30日、プロ野球日本シリーズの第3戦が行なわれ、稲葉篤紀の一発で勢いに乗った打線が効率よく得点を重ね、中盤以降はレギュラーシーズン通りの小刻みな継投で逃げ切った北海道日本ハムが今シリーズ初勝利を収めた。これで通算成績は巨人2勝1敗となった。

◇第3戦
 稲葉、猛攻の口火を切る先制弾(日本ハム1勝2敗、札幌ドーム)
巨人          3 = 000020010
北海道日本ハム   7 = 02300101×
勝利投手 ウルフ(1勝0敗)
敗戦投手 ホールトン(0勝1敗)
本塁打  (日)稲葉1号ソロ
 敵地で痛い連敗を喫し、ホームの札幌ドームで3連戦で巻き返しをはかりたい北海道日本ハムは、大事な一戦の先発にブライアン・ウルフを立てた。ウルフは第2戦で決勝点となった先頭打者ホームランを放った長野久義を見逃し三振に切ってとると、後続を連続で内野ゴロに仕留め、三者凡退と最高の立ち上がりを見せた。ウルフは2回表もランナーを出したものの、無失点に抑える。

 そのウルフの好投に打線が応えた。2回裏、中田翔の空振り三振で満員の札幌ドームに響くため息まじりの歓声がまだ消えない中、稲葉篤紀が巨人の先発、デニス・ホールトンの初球、内角低めのスライダーをうまくすくい上げた。一瞬にして札幌ドームは大歓声に包まれ、打球はライトスタンドへ。ベテランの一発で日本ハムが先取点を挙げた。

 さらに日本ハムはチャンスをつくる。2死後、マイカ・ホフパワーがストレートの四球で出塁すると、大野奨太がヒットで続き、一、三塁とした。そして金子誠が外角低めのスライダーに必死に食らいつき、ショートの深いところに転がすと、これが内野安打となり、日本ハムに2点目が入った。

 打線から大きな援護をもらったウルフだが、3回表、2死からピンチを招いた。長野にヒットを打たれると、続く松本哲也の打席で長野に盗塁を許す。さらにウルフのワンバウンドのボールをキャッチャー大野が後ろに大きくそらし、長野を三進させてしまう。さらに松本を四球で出し、2死一、三塁とした。しかし、坂本勇人を内野ゴロに打ち取り、このピンチを凌ぎ切った。

 一方、ホールトンは徐々に制球が乱れ始める。3回裏、1死から糸井嘉男、中田と2者連続で四球で出し、自らピンチを招いた。ここで打席には先制弾を放った稲葉。その稲葉が高めに抜けたチェンジアップを見逃さず、右中間へ。二塁ランナー糸井が返り、日本ハムが3点目を挙げた。

 なおも1死二、三塁から小谷野栄一が粘った末の9球目、外角ストレートをセンターへ弾き返し、中田が4点目のホームを踏んだ。二塁ランナー稲葉はホームでアウトになるも、打った小谷野は二塁へ。ここで巨人はホールトンを諦め、このシリーズ初登板のサウスポー高木康成にスイッチした。だが、2試合で1得点とこれまでの鬱憤を晴らすかのように、日本ハム打線の勢いは止まらない。ホフパワーにもタイムリーが出て、序盤で早くも5点のリードを奪った。

 一方、巨人打線はチャンスをいかすことができない。4回表、1死から四死球で一、二塁とするも、ジョン・ボウカーは内角に食い込むシュートをひっかけセカンドゴロに。4−6−3で併殺打となり、またもランナーをホームに返すことができなかった。しかし5回表、疲労が出てきたのか、要所を締める力投で無失点に封じてきたウルフのボールが高めに浮き始める。それを巨人打線が見逃さなかった。亀井義行、寺内崇幸とこの試合チーム初の連打で無死一、三塁とした。長野はセカンドゴロに倒れ、4−6−3の併殺打となるも、この間に三塁ランナー亀井が返り、ようやく1点を返した。

 2死無走者となった巨人だが、松本がヒットと盗塁で二塁まで進むと、続く坂本勇人が高めに抜けたカーブをうまく弾き返し、レフトへ。俊足の松本は一気にホームへ返り、巨人は2点目を挙げ、その差を3点とした。さらに浮き足立つ日本ハムのバッテリー間のミスもあり、2死二塁とした巨人。ここで主砲・阿部慎之助が打てば、試合の流れは巨人へと傾くと思われたが、阿部はセカンドゴロに。逆シングルで取ったセカンドの今浪隆博がジャンピングスローで阿部をアウトにし、勢いがかった巨人打線の芽を摘んだ。

 両足首のケガを押して出場していた阿部は、一塁への激走でさらに右足首の状態を悪化させてしまう。その裏、原辰徳監督は阿部をベンチに下げる決心をし、実松一成に託した。さらにマウンドには3番手・小山雄輝を上げた。その小山はバックの好守にも助けられ、簡単に2死を取るも、ここから日本ハム打線につかまる。小谷野にヒットを許すと、ホフパワーにはストレートの四球を出してしまう。さらに大野にもヒットを打たれ、2死満塁とした。このピンチをバックが救った。続く金子の打球はセンター前へ。この打球にセンターの松本が猛ダッシュし、飛びついた。松本のグラブに白球がおさまると、このファインプレーに驚きと喜びが入り混じった大歓声が札幌ドームにこだました。

 このプレーで試合の流れを引き寄せたい巨人だったが、6回表、この回からマウンドに上がった日本ハム2番手・宮西尚生を打ち崩すことができない。高橋由伸、村田、ボウカーと簡単に倒れた。その裏、日本ハムは先頭の陽岱鋼にようやくヒットが出て、この試合初めて無死からランナーを出した。今成はセオリー通りに送りバントをきっちりと決め、1死二塁とした。1点もやりたくない巨人は小山からルーキー高木京介にスイッチする。レギュラーシーズンでは23試合連続無失点を記録するなど、抜群の安定感を誇った高木京だったが、2死後、三塁にランナーを置いての場面、中田への4球目のチェンジアップを手にひっかけ、バッターボックスのかなり前でバウンドさせてしまう。キャッチャー実松が懸命に右肩で止めにかかるも、大きくバウンドしたボールはファウルグラウンドへ。三塁ランナー陽がホームへ返り、両軍にとって大きな1点が日本ハムに入った。7回表、3番手としてマウンドに上がった石井裕也が亀井、寺内、そして長野と3者連続三振に切って取る。

 これで完全に主導権を握ったかに思われた日本ハムだったが、8回表、満を持してマウンドに上げたセットアッパー増井浩俊が巨人打線から3連打を浴び、無死満塁とピンチを招いた。しかし、増井が踏ん張る。高橋を三塁へのファウルフライに打ち取ると、村田はピッチャーゴロに仕留め、2死とした。代打・石井義人の内野安打で1点を返されたものの、続く亀井をレフトフライに打ち取り、なんとか最少失点に抑えた。その裏、日本ハムは巨人バッテリーのミスで1点を追加し、その差を4点に広げた。9回表には今シーズン初めて登場した守護神の武田久が2死から連打を浴び、ピンチを招いたものの、最後は実松をセンターフライに打ち取り、無失点に抑えた。

 第1、2戦と合わせて1得点と打線に元気のなかった日本ハムだが、この試合は先発全員安打の12安打7得点。投手陣も巨人打線に11安打を打たれながら粘りのピッチングで流れを引き渡さなかった。これで通算成績は巨人2勝1敗となり、明日の第4戦はこのシリーズの流れを決める大事な一戦となる。