馴染みのヒース・ヒーリング(アメリカ)、マイティ・モー(アメリカ)のほか、世界トッププロモーションの代表からも声がかかっているようだ。

 

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(写真:業界では昨年から出場を希望する声があったという那須川)

 そんな中、格闘技界に新たな風を吹かそうとしているのが、18歳の那須川だ。榊原実行委員会が「僕らは世界に通用する総合格闘家を育てたい。そのポテンシャルがある」と認める逸材。2014年7月にRISEでプロデビューし、キックボクシングで17戦無敗を誇っている。既にRISEバンタム級とISKAオリエンタルルール世界バンタム級の2つのベルトも保持。今月5日にはムエタイの本場タイのルンピニースタジアム認定現役王者にKO勝ちを収めた。

 

 まさに飛ぶ鳥を落とす勢いの那須川。高田延彦統括本部長も「待ってました!」と声を上げ、「ファン、我々、主催者、業界の方々の思いが今日成就した」と喜んだ。興奮した様子の高田統括本部長はさらに続ける。「数十年にひとり。沢村忠さんというスーパースターを遥かに超える逸材です。あれ以上のスーパースターになれるポテンシャルを持っている」と大絶賛。「MMAとキックの二刀流。彼にはスーパースターになってもらいたい。おじいちゃん、おばあちゃんに二刀流と言えば、大谷翔平と那須川天心という存在になってもらいたい」とエールを送った。

 

 那須川のMMAデビュー戦は29日に決定。那須川は「無謀と思う人もいるが、僕はいい試合をできる自信がある」と言い切る。対戦相手は未定だが、榊原実行委員長は「打撃系で総合格闘技もレベルの合う外国人選手」であることを示唆した。「ここが起点となる。総合では“4回戦ボーイ”。這いつくばって世界を取ってもらう」。RIZINとして寄せる期待は大きい。「あれだけの打撃のセンス。格闘技全体のセンスもある。フライ級のエースにしたい」と榊原実行委員長。将来的にはフライ級、バンタム級の軽量級トーナメント開催を考えていることも明かした。

 

 天才と称される若きファイターは「二刀流をやっていって、格闘技を背負っていきたいと思っています。僕が格闘技の未来を変えていきたい」と高らかに宣言。軽量級エースに名乗りを上げる。

 

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(写真:RENAは年末に向けて、飛びつき腕十字に代わる大技を練習中)

 年末を盛り上げる“二刀流”は女子にもいる。RIZIN皆勤賞中のRENA(シーザージム)だ。彼女は立ち技格闘技のシュートボクシングとMMAの二刀流である。

 

 昨年MMAデビューを果たしたRENAは「正直1回限りと思っていた」と言う。だが、9月の大会にも出場し、元レスリング世界女王の山本美憂(KRAZY BEE)からタップを奪ってみせた。RIZIN参戦4試合目は大晦日にMMAルールでハンナ・タイソン(ポーランド)と戦う。

 

 榊原実行委員長は「これまでの3戦の中で最も強い相手。シュートボクシングを含めて一番の強豪です。外連味のないファイターでRENAの無敗記録に黄信号」と花を持たせる気はない。映像で1試合チェックしたというRENA。タイソンに対し、「パンチからのキックでKOしていた。打撃の選手。痛そうな打撃を持っている」との印象を持っている。

 

 それでもRENAは「MMAファイターRENAの1周年。この1年の成果を出して、一本か打撃でKOか。1年を締めくくります」と意気込んだ。女子は昨年末の2試合から今年は5試合に増えた。高田統括本部長は「手探りの中でチャレンジ。RENA選手があの日、RIZINの女子の扉を開けてくれた」と口にするように、彼女の功績は少なくない。RIZINは「女子MMAを引っ張って欲しい」と、RENAに旗頭として期待している。

 

 キックボクシングの那須川、シュートボクシングのRENA。MMAとの“二刀流”を目指す2人が、格闘技界に新たな風を吹かせる。

 

(文・写真/杉浦泰介)