6日、FIFAクラブワールドカップ2012が開幕戦を迎え、横浜国際競技場でサンフレッチェ広島(開催国代表)がオークランド・シティ(オセアニア代表、ニュージーランド)と対戦した。広島は前半開始からボールを支配したものの、ゴールは奪えないまま試合を折り返す。試合が動いたのは後半21分、広島がMF青山敏弘のゴールで先制。その後も追加点こそ奪えなかったものの、主導権を握り続け、世界大会初白星をあげた。広島は9日に行われる準々決勝(豊田スタジアム)で、アル・アハリ(アフリカ代表、エジプト)と対戦する。

 青山、決勝ミドル弾! (横浜国際)
サンフレッチェ広島 1−0 オークランド・シティ
【得点】
[広島] 青山敏弘(66分)
 堂々の世界デビューだ。試合開始から持ち前のパスワークで試合を支配。なかなか得点につながらないなかでも焦らず、相手ゴールに迫り続けた。

「ひとりひとりのボールをキープする時間が長くなる」
 森保一監督は試合前、試合展開をこう予測していたという。オークランドが自陣に引いた布陣を敷いてくると考えていたからだ。

 果たしてゲームは指揮官の読みどおりとなった。序盤からゴール前に人数をそろえる相手に対して、広島はボールを回して攻撃を組み立てた。その上で、森保監督は選手に「ボールをシンプルに動かそう」と指示していた。選手ひとりあたりのボールキープ時間が長ければ、相手もパスコースを読む時間がある。パスを読まれ、体を寄せられれば、フィジカルが強い相手選手に競り負ける可能性がある。それを避けるため、指揮官はできるだけ選手のボール離れを早くし、オークランドにプレスをかける的を絞らせないようにしたのだ。

 選手も監督のプランを忠実に遂行した。パスワークで相手のマークをずらしてからの中央突破やサイド攻撃と、さまざまなかたちでオークランド守備陣を翻弄した。前半8分には、ボランチの青山がFW佐藤寿人からのパスを受け、PA内で右足のシュートを打った。20分には、MF森崎浩司が右CKのこぼれ球を狙った。いずれもGKのファインセーブに阻まれたものの、広島が主導権を握ったのは明らかだった。

 0−0のまま迎えた後半も広島優勢は変わらない。後半6分、MF高萩洋次郎がPA手前からの右足シュートがゴール左ポストを直撃。直後には、森崎浩が右サイドからのクロスをファーサイドでヘディングしたが、GKに間一髪防がれた。16分には、ベンチが動く。右MF清水航平に替えてMF山岸智を投入。さらに攻撃の活性化を試みた。

 そんな21分、待望の先制点が生まれた。決めたのは青山だ。波状攻撃をしかけていたなか、PA手前右よりでパスを受けて右足を一閃。無回転のシュートがGKの頭上を越えてから急激に落ち、ゴール左上に突き刺さった。本人が「昔、本田圭佑に教わったこともある」と明かす必殺シュート。森保監督は「引いた相手に対しての攻撃のひとつとして、ミドルシュートの判断はよかった」と称えた。

 ただ、得点以上にスタジアムが沸いたのは、広島恒例のゴールパフォーマンスが飛び出したときだった。披露したのは“魚釣り”。DF森脇良太とDF千葉和彦が魚になり、チームメイトに釣り上げられると、2万5174人の観客は大喜び。世界の舞台で広島というクラブをアピールした。

 先制後の広島は、オークランドの運動量が落ちたこともあって、さらにボールポゼッションを高めて攻め続ける。40分には森脇のPA手前からのミドルシュート。クロスバーを直撃して追加点とはならなかったが、最後まで攻撃の手は緩めなかった。守っては相手のロングボール主体の攻撃をしっかりと跳ね返し、完封。無理なパスやドリブルでボールを失ってオークランドに速攻の機会を与えることもなく、Jリーグを制した攻守のバランスの良さが光った。

「結果的に1点しかとれなかったが、数多くのチャンスをつくり、積極的に攻める姿勢で、我々の持ち味を出せた」
 森保監督は、冷静な口調で世界大会での初勝利を振り返った。準々決勝(9日、対アル・アハリ)は中2日という厳しい日程だ。だが、指揮官は「次も試合も勝って、またひとつ上にいきたい」と語気を強める。広島の冒険はまだ終わらない。