19日、プロ野球セ・リーグのクライマックスシリーズファイナルステージ第3戦は、序盤から1点を争う激しい攻防戦が繰り広げられ、今シリーズ初の延長戦へ。10回表に代打・堂上剛裕のタイムリーで挙げた1点を、最後は守護神・岩瀬仁紀がきっちりと守り、中日が3連勝。これで通算成績を3勝1敗とし、日本シリーズ進出まであと1勝と迫った。

◇ファイナルステージ第3戦
 代打・堂上、決勝の勝ち越し打(中日3勝1敗、東京ドーム)
中日   5 = 0210010001
巨人   4 = 0101020000 (延長10回)
勝利投手 武藤(1勝0敗)
敗戦投手 西村(0勝1敗)
セーブ   岩瀬(1S)
本塁打  (中)和田1号ソロ
       (巨)村田1号ソロ、高橋1号2ラン
 2位・中日に10.5ゲームの大差をつけてリーグ優勝し、短期決戦においても優勢と見られていた巨人。しかし、本拠地・東京ドームで中日を迎え入れてのファイナルステージでは投打がかみ合わず、まさかの連敗で通算1勝2敗と中日にリードを許した。勝てばタイ、負ければ崖っぷちという大一番となったこの試合、先発マウンドを託されたのは宮國椋丞。その宮國は初回を三者凡退に切って取り、最高の立ち上がりを見せた。

 その裏、巨人は四球で出塁した長野久義が2死ながら三塁へ進み、先制のチャンスを迎えた。打席には二冠王の阿部慎之助。自らのバットで2年目20歳の右腕を援護したいところだったが、47歳ベテランの山本昌のシンカーをひっかけて内野ゴロに倒れた。

 初回は好投を見せた宮國だったが、2回表、中日打線につかまった。1死からトニ・ブランコに初安打を打たれると、平田良介、森野将彦を連続四球で出してしまう。打席には第1戦でポストシーズン61打席ぶりに安打を放った谷繁元信。呪縛から解かれた谷繁は、高めに抜けたスライダーをレフトへ弾き返した。2走者が返り、第1、2戦に続いて中日が先制した。

 その裏、絶対に負けられない巨人はすぐさま反撃する。1死から村田修一が四球で出塁すると、今ステージ初スタメンのジョン・ボウカーがヒットで続き、1死一、三塁とすると、同じく初スタメンの寺内崇幸が全球シンカー攻めの4球目をうまく弾き返し、一、二塁間を破る。三塁ランナー村田が返り、巨人は1点を返した。

 しかし、この日の中日打線は攻撃の糸を緩めない。3回表、先頭の大島洋平が好走塁を見せ二塁打とすると、荒木雅博はきっちりと送り、1死三塁とした。続く井端弘和の犠牲フライで、中日は再びその差を2点に広げた。

 東京ヤクルトとのファーストステージ第3戦に先発し、中3日での登板となった山本は、序盤は持ち味であるコントロールが定まらず、ボールが高めに抜けるシーンが多く見られた。それでもさすがはベテランとばかりに修正をかけ、徐々に安定し始める。立ち直りかけていた山本に牙をむいたのは今シリーズ無安打の村田だった。4回裏、甘く真ん中に入ったシンカーを鋭いスイングで振り抜くと、打球は低い弾道で勢いを保ったままライトスタンドへ飛び込んだ。打線のカギを握ると見られていた村田が復活を予感させる一発を放ち、再び1点差に迫った。

 6回表、巨人は4、5回を無失点で切り抜けた宮國を早くも下げ、2番手・福田聡志にスイッチした。これが裏目に出る。福田は和田一浩に対して外角低めにコントロールしていたものの、7球目のストレートがシュート回転し、内角高めに入った。その失投とも言える一球を和田は見逃さなかった。ヒジをうまくたたみこんでフルスイングすると、打球はレフトスタンドへ。終盤へと向かう中で貴重な追加点を挙げた。

 続くブランコに四球を与え、平田にヒットを打たれて無死一、二塁となったところで原辰徳監督は福田を諦め、3番手にルーキー高木京介を上げた。高木は森野にバントを決められて1死二、三塁とされるも、谷繁をセンターフライに打ち取り、2死とした。しかし代打・山崎武司には四球を与え、満塁で好調の大島を迎える。高木はキャッチャー阿部の要求通り、徹底的に外角を攻めた。そして1−2と追い込んでの5球目、外角のスライダーでひっかけさせ、ショートゴロに打ち取った。

 その裏、中日は制球に苦しみながらも5回まで2失点と力投した山本からルーキー田島慎二にスイッチした。その田島から1死後、阿部にようやくヒットが出て、東京ドームが歓声に沸いた。この歓声に続く高橋由伸が応えた。1−2からの4球目、ほぼど真ん中のストレートを巨人ファンが詰めかけたライトスタンドへ運んだ。巨人は、ようやく試合を振り出しに戻した。

 7、8、9回はともにリリーフ陣が要所を締める好投で切り抜けた。9回を終えた時点で4−4、安打数も中日8本、巨人7本と、まさにがっぷり四つの戦いは今シリーズ初の延長戦へと入った。10回表、巨人は守護神の西村健太朗をマウンドに上げた。その西村からブランコがヒットを放つと、高木守道監督は続く平田には送りバントを指示した。しかし、勢いよく転がる平田の打球を西村が迷うことなく二塁へ送球し、ブランコを刺した。

 しかし、勝負はまだ終わらない。通算の対戦成績3割8分1厘と西村を得意としている森野がヒットで続き、平田の好走塁もあって1死一、三塁と勝ち越しのチャンスとした。ところが谷繁の打席で中日は2度、スクイズを敢行するも、谷繁は前にボールを転がすことができず、結局スリーバント失敗に終わった。それを帳消しにしたのが、代打に起用された堂上剛裕だ。堂上は1−2と追い込まれた後の4球目、真ん中高めのストレートを叩きつけ、センターへ。これがタイムリーとなり、中日が貴重な1点を挙げた。

 その裏、中日は満を持して守護神の岩瀬仁紀をマウンドに上げた。ファイナルステージ初登板の岩瀬だったが、先頭の代打・矢野謙次を空振り三振に切ってとると、通算の対戦成績16打数8安打、打率5割と苦手としている坂本には鋭い打球を打たれるも、これをセカンドの荒木がファインプレーで阻止した。そして最後は阿部をファーストゴロに打ち取り、1点を死守した。

 1点を争う攻防戦を制した中日は怒涛の3連勝を果たし、これで通算成績は3勝1敗となった。パ・リーグでは北海道日本ハムが福岡ソフトバンクに3連勝して、一足先に日本シリーズ進出を決めた。その日本ハムが待ち受ける王座決定戦に王手をかけた中日。果たしてこのまま一度も土をつけられることなく、明日で決着をつけるのか。それとも巨人が意地を見せ、巻き返しを図るのか。注目の第4戦は20日18時にプレーボールだ。