ボクシングのWBC世界ダブルタイトルマッチが3日、宮城県のゼビオアリーナ仙台で行われ、バンタム級では王者の山中慎介(帝拳)が同級7位の挑戦者トマス・ロハス(メキシコ)を7R36秒KOで下し、2度目の防衛に成功した。序盤からペースをつかんだ山中は最後に得意の左を連続して相手の顔面に決め、圧巻の勝利を収めた。またフライ級では王者の五十嵐俊幸(帝拳)が同級7位で挑戦者のネストール・ナルバエス(アルゼンチン)を2−0の判定で辛くも下し、初防衛を果たした。
<山中、円熟の勝利>

 渾身な左が頬をとらえると、細身の挑戦者が前のめりに崩れ落ちた。その前にも強烈な左フックに右アッパーがヒット。2階級制覇を狙ったメキシコ人を見事に沈めた。

 サウスポー同士の対戦だけあって、左はお互いに警戒してくる。ポイントになるのは右のパンチだった。山中が流れをつかんだのは、その右だ。立ち上がりから左をのぞかせつつ、右で相手をぐらつかせた。

 2Rにはカウンターの右ストレートで相手のヒザが折れる。右で主導権を握ると、左のボディもヒット。独特のリズムでパンチを繰り出す相手になかなか攻撃はつながらなかったが、序盤4Rを終了しての公開採点では2者が山中を支持した。

「体がほぐれてきて勝てると思った」と5Rには左から返しの右が顔面にヒット。続く6Rには右での誘っての左ストレートで挑戦者の腰を折った。コンビネーションが徐々に決まり出し、これが7RでのKO劇につながった。

 これで初防衛戦ではビック・ダルチニアン(オーストラリア)、そしてロハスと世界的にも知られた強豪を相次いで撃破した。チャンピオンになり、この10月には30歳を迎えて、円熟味が増している。「負ける気はしない。強い相手を用意してほしい」。王者の道は向かうところ敵なしになってきた。

<五十嵐、苦戦の初防衛>

 両目の上をカットし、顔面は血に染まった。難しいと言われる初防衛戦の相手は22戦無敗のナルバエス。難敵に薄氷を踏むような勝利だった。

 あえて打ち合いを臨んだことが苦戦の一因になった。軽やかなフットワークからすばやくパンチを打ち込むのが本来の五十嵐の持ち味。だが、この日は序盤から足を止め、正面で拳を交える場面が多かった。

 これだとパンチがヒットする確率が高まると同時に、被弾するリスクも背負う。実際、右のストレートが何度も顔に入り、3Rには早くも右目の上をカットした。

 それでも手数では相手を上回った。5Rには左アッパー、ボディ、ストレートの連打と多彩な攻めを見せる。中盤にはようやく足を使って挑戦者のパンチをかわせるようになり、8Rを終えての公開採点では3者とも王者が3点リードをつけた。

 ところが、ここからの4Rが長かった。意を決して攻め込んでくるナルバエスに対し、正面に入って応戦してしまう。ボディの連打は確実に挑戦者の体力を消耗させたものの、返しの右を避けきれず、流れを引き寄せられない。

 11Rには左フックで相手をぐらつかせながら、反撃の右をもらって打ち合いに。相手の圧力にラスト30秒は足を使って逃げるかたちになり、挑戦者がこのラウンドをモノにする。終わってみれば1者はドロー、2者が2ポイント差での際どい判定勝ち。ベルトは守ったものの、今後に課題を残す一戦だった。