いよいよ本日から「TOYOTAプレゼンツクラブワールドカップ2012」(以下クラブW杯)が開幕する。舞台は昨年に続いて日本。チェルシー(欧州、イングランド)、コリンチャンス(南米、ブラジル)、モンテレイ(北中米カリブ海、メキシコ)、FCオークランド・シティ(オセアニア、ニュージーランド)、蔚山現代(アジア、韓国)、アル・アハリ(アフリカ、エジプト)、Jリーグ王者のサンフレッチェ広島(初出場)が世界一の座を争う。開幕戦(横浜国際競技場)では広島とオークランドが激突する。
 また、今大会ではFIFA主催の国際大会で初めて「ゴールラインテクノロジー(GLT)」が導入される。ゴールを科学的に判定するもので、その効果に世界が注目している。
(写真:GLTの「ゴールレフ」で使用される腕時計。ゴール時には文字盤に「GOAL」と表示される)
 広島、バランス力で世界に挑む

 ついに世界デビューだ。広島は今季、クラブ創設21年目で、悲願のJ1リーグ初制覇。 攻守の歯車が噛み合い、得点数はリーグ2位(63)、失点数もリーグ2位(34)という優勝するにふさわしい内容だった。リーグ戦優勝の要因は、攻守のバランス力に優れていたことだ。

 昨季は、ミハイロ・ペトロヴィッチ前監督(現浦和)が築いた攻撃的なパスサッカーが機能していた。それでも7位に終わった理由は、守備に綻びがあったからだ。昨季の1試合平均失点数は1.44。今季から指揮を執る森保一監督は、まず守りの整備にとりかかった。
「ミシャさん(ペトロヴィッチ)のサッカーをよりシンプルにし、守備ではファースト・ディフェンダーの役割を明確にした」
 組織的な守備をチームに組み込んだ結果、今季の1試合平均失点数は1.00に激減したのである。守備の安定があったからこそ、攻撃も機能したといえるだろう。

 中心選手はリーグMVPのFW佐藤寿人だ。リーグ戦では22ゴールをあげて、自身初の得点王に輝いた。DFラインの裏を取る一瞬のスピードは日本ナンバーワンと言っても過言ではない。シュートの技術も高く、難しい体勢からゴールネットを揺らす場面も多い。広島としては、リーグ戦同様、エースにどれだけチャンスボールを供給できるかがポイントだ。

 初戦の相手・オークランドは2年連続4回目のクラブW杯であり、世界での経験値は広島より上だ。近年はスペイン人監督の掲げるパスサッカーが融合しつつあるが、やはり特徴はフィジカルの強さを生かしたパワーサッカーだ。広島の選手はヘディングや球際の競り合いで、力負けする場面が多くなるだろう。ゆえに、1対1ではなく複数人で相手に対応することが求められる。攻撃も、簡単なロングボールやセンタリングでは、体格で上回るオークランド守備陣に跳ね返される。持ち前のパスワークで、相手の陣形を崩した上で佐藤ら前線の選手が裏に抜け出し、ゴールに迫りたい。

“ルーキー”が大会の“常連”から世界初白星を奪い、勢いを手にできるか。広島がJ屈指のバランスサッカーで、世界に旋風を巻き起こす。

 “幻のゴール”撲滅へ

 白熱の試合以上に注目されているのがGLTだ。

 同技術が導入された理由は、近年、“幻のゴール”が多発しているからに他ならない。10年南アフリカW杯の決勝トーナメント1回戦のドイツ対イングランドでは、イングランド代表フランク・ランパードのシュートがゴールラインを明らかに越えたにもかかわらず、ゴールと判定されなかった。
 今年6月に行なわれたEUROでも、グループリーグのウクライナ対イングランドで幻のゴールが生まれ、試合後にUEFAの審判部長が誤審と認める一幕があった。これを受けてFIFAのゼップ・ブラッター会長が「GLTは、もはや選択肢ではなく、必要不可欠なもの」と、同技術導入を示唆。7月の国際サッカー評議会で正式にGLT採用を決定した。

 導入されるのは「ゴールレフ」と「ホークアイ」の2つ。正確性はもちろんのこと、判定にかかる時間はいずれも1秒以内。これで試合の流れを寸断したくないというFIFAの要求をクリアした。今回は「ゴールレフ」が横浜国際競技場(日産スタジアム)、「ホークアイ」は豊田スタジアムに設置される。

「ゴールレフ」は磁場でボール位置を判別する。ボールのなかに3本のコイルが内蔵されていて、ゴールの枠内には磁場を発生させている。ボールが完全にゴールラインを割るとコイルと磁場が反応。判定結果が審判のつける腕時計に「GOAL」と表示される仕組みだ。
(写真:「ゴールレフ」でポストの内側に取り付けられた磁場装置)

 一方、「ホークアイ」はゴール裏に6台のカメラを設置(両サイド計12台)し、ボールの動きをとらえ、3次元で正確な位置を導きだす。こちらも判定結果は審判の腕時計に伝送される。

 果たして、GLT導入でサッカー界から“幻のゴール”は消滅するのか。その成果に全世界が注目している。

 クラブW杯スケジュール
○12月6日(木)
(M1)サンフレッチェ広島 × オークランド・シティ(横浜国際、19:45〜)

○12月9日(日)
(M2)蔚山現代 × モンテレイ(豊田ス、16:00〜)
(M3)M1勝者 × アル・アハリ(豊田ス19:30〜)

○12月12日(水)
(M4)5位決定戦 M2敗者 × M3敗者(豊田ス、16:30〜)
(M5)準決勝 M3勝者 × コリンチャンス(豊田ス、19:30〜)

○12月13日(木)
(M6)準決勝 M2勝者 × チェルシー(横浜国際、19:30〜)

○12月16日(日)
(M7)3位決定戦 M5敗者 × M6敗者(横浜国際、16:30〜)
(M8)決勝 M5勝者 × M6勝者(横浜国際、19:30〜)