ボクシングのWBC・WBO世界スーパーバンタム級王座統一戦が14日、米国カリフォルニア州カーソンで行われ、WBC名誉王者の西岡利晃(帝拳)はWBO王者のノニト・ドネア(フィリピン)に9R1分54秒TKO負けを喫した。西岡は立ち上がりからスピードのある相手に対して守勢に回る展開。6Rには左アッパーをくらってダウンをくらうと、9Rはドネアをロープに詰めたところをカウンターの右で倒される。一度は立ち上がった西岡だが、陣営が続行不可能と判断し、試合を止めた。
 KO負けにもかかわらず、試合後の西岡はうっすらと笑みを浮かべていた。すべてが終わり、すっきりしたような顔に見えた。
「強い相手とやって完全燃焼したい」
 その一心から熱望し、ようやく実現したドネアとの決戦。昨年末より、この4階級制覇王者だけを想定してトレーニングを重ねてきた。しかし、“フィリピンの閃光”は速く、うまく、そして強かった。

「ドネアは前半に強い」
 西岡の想定通り、立ち上がりから鋭い左右のパンチが飛んできた。しっかりガードを固めて防ぐも、ドネアは角度を変えながら上から下からパンチを打ち分け、隙間を狙ってくる。西岡はカウンターを狙いたいところだが、相手の動きが速く、攻め手を与えてくれない。序盤の4Rは、ほぼ一方的なドネアの展開だった。

 局面を打開したい西岡は中盤から手数を増やし、距離を詰める。だが、西岡が拳を振るうと、ドネアはカウンターで3発、4発と返し、なかなか懐には入れない。それでも中へ入ろうとした6R、痛恨の一撃を浴びる。

 ボディからストレートと攻め、相手を追い込もうとした矢先の出来事だった。ドネアはカウンターの左フックを合わせると、これを避けようと頭を下げたところへ左アッパー。これがヒットし、西岡はマットに尻もちをついた。

 ただ36歳は立ち上がると、スイッチが入ったかのように果敢に攻め始める。得意の左を打ち込み、ドネアの左と互いの拳が重なり合う。激しい打ち合いに場内は一気にヒートアップした。しかし、ドネアは巧みだった。適度に距離をとりながら、相手のパンチに呼応して必ず打ち返す。西岡は右のガードを高くしたままで、二の矢、三の矢を放てず、攻撃が続かない。

 ようやくチャンスが訪れたのは9Rだ。前進する西岡にドネアが後退し、ロープを背負う展開に。ここぞとばかりに左右の拳を繰り出し、数々の強敵を仕留めたモンスターレフトを振り抜こうとした瞬間だった。ドネアがコンパクトに右を突き出すと、これが西岡の顔面を捉える。

 予想外の右だった。まともにくらった西岡は仰向けに倒される。好機は一瞬で暗転した。何とか立ち上がったものの、足元はおぼつかず、ダメージは明らか。本人はファイティングポーズをみせて試合が再開されたが、ラッシュを仕掛けてきたドネアに耐え切れないと判断し、セコンドがすぐに試合終了を要求した。

 自身の集大成ともいえる一戦は無念のKO負け。とはいえ、4度目の世界失敗を乗り越えて32歳でベルトを巻き、海外でのKO防衛、そして本場ラスベガスでの勝利と日本ボクシング界の歴史に残る足跡を残してきた。この道より、生きる道なし――本人が好む言葉通り、まさに己の道を全うしたボクシング人生は決して色あせない。

(石田洋之)