1702yamada2二宮清純: フロリダ・マーリンズで活躍するイチロー選手は51番に愛着を持っていますが、山田選手も背番号に対するこだわりはありますか?

山田恵里: 私はチームで19、日本代表では11なのですが、あまり変えたくないですね。19は高校でソフトボールを始めた時からの番号です。一方、代表の11はたまたま空いていた番号をつけています。後で知ったことなのですが、実は自分が生まれたのは11時19分なんです。たまたまなのですが、運命的なものを感じましたね。

 

二宮: それはすごい。打順へのこだわりは?

山田: 任されれば、何番でもいいです。ただやりやすくて好きなのは1番ですね。トップバッターはゲームを一番つくれる。最初に流れをもってくる役割があるので、特に好きですね。

 

 

二宮: イチロー選手タイプですね。ソフトボールを始めてから、憧れの選手はいましたか?

山田: いえ、特にはいないです。それよりも自分が憧れられる選手になりたいと思っています。

 

 逆方向に伸びる打球がベスト

 

二宮: 技術をさらに向上させるために取り組んでいることはありますか?

山田: 昨年は打ち方を少し変えました。まずはタイミングの取り方。それまでは構えてからスイングが始動するより先に足を地面につけていましたが、それを打つのと同時ぐらいに遅らせました。

 

二宮: 以前は少しガニ股気味に構えていましたよね。今は力みの少ないフォームに変わった印象があります。

山田: はい。オープンスタンス気味だった足はまっすぐに戻しました。その方が打球も飛びます。ただ昨シーズンは新しい打ち方が完成し切れていなかった。今後はより精度を高めていきたいです。

 

1702yamada11二宮: イチロー選手もフォームを毎年微調整しています。山田選手は“ソフトボール界のイチロー”の異名がありますが、イチロー選手から学んだことは?

山田: バッティングに関してはよく見ますね。それに技術はもちろんですが、考え方もすごいなと思います。何にでもブレない自分を持っている。今もなお技術の追求をしていて、満足していないんだろうなと感じます。周りから見たらすごい選手なのに、本人としては“まだまだできる”と更なる上を見ているような気がします。

 

二宮: 40歳を超えても肉体の衰えを感じさせないところがすごいですよね。

山田: そうですね。もし、お話しできるのならしてみたいです。

 

二宮: どういうことを聞きたいですか?

山田: バッティングについてなど、技術的なことですね。

 

二宮: イチロー選手は、わざと打球を詰まらせて野手の間に落とすヒットが、ピッチャーにショックを与える上で最も効果的だと語っています。“わざと詰まらせる”という感覚はソフトボールでもありますか?

山田: それができたらすごくいいですよね。ただソフトボールはマウンドとホームベースが近いので、詰まらせようと思うと振り遅れてしまいます。そうすると、ファウルか空振りになる確率が高いです。

 

二宮: 球場も野球より狭いですから、打ち上げてしまうとアウトになる可能性が高い。山田選手のバッティングを見ていると、左中間方向に打球が伸びていますね。

山田: 反対方向に伸びる打球が一番いい打球だと思っています。基本はコースに逆らわないことを心がけているんです。インコースだったら引っ張るなど、コースに合わせた打ち方がベストかと。

 

 ホームランの伏線となった三振

 

二宮: 金メダルを獲得した北京オリンピックの話に移りましょう。決勝は宿敵アメリカと対戦しました。予選リーグと準決勝の2試合では敗れていました。

山田: 2回負けはしましたが、“最後は勝てるだろう”と根拠のない自信みたいなものがありました。

 

1702yamada10二宮: 予選リーグでは0-7のコールド負け。一方的にやられましたが、決勝は僅差の試合をモノにする。試合運びがうまかったですね。

山田: 今まで先制点を取れていなかったのですが、決勝では先制をしました。アメリカはどこかいつもと違っていたような気もします。プレッシャーをすごく感じながらやっているように見えました。逆に私たちは今まで通りのプレーができたことが大きかったと思います。

 

二宮: 山田選手は4回表に貴重な追加点となるホームランを放ちました。この時、第1打席目はあえて三振をして、次の打席で打ったそうですね。オリンピックの大舞台で、なかなかできることではありません。

山田: なぜか、その時は身体が自然と動きました。ボールがすごく見えていたんです。まずは相手の出方を見たかったので、1球も振らずにフルカウントまでいったんです。

 

二宮: 最後に見送ったボールはストライク。打とうと思えば、打てたでしょ?

山田: 打てたと思います。でも私は“とりあえずは見よう”と判断しました。

 

二宮: たとえ、そうした狙いがあったとしても、あの場面で見逃すという選択はなかなかできるものではありません。私も現地で取材していましたが、当時は“山田選手でも緊張しているんだなぁ”と思っていましたよ。

山田: 次は打てるという自信がありましたから(笑)。

 

二宮: 次の第2打席は先頭バッターで迎えました。初球のドロップを空振りして、1ストライク。2球目の高めのライズボールを見事に弾き返しました。

山田: 対戦したアメリカのキャット・オスターマンはライズとドロップが武器のピッチャーでした。1球目がドロップだったので、2球目はライズを狙ったんです。

 

二宮: 伏線を張って、次はこういう配球でくるだろうと読み切った。実際にホームランという最高のかたちで仕留めたのだから、千両役者です。やはりプレッシャーに強いタイプなんでしょうね。

山田: 大舞台の方がワクワクします。“ここで打ってやる”と。人もたくさんいた方がいいです。

 

二宮: 走攻守ともにハイレベルで、バッティングは穴が少ない。それでいてプレッシャーにも強い。弱点が見当たりませんね。今まで緊張したことはないんですか?

山田: 人見知りなので、人前でしゃべる時は緊張しますね。

二宮: アハハハ。それは数少ない弱点かもしれませんね。

 

 東京五輪で勝利の美酒を!

 

1702yamada8二宮: 山田選手のリラックス方法は?

山田: 音楽を聴いて落ち着きます。

 

二宮: お気に入りの歌手はいますか?

山田: 浜崎あゆみさんと清木場俊介さんが好きです。

 

二宮: 試合の前後にも聴くのでしょうか?

山田: 試合前は気合いが入る曲を聞いて、試合後は気持ちを落ち着かせます。歌手の人は、一瞬で何万人もの人を感動させられる。いつもそれがすごいなと思っていて、私もそういう存在になりたいです。

 

二宮: 生まれ変わったら歌手になりたい?

山田: それはないですね(笑)。私はソフトボールで人を感動させたり、試合を楽しんでいただいて、“明日から頑張ろう”という励みになればうれしいですね。

 

二宮: 多くの人を魅了させる舞台と言えば、オリンピックです。2020年東京オリンピックでは3大会ぶりにソフトボールが正式競技として復活します。大会にはオリンピックを経験していない選手も出場するでしょう。“オリンピックには魔物が棲む”とも言われますが、経験者の山田選手は他の日本代表選手にどういうアドバイスをするつもりですか?

山田: 私は試合になった時に自分に自信が持てるだけの練習の積み重ねが大事だと思います。だから“あと3年半ある”という感覚よりは“3年半しかない”と思って、1日1日を過ごしてほしいですね。

 

二宮: 危機感を持ちなさいと。

山田: はい。1日1日をやり切ったと思える積み重ねがあれば、試合になった時に“打てなかったらどうしよう”という弱気にはならないはずです。“これだけやってきた”と自負していれば、試合も楽しめると思うんです。それが一番大事かと。

 

二宮: まさしく金メダリストからの“金言”ですね。あっと言う間に予定の時間になってしまいました。改めて「そばソーダ」の味はいかがでしたか?

山田: とてもおいしかったです。すっきりして飲みやすいので、大好きなカニと一緒で何杯でもいけちゃいそうです。

 

二宮: シーフード以外の料理にも合います。料理をピッチャーとするならば、旨みという特徴を引き立たせる名キャッチャーと言えるでしょうか。

山田: そうですね。こちらとしても、ついつい料理とお酒に手を出してしまうので、なかなかいいバッテリーですね(笑)。

 

二宮: 最後にこれまでで一番おいしかったお酒は?

山田: やはり北京オリンピックで金メダルを獲って、日本に帰ってきての打ち上げの時ですね。あの時は相当飲みましたね(笑)。

 

二宮: では東京オリンピックで金メダルを獲った時には祝杯をあげましょう!

山田: ありがとうございます! その時はぜひ「そばソーダ」でお願いします!

 

(おわり)

 

1702yamada1山田恵里(やまだ・えり)プロフィール>

1984年3月8日、神奈川県生まれ。高校からソフトボールを始め、女子ソフトボールの強豪・厚木商業高校で2度のインターハイ優勝。2002年、日立製作所に入社。ルーキーイヤーの02年に本塁打王、打点王など数々のタイトルを獲得した。以後、多くのリーグ記録を塗り替えてきた。04年アテネ五輪に出場し銅メダルを獲得。08年北京五輪では主将としてチームを引っ張り、金メダル獲得に貢献した。その卓越したセンスから“女子ソフトボール界のイチロー”の異名を持つ。外野手。左投左打。

 

今回、山田選手と楽しんだお酒は本格そば焼酎『雲海』。厳選されたそばと、宮崎最北・五ヶ瀬の豊かな自然が育んだ清冽な水で丁寧に造りあげた深い味わい、すっきりとした甘さと爽やかな香りが特徴の本格そば焼酎です。ソーダで割ることで華やかな甘い香りが際立ちます。

提供/雲海酒造株式会社

 

<対談協力>

FISHERMAN'S BAR

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TEL: 050-5257-6707

月~木、祝前日:11:30~14:00、17:00~23:30

金: 11:30~14:00、17:00~翌3:00

土、日、祝日: 16:00~23:30

定休日:第3日曜日・年末年始(30日~4日)

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☆プレゼント☆

山田選手の直筆色紙を本格そば焼酎「雲海」(900ml、アルコール度数25度)とともに読者3名様にプレゼントいたします。ご希望の方はこちらより、本文の最初に「山田恵里選手のサイン色紙希望」と明記の上、下記クイズの答え、住所、氏名、年齢、連絡先(電話番号)、このコーナーへの感想や取り上げて欲しいゲストなどがあれば、お書き添えの上、送信してください。応募者多数の場合は抽選とし、当選発表は発送をもってかえさせていただきます。締切は3月9日(木)までです。たくさんのご応募お待ちしております。なお、ご応募は20歳以上の方に限らせていただきます。

 

◎クイズ◎

 今回、山田選手と楽しんだお酒の名前は?

 お酒は20歳になってから。

 お酒は楽しく適量を。

 飲酒運転は絶対にやめましょう。

 妊娠中や授乳期の飲酒はお控えください。

 

(構成・写真/杉浦泰介)


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