1日、プロ野球日本シリーズの第5戦が行なわれた。2回表、初戦と同じくジョン・ボウカーが吉川光夫に一発を浴びせて先制した巨人は、その後も攻撃の糸を緩めず、効率よく追加点を挙げて15安打10得点。投げてはエース内海哲也が苦しみながらも粘りのピッチングで、8回まで7安打2失点に抑えた。これで巨人が3年ぶりの日本一に王手をかけた。

◇第5戦
 ボウカー、吉川から2本目の先制2ラン(巨人3勝2敗、札幌ドーム)
巨人          10 = 023120002
北海道日本ハム   2 = 011000000
勝利投手 内海(2勝0敗)
敗戦投手 吉川(0勝2敗)
本塁打  (巨)ボウカー2号2ラン
 前日、北海道日本ハムが延長戦を制したことで2勝2敗となり、この試合に勝った方が日本一に王手をかけるというお互いにとって大事な一戦。初戦と同じ日本ハム・吉川光夫、巨人・内海哲也のエース対決となり、前日に続く投手戦が予想された。ところが、この試合は和やかな札幌ドームに大ブーイングが巻き起こるなど、荒れた試合となった。

 初戦で巨人打線に打ち込まれ、本塁打を含む7安打4失点で4回KOを喫した吉川は、気負いが生じたのか、明らかに力んでいた。先頭の長野久義への初球、強気にストレートを投じるも、これが大きく外れる。すると、2球目以降もストライクが入らず、いきなりストレートの四球で長野を出してしまう。これが日本ハムの歯車を狂わせるきっかけとなった。

 続く松本に対してもストライクが入らず、カウント2−0となったところで、たまらずキャッチャー鶴岡慎也とファーストの稲葉篤紀がマウンドに駆け寄った。それでも吉川は次のボールもストライクにならず、7球続けてボールとしてしまう。自らを落ち着かせるかのように大きく息を吐いた吉川は、松本への4球目、ストレートを丁寧に投げ込むと、ようやく初めてのストライクを取った。

 しかし、結果的に松本に送りバントを決められ、1死二塁とランナーをスコアリングポジションに進めてしまう。さらに坂本勇人をセンターフライに打ち取るも、長野の好走もあって2死ながら三塁とピンチとなった。打席には前日に続いて欠場となった阿部慎之助の代わりにシリーズ初の4番に座った村田修一。フルカウントまで粘られるも、吉川は村田をライトフライに仕留め、凌ぎ切った。一方、内海は簡単に3人で終わらせ、危なげないピッチングで最高の立ち上がりを見せた。

 2回表、今度は日本ハムに守備のミスが出た。吉川は先頭の矢野謙次をボテボテの内野ゴロに仕留めた。ところが、これをシリーズ初スタメンの飯山裕志が一塁へ悪送球。結果的に矢野の内野安打となるも札幌ドームに嫌な空気が漂う。1死後、打席には初戦で吉川から試合の流れを引き寄せる3ランを放ったジョン・ボウカー。吉川はストレートで2ストライクと追い込むも、4球目、やや甘く入ったシュートをボウカーにフルスイングされる。鋭いライナー性の打球はそのまま勢いよくライトスタンドへ消えていった。巨人が2点を先制し、敵地で初めてリードを奪った。

 その裏、日本ハムはすぐさま反撃する。先頭の中田翔が三遊間を破り、チーム初安打を放つ。稲葉、小谷野栄一の内野ゴロの間に中田が三進すると、金子誠のタイムリー二塁打で日本ハムが1点を返した。しかし、吉川の制球が定まらない中、巨人は3回表、1死二塁から坂本のタイムリーで再び2点差とすると、その後、矢野の犠牲フライ、エドガー・ゴンザレスにもタイムリーが出て、その差を4点に広げた。なおも2死二塁の場面、栗山英樹監督は早くも吉川を諦め、多田野数人にスイッチした。多田野は先制の2ランを放ったボウカーをセンターフライに打ち取り、なんとか流れを断った。

 その裏、日本ハムは2死から「2番・DH」でスタメンに起用された杉谷拳士が二塁打を放つと、続く糸井嘉男が外寄りのストレートをうまく弾き返し、センターへ。俊足の杉谷が一気にホームへ還り、2点目を挙げた。追い上げをはかる日本ハムだったが、4回表、不運な出来事が起きた。先頭の寺内崇幸の打球を好守の金子がファンブルし、出塁させてしまう。

 さらに多田野の加藤健への初球、内角高めのボールが死球と判定され、さらにこれが危険球とみなされて多田野は退場となった。この判定に納得のいかない栗山監督は球審に詰め寄り、猛抗議を行なった。しかし判定は覆されず、日本ハムは渋々マウンドに3番手・森内壽春をマウンドに上げた。その森内から巨人は1点を奪い、再び4点差とした。5回表には2死二、三塁から加藤が大ブーイングが巻き起こる中、前進守備をしていたレフト中田の頭を越える二塁打を放ち、巨人が2点を追加。6点差として、勝利をほぼ手中におさめる。

 6回以降はお互いにランナーを出しても、投手が要所を締める力投で追加点を許さず、スコアボードに「0」が並んだ。すると8回表、日本ハムは今季の開幕投手、斎藤佑樹をマウンドに上げた。斎藤はバックの好守にも助けられ、巨人の上位打線を3者凡退に切ってとった。しかし、9回表、その斎藤が巨人打線につかまった。矢野、代打・高橋由伸と連打を浴びると、2死後には代打・石井義人を四球で出し、満塁としてしまう。鈴木尚広にタイムリーを打たれると、松本はゴロに打ち取るも、これが内野安打となり、斎藤はこの回、2失点を喫した。

 8点と大量リードを奪った巨人は9回裏、前日の第4戦で飯山にサヨナラ打を浴びた西村健太朗をマウンドに上げた。その西村は2死後、稲葉、大野奨太に連打を浴び、きっちりと3人で終わらせることができない。それでも最後は代打のマイカ・ホフパワーを内野ゴロに打ち取り、なんとか無失点に封じた。これで3勝2敗とした巨人が日本一まであと1勝と迫った。第6戦は3日、東京ドームで行なわれる。果たして、3年前同様、4勝2敗で巨人が頂点をつかむのか。