3日、プロ野球日本シリーズの第6戦が行なわれた。巨人は序盤で長野久義の一発などで3点のリードを奪い、試合の主導権を握った。中盤には中田翔に同点3ランを打たれるも、すぐに阿部慎之助が貴重な勝ち越し打を放つ。大黒柱が挙げたこの1点をリリーフ陣が守りきり、巨人が3年ぶり22回目の日本一に輝いた。

◇第6戦
 阿部、値千金の決勝打!(巨人4勝2敗、東京ドーム)
北海道日本ハム   3 = 000003000
巨人          4 = 21000010×
勝利投手 高木京(1勝0敗)
敗戦投手 石井(0勝1敗)
セーブ   山口(1S)
本塁打  (日)中田1号3ラン
       (巨)長野2号ソロ
 第2戦でともに好投を披露した巨人・澤村拓一、北海道日本ハム・武田勝の先発で始まった第6戦。先行したのは、3年ぶりの日本シリーズまであと1勝に迫った巨人だった。1回裏、先頭の長野久義がヒットを放つと、松本哲也はきっちりと送りバントを決めた。さらに坂本勇人もヒットで続き、1死一、三塁。打席には右足首のケガをおして強行出場の阿部慎之助を迎える。

 帰って来た「主将で4番」の大黒柱にスタンドからはひときわ大きな声援が沸きあがった。阿部への3球目、一塁ランナーの坂本が盗塁を成功させ、二、三塁とチャンスを広げた後の4球目、阿部は内角に食い込む変化球を鋭く振り抜いた。しかし、打球はファースト稲葉篤紀の真正面へ。ファーストライナーで2死となる。

 続く村田修一が四球で出塁し、満塁となったところで、大きな仕事をやってのけたのはプロ10年目、32歳の矢野謙次だった。矢野は失投とも思える甘く真ん中に入るストレートをジャストミート。あわやホームランかと思われた打球はレフトフェンスを直撃した。これで2走者が返り、巨人が2点を先制した。2回裏には、2死無走者から長野が第2戦に続いて武田勝から一発を放ち、貴重な追加点を挙げた。

 もうひとつも落とすことができない日本ハムは3回表、制球力が定まらない武田勝を諦め、2番手・谷元圭介をマウンドに上げた。栗山英樹監督のこの早めの決断が試合の流れを変えた。谷元はランナーを出しながらも要所を締める好投を披露し、6回まで無失点と指揮官の期待に応えてみせた。

 すると6回表、やや球威が落ち始めた澤村を日本ハム打線がとらえる。1死から陽岱鋼がヒットを放つと、2死後、糸井嘉男がこの日2本目のヒットで続き、一、三塁とした。打席には中田翔。2打席凡退に終わっていた中田だったが、この打席ではストレート一本に絞っていた。初球、そのストレートがくると、中田は迷わずフルスイング。バットの真芯で弾き返された打球は、日本ハムファンが詰め掛けたレフトスタンドへと勢いよく飛び込んだ。若き主砲の目の覚めるような一発で試合は振り出しに戻る。

 7回表、巨人は澤村から2番手・福田聡志にスイッチした。その福田が先頭の金子誠に内野安打を打たれると、続く大野奨太には送りバントを決められ、1死二塁とランナーをスコアリングポジションに進めてしまう。ここで日本ハムは勝負に出た。まずは代走に俊足の中島卓也を送った。そして宮西に代えてマイカ・ホフパワーを代打に送ったのだ。試合の流れを占う大事な場面、軍配が上がったのは福田だった。福田はホフパワーをレフトフライに打ち取り、2死とした。

 ところが突然、福田の制球が乱れ始めた。陽、今浪隆博と2者連続でストレートの四球で出し、満塁のピンチを招く。巨人はここでルーキー高木京介にスイッチした。打席にはこの試合2安打と当たっている糸井。糸井は高木の141キロのストレートをフルスイング。あわやホームランかと思われた打球はフェンス手前で失速し、ライトフライ。高木の球威が勝った結果となった。

 するとその裏、今度は巨人の主砲が大きな一打を放った。2死二塁の場面、阿部はカウント1−3からの5球目、高めに抜けたスライダーをセンターへ弾き返した。二塁ランナー長野が一気にホームへ返り、巨人が再び勝ち越した。

 8回表、巨人はスコット・マシソンをマウンドに上げた。マシソンは中田、稲葉と中軸を打ち取り、リズムよく2死を取る。ところが、小谷野栄一をストレートの四球で出してしまう。ここで日本ハムは代打に杉谷拳士を送った。杉谷はマシソンのフォークを完璧にとらえた。右中間を抜けたかと思われたが、ライトの長野が俊足を飛ばし、ランニングキャッチ。この好プレーに大きな拍手が送られた。

 試合は巨人1点リードのまま、最終回へと進んだ。巨人は信頼を寄せる山口哲也にマウンドを託した。山口はまずは大野をわずか2球で内野ゴロに打ち取る。しかし代打・二岡智宏を粘られた挙句に四球で出してしまう。それでも山口は続く陽を空振り三振に切ってとり、日本一まであと1死とした。東京ドームに「山口」コールが鳴り響く。

 しかし、日本ハムも粘りを見せる。代打に送られた鶴岡慎也が一、二塁間を破るヒットでつなぎ、選手会長としての意地を見せた。しかし、反撃もここまでだった。続く糸井は山口の初球、シュートをひっかけ、ボテボテのショートゴロに。ショート坂本勇人が間一髪で糸井をアウトにし、ゲームセット。巨人は大黒柱の阿部が挙げた1点を守り切り、3年ぶり22度目の日本一を決めた。

 11度、宙を舞った原辰徳監督は、うっすらと目に涙を浮かべながら、満面の笑顔で次のように語った。
「しびれるゲームではあったが、選手たちが堂々と戦ってくれて、日本一という栄光を手にできたことに関しては大変満足している。日本シリーズは格別で、異次元の世界。従って感激も非常に大きい。(阿部は)本来なら出場もどうかなというところだったが、チームの大黒柱として最後を決めてくれた。大変価値ある一打だった。ジャイアンツ魂を見せてくれたと思う」