元日、第92回天皇杯全日本サッカー選手権大会決勝が東京・国立競技場で行なわれ、柏レイソルがガンバ大阪を1−0で下し、初優勝(前身の日立製作所時代を含めると3度目)を収めた。前半、柏はG大阪に押し込まれる時間帯が続いた。しかし35分、セットプレーからDF渡部博文のゴールで先制に成功する。後半はG大阪にボールを支配されたものの、守備陣が体を張って凌いだ。元日決戦を制した柏が、アジアチャンピオンズリーグ(ACL)出場権を獲得した。

  渡部、値千金の決勝ヘディング弾!(国立)
ガンバ大阪 0−1 柏レイソル
【得点】
[柏] 渡部博文(35分)
 ネルシーニョマジックで勝利を呼び込んだ。柏は前半、押し込まれる時間帯が長かった。ネルシーニョ監督は「流れを変えるために、指揮官として決断した」と前半32分に早くも交代カードを切り、そこから流れが一変。先制弾につながり、守りも落ち着いた。

 序盤はG大阪の高いポゼッションに苦しみ、なかなかボールを奪えなかった。攻撃では前線で起点をつくれず、効果的なかたちをつくれなかった。

 そんな前半32分、指揮官が動いた。トップ下に入っていたMF水野晃樹に代えて、FW田中順也を投入。さらに1トップのFW澤正克と田中のポジションを入れ換えた。その際、指揮官は田中に「G大阪のDFラインを警戒させたかったので、順也にDFを引きつける」役割を与えた。

 田中は積極的にボールを受けたり、裏へ飛び出したりしてDFラインを押し下げた。これにより、相手のDFラインと中盤の間が広がり、柏の2列目の選手がプレーしやすい状況をつくりだした。34分、澤がPA手前でパスを受けてから強烈な右足シュート。これはGKに弾き出されて、左からのCKを得た。

 すると、そのCKから待望の先制点が生まれた。決めたのはDF渡部博文だ。ニアサイドでMFジョルジ・ワグネルからのボールを頭で合わせた。交代からわずか3分、ネルシーニョ監督の采配が実を結んだ。

 先制後は戦い方が明確になった。しっかりとブロックを形成してG大阪の攻撃を防ぎ、そこからカウンターを狙う。追加点は奪えなかったものの、序盤の嫌な流れを払しょくして試合を折り返した。

 後半も、ポゼッションではG大阪に圧倒的に上回られた。しかし、柏の選手たちはネルシーニョ監督が「我慢しながら落ち着いて戦えていた」と語るとおり、相手の攻撃をしのいでいく。

 縦のパスコースを切り、G大阪の攻撃をスピードアップさせない。時折蹴りこまれるハイボールは、渡部とDF増嶋竜也がことごとく頭で跳ね返した。途中投入されたMF家長昭博、MF佐々木勇人ら突破力のある選手に対しては、複数人で囲い込み、自由にプレーさせなかった。
 
 前線の田中やMFレアンドロ・ドミンゲスも積極的にボールを追い、後ろで組み立てようとするG大阪に余裕を与えない。また、カウンターから抜け出し、DFラインの押し上げを抑制していた。結局、G大阪を5月19日のリーグ戦以来の無得点に抑え込み、4年前に決勝で敗れたリベンジを果たした。

 決定機を与えなかった試合内容にネルシーニョ監督は「勝ちに相応しかった」と胸を張った。09年に降格してから、ネルシーニョ監督はチームが勝つためのプレーをする“ビトーリア(勝利)”というマインドを植え付けてきた。その結果、11年リーグ、そして今回の天皇杯を制した。指揮官は「今のレイソルにはそういうものが根付いている」と成長の手応えを口にした。

 今年のクラブW杯はACLで優勝し、アジア王者として出場する道しかない。2013年はアジアを制して11年以来の世界の舞台へ。柏が最高のスタートを切った。