31日、プロ野球日本シリーズの第4戦が行なわれた。前日の打撃戦とは一転、日本ハム・中村勝、巨人・宮國椋丞の両先発投手がほぼ完璧なピッチングを披露。その後のリリーフ陣も得点を許さず、試合は今シリーズ初の延長戦となった。11回までスコアボードにゼロが並ぶ投手戦が展開される中、延長12回裏、相手ミスから得たチャンスにベテラン飯山裕志が決勝打を放ち、日本ハムが劇的なサヨナラ勝ちを収めた。

◇第4戦
 飯山、値千金のサヨナラ打!(日本ハム2勝2敗、札幌ドーム)
巨人          0 = 000000000000
北海道日本ハム   1 = 000000000001× (延長12回)
勝利投手 宮西(1勝0敗)
敗戦投手 西村(0勝1敗)
 勝てば日本一に王手をかける巨人と、2勝2敗とタイに持ち込むことができる北海道日本ハム。両軍にとってシリーズの流れを占う大事な一戦となったこの試合、巨人は2年目の宮國椋丞、対する日本ハムは3年目の中村勝を先発に起用し、20歳同士の白熱した投げ合いとなった。

 初回、巨人はプレーオフ初登板の中村の立ち上がりを攻めた。先頭の長野久義がヒットを放つと、松本哲也がきっちりと送り、1死二塁に。続く坂本勇人にもヒットが出て、1死一、三塁と先制のチャンスをつかんだ。しかし、負傷で欠場した阿部慎之助のいない穴を埋めるべく4番に座った高橋由伸、さらには村田修一と主軸から快音は聞かれず、一人もランナーを返すことができなかった。

 初回のピンチを切り抜けた中村は緊張の糸がほぐれたのか、2回以降は持ち味の落差のある緩いカーブをうまく使い、巨人打線にチャンスを与えなかった。一方の宮國も打者の打ち気をそらす緩い変化球や手元で動くツーシームなどでタイミングを狂わす巧みなピッチングを披露。3回まで1安打無失点、結果的には全て3人で終わらせるという好投で日本ハム打線を封じた。

 その宮國を打ちあぐねていた日本ハムは4回裏、ヒットと2つの四球で2死ながら満塁と初めて得点圏にランナーを置き、絶好のチャンスをつかんだ。しかし、小谷野栄一は宮國のシュート気味のストレートにタイミングが合わず、ファーストへのファウルフライに倒れた。

 巨人は6回表、長野のヒットと松本の送りバントで1死二塁と初回以来、ランナーをスコアリングポジションに置いた。しかし、ここでも中村は落ち着いていた。坂本をカーブでレフトフライに打ち取ると、高橋を伸びのあるストレートで空振り三振に切ってとった。中村は7回表も三者凡退に切ってとり得点を許さなかった。

 8回表、栗山英樹監督はその中村を下げ、2番手にサウスポー石井裕也をマウンドに上げる。これに対し、巨人ベンチも動いた。この日無安打に終わっていた左の古城茂幸に代えて、右の寺内崇幸を代打に送った。石井はその寺内を四球で出すと、実松に送りバントを決められ、1死二塁といきなりピンチを招いた。しかし、この日2安打と当たっている長野をわずか1球でライトフライに打ち取ると、松本には鋭い打球を飛ばされるも、これがショートへのライナーとなり、石井はなんとか凌ぎ切った。

 その裏、巨人も継投に入り、宮國から福田聡志にスイッチした。福田は簡単に2死を取るも、陽岱鋼に二塁打を打たれる。このピンチを救ったのは、前日見事なダイビングキャッチを見せた松本だった。今浪隆博の打球はセンターの前へ落ちるかと思われたが、前進守備をしていた松本が猛ダッシュをかけ、アウトにしてみせた。

 9回表、日本ハムはその裏で打線が奮起してくれることを信じ、守護神・武田久をマウンドに上げた。しかし、その武田が1死からこの日無安打だった高橋、村田にヒットを打たれ、さらに2死後には矢野謙次を四球で出し、満塁としてしまう。ここで巨人は代打に石井義人を送った。石井は1−1からのストレートを左中間へ弾き返した。前進守備の外野の間を抜けるかと思われたが、レフトの中田翔が好守備を見せ、アウトにしてみせた。

 その裏、巨人は山口鉄也をマウンドに上げた。山口は簡単に2死を取るも、稲葉篤紀に二塁打を打たれ、一打サヨナラの場面となった。ここで原辰徳監督自らがマウンドに行き、山口に激を飛ばした。しかし、山口は小谷野にヒットを打たれ、2死一、三塁とピンチを広げてしまった。打席にはマイカ・ホフパワーに代えて二岡智宏。ところが、巨人はこの二岡との勝負を避け、敬遠で満塁策をとった。スタンドからはブーイングが巻き起こり、札幌ドームは異様な雰囲気に包まれる。そんな中、打席には鶴岡慎也の代打・杉谷拳士。その杉谷に対し、山口は全球ストレート勝負で挑むと、力でねじ伏せるかのようにセカンドゴロに打ち取り、ピンチを凌いだ。

 0−0のまま試合は今シリーズ初の延長戦へと突入した。延長に入るとお互いにチャンスらしいチャンスがなく、さらに膠着状態となった。ようやく試合が動いたのは12回裏だった。先頭の小谷野がヒットで出塁すると、中島卓也は送りバントを試みる。しかし、打球はピッチャー西村健太朗の前に転がり、一塁ランナー小谷野が二塁で刺され、1死一塁となった。続く大野奨太も送りバントをすると、ここで巨人の守備に痛恨のミスが出た。西村からの送球を一塁カバーに入った藤村大介が取り損ねてしまったのだ。1死一、二塁と一打サヨナラのチャンスを迎えた日本ハム。最後に決めたのはプロ15年目、ベテランの飯山裕志だった。飯山は西村の149キロ、外角低めのストレートを迷わず振り抜くと、打球は左中間へ。レフト矢野が激走するも、届かず。二塁ランナー中島が一気にホームへ返り、日本ハムがサヨナラ勝ちを収めた。手に汗握る投手戦を制した日本ハムはこれで通算成績を2勝2敗のタイに戻した。