2月25日の福岡ソフトバンク戦、28日の台湾プロ選抜戦と連敗した侍ジャパンの打線の中で、ひとり気を吐いていたのがカープの菊池涼介だ。

 

 2試合続けて4打数3安打の猛打賞と打ちまくった。特に28日の台湾プロ野球選抜戦では二塁打2本、三塁打1本の大当たり。打点も2つ叩き出し、チャンスメイク役もポイントゲット役も果たして2番打者として存分な働きを見せた。小久保裕紀監督の評価も「菊池だけが目立っていた」と上々だ。

 

 しかしカープファンは気が気ではあるまい。もし決勝トーナメントまで勝ち進んで渡米し、メジャーリーグのスカウトの目に止まると、ポスティングシステムを利用してのメジャーリーグ移籍が早まるのではないか、と。

 実際、菊池には追い風が吹いている。昨シーズンからメジャーリーグでは、いわゆる"ゲッツー崩し"を狙ったスライディングが禁止されている。日本でも今季からの導入が決まった。

 

 新ルールの概要はこうだ。
<ダブルプレーを阻止する目的で野手に接触したスライディングにインターフェアを宣言する。走者はベースの手前でスライディングを開始すること。走者はスライディングの後、手もしくは足がベースについていること。ホームベース以外の塁では走者はスライディング後にベースに留まること>

 

 これは日本人内野手にとってはありがたい。というのも岩村明憲や西岡剛らが"ゲッツー崩し"の危険なスライディングを受け、病院送りにされたことは記憶に新しい。特に岩村の場合は悲惨で、この時の故障が原因で選手生命を縮めてしまった。

 

 日本人内野手は二塁ベースの前でプレーする習性があり、これが狙われやすい原因となっていた。だが新ルールでは、野手の足に向かうスライディングは全て禁止されている。

 

 日本の球団からすれば、「アメリカに行くと内野手は狙われるぞ」といった"脅し文句"が使えなくなった。引き留めには別のロジックが必要になりそうだ。

 

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)


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