宮敏郎、24歳。早い始動で一本足で立つ独特なバッティングフォームから繰り出す鋭い打球は、見る者を魅了する。身長171センチと決して体格には恵まれていないが、鍛え抜かれた下半身の強さが勝負強いバッティングにつながっている。大学で投手から野手に転向した宮。果たして、現在のバッティングはどうつくりあげられてきたものなのか。
―― 最も自信のあるバッティングでのこだわりは?
宮: なるべく引きつけて、ボールを呼び込み、自分のポイントで打つこと。そして、強く当てようということだけを考えています。

―― 左足を高く上げて一本足で立つフォームへのきっかけは?
宮: 大学までは、普通に足を上げてというようなフォームでした。今のように一本足で立つようになったのは、社会人に入ってからです。コーチから「早めにタイミングを取って、ゆったりとボールを待ちなさい」という指導を受けたんです。それで、早く準備をするために、早めに足を上げるようになった。それで一本足で立つようになりました。

―― 一本足で立った時に意識する部分は?
宮: 上半身は力まずに楽に構えて、股関節から体重を後ろの右足に移動させます。意識するのは、右ヒザの内側ですね。イメージとしてはここに全体重を乗せて、一本の棒のような感じ。そこから一気に“ドン”という感じでバットを振り降ろすんです。

 足の震えが止まらなかった奇跡の一打

 宮の名がスポーツ紙上をにぎわせたのは、今年の都市対抗野球大会だ。初戦の日本通運戦、0−2で迎えた8回、1死満塁の場面で打席に立った宮は、初球の直球をフルスイング。打球はレフトスタンドへ飛び込み、逆転満塁弾となった。この試合を観戦していた長嶋茂雄巨人終身名誉監督をも大興奮させ、チームを3年ぶりの白星に導いた宮だが、実はほとんど記憶にないのだという。果たして、彼の心に色濃く残っている打席とは――。

―― 最も印象に残っている一打は?
宮: 今年の都市対抗の予選、第3代表決定戦・東京ガス戦での1打席目です。絶対に勝たないといけないという予選独特の雰囲気の中、3番という打順を与えられていましたので、ランナーを返さなくてはいけなというプレッシャーがありました。あんなに足が震えたのは初めてでしたね。試合前にはコーチからも「先制点を取れたら、絶対に勝てる」と言われていたんです。それでチャンスが初回に回ってきて、緊張していたんですけど、とにかく自分のバッティングを信じて打席に立ちました。フルカウントまで追いこまれて、それから2球粘ったんですけど、それでもまだ足が震えていました。右中間に打って、二塁に到達してようやく震えが止まりました。あんな状態で先制タイムリーを打つなんて、奇跡に近かったですよ(笑)。

―― ボールは見えていた?
宮: はい。気持ちの面での焦りというのはなかったので、しっかりとボールを見ることはできていました。それでもなぜか、体だけが勝手に緊張していて……。不思議なほど足が震えていました。あんなのはそれまでに記憶がありません。

―― 普段、チャンスの時の打席で考えていることは?
宮: 積極的に振っていこうというのはありますね。とにかく、打てる球は全ていこうと思っています。

 長打と確実性を兼ね備えた打者に

「多分、無理だろう……」。ドラフト会議当日、宮は同じく候補に挙がっていたチームメイトと共にテレビで会議の様子を窺いながら、半ば諦めていたという。そのため、自分の名前が読み上げられた時、にわかに信じることができなかった。それでもファン感謝デーに参加すると、プロへの自覚が少しずつ生まれ始めた宮。ドラフト当日を振り返り、プロへの意気込みを訊いた。

―― 指名がかかるまではどんな気持ちで待っていた?
宮: もともと指名されるとは思っていませんでした。それでもやっぱり気になっていたので、とにかく早く結果を出してくれ、という気持ちでした。5巡目が終わった頃には「このまま呼ばれずに終わるんだろうな」と諦めていましたね。ですから、名前が読み上げられた瞬間は、喜びというよりも「まさか!?」と信じられない気持ちでした。

―― 評価されたと思う点は?
宮: 打撃だと思います。打点に絡む勝負強さを買われたのかなと。

―― 球団へのイメージは?
宮: 若い選手が多くて、すごく元気のあるチーム。その中で自分は即戦力として考えられていると思いますので、1年目からしっかりとアピールしていきたいですね。

―― プロでの課題は?
宮: プロのピッチャーはスピードもキレもすごいと思うので、確実性を身につけたいなと思います。勝負強さはもちろんですけど、アベレージを残せて、長打もあるようなバッターになりたいですね。

 これまでの野球人生、苦しいことの方が多かったという宮だが、それでも努力を続けてきたのは、両親への感謝の気持ちだという。「活躍する姿を見せるのが一番の親孝行だと思っている」と宮。勝負強いバッティングで、厳しいプロの世界に挑む。

宮敏郎(みやざき・としろう)
1988年12月12日、佐賀県生まれ。小学6年から野球を始め、厳木高では1年春からベンチ入りし、同年秋からはエースとなる。2年夏からは「エースで4番」としてチームを牽引し、高校通算24本塁打をマークした。日本文理大では野手に転向し、1年時から試合に出場。同年秋にはサードのレギュラーを掴む。2、3年春は全日本大学選手権に出場し、3年時にはベスト8進出に貢献した。4年間でMVP3度、首位打者2度、ベストナイン3度を誇る。2011年、セガサミーに入社し、2年連続で打率3割をマーク。都市対抗出場など、チームに大きく貢献した。171センチ、85キロ。右投右打。

(聞き手・斎藤寿子)

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