連覇を目指したキャンプがスタートした。70年近い歴史を誇るカープだが、連覇は1度(1979年、80年)しかない。ともに日本シリーズでは近鉄を下し、2年連続日本一に輝いている。

 

 その意味で今回は連覇を目指すといっても、日本シリーズでは負けているのだから、選手や首脳陣にはチャレンジャーの意識の方が強いかもしれない。

 

 レギュラーシーズン連覇の条件は何か。ズバリ言って、それは1シーズン戦い抜けるだけの選手のコンディションである。

 

 というのもカープの場合、他の5球団よりも移動スケジュールがハードだからだ。首都圏を本拠地とする巨人、東京ヤクルト、横浜DeNAはだいたい半分の試合を自宅から通うことができる。

 

 ところがカープの場合、そういうわけにはいかない。OBの川口和久が、こんなことを言っていた。

「疲労の蓄積が全然違いますね。やはり新幹線や飛行機に乗っての移動も広島は距離が長いわけだから。それを好きにならないとだめなんです」

 

 加えて、屋根のない本拠地ゆえ、夏の暑さは身にこたえる。とりわけ広島の場合、「瀬戸の夕凪」と言って、風がピタリとやむのだ。

 

 あの400勝投手の金田正一が「何が嫌かといって広島の暑さには参った。現場で倒れそうになったこともあったよ」と冗談とも本音ともつかない口調で語っていた。

 

“ミスター赤ヘル”と呼ばれた山本浩二は、夏場、「もう1回下半身をつくりなおす」と言ってアメリカンノックを志願して受けていた。

 

「キャンプでつくった下半身は6月くらいまでは持つが、その後、もう1回つくりなおさないかん」

 それが持論だった。

 

 もちろん、オーバーワークは禁物である。休む時は休む、鍛える時は鍛える。そのメリハリがV2のカギを握っている。

 

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)


◎バックナンバーはこちらから