チームの顔だった中島裕之がオークランド・アスレチックスに移籍し、今季の埼玉西武はその穴をいかに埋められるかがひとつのポイントとなる。そんな中、名実ともに中心選手として一層の活躍を期待されるのがキャプテンの栗山巧だ。昨季は8月に死球を受け、左尺骨を骨折。フルイニング出場が390試合で途絶え、残りのシーズンを棒に振った。勝負どころでチームに貢献できなかった悔しさを胸に秘め、5年ぶりのV奪回へ挑む背番号1を二宮清純がインタビューした。
(写真:14日には大雪の中、中島(右)と自主トレを敢行。後方は主砲の中村)
二宮: 昨季の西武は2位でクライマックスシリーズ(CS)に進出したものの、第1ステージで福岡ソフトバンクに敗れてしまいました。試合に出られず、歯がゆかったでしょう。
栗山: ケガをしてから、日本シリーズに出場すれば何とか間に合わせるつもりでリハビリをしていました。ただ、CSでは僕は試合を見ていることしかできなかったので、消化不良の思いは強かったですね。僕がいたからと言って結果が変わったかどうか分かりませんが、キャプテンとして大事な終盤にチームの力になれなかったのは心残りでした。

二宮: 今季は中島選手が抜けますから、より栗山選手に求められる役割も増えそうです。
栗山: 中島さんは3番をずっと張ってきた選手。穴を完全に埋めるのはかなり大変なことだと思っています。打線も小粒になるのは致し方ないでしょう。試合に出ているメンバーが、これまで以上に打線として攻撃できるか。ここが大事になってくると思います。

二宮: 打率3割をマークしていた選手がいなくなるわけですから、個々の選手がより、つなぎを意識して戦うと?
栗山: そうですね。ひとりで中島選手の穴は埋められませんけど、みんなで一丸となって、その穴を小さくすることはできると思います。そういう意識が前面に出てくれば、チームは良い方向に動き出すのではないかと。

二宮: 渡辺久信監督は栗山選手に3番を任せる構想のようです。
栗山: 3番だからと言って何かを変えるわけではありませんが、打席の中での意識は自ずと変わっていくでしょう。3番を経験することが自分にとっても成長につながればと前向きに捉えています。
(写真:リハビリと並行してフィジカルを徹底的に鍛え、担当する大川達也トレーナーによると「筋力的には過去最高」という)

二宮: 成績を見て意外だったのは、まだオールスターゲームに1度も出場していないこと。打率3割以上を3度、ベストナインにも3度選ばれているのに不思議ですね。
栗山: 恥ずかしながら、オールスターには縁がないんでしょうね(笑)。2、3年前までは「なんで選んでくれんのやろう」と思っていましたけど、最近はこのままずっとベストナインを獲り続けて、35歳くらいになって初出場するのもいいかなと考えるようになっています。それで「え、初めてなの?」と驚かれるのもいいかもしれない。

二宮: 栗山選手はファンの人気も高いですから、ファン投票で選ばれてもおかしくはないはずですが……。
栗山: ひとつ言えることはオールスターまでの成績が悪いんでしょうね。オールスター明けから打ち始める。最初に3割を打って、チームが日本一になった翌年(2009年)も開幕から21打席ノーヒットで、最初はボロボロでしたから(苦笑)。

二宮: オールスターはもちろんですが、いずれは代表入りも十分、狙えるでしょう?
栗山: もちろん選手として目標にはしています。ただ、僕は本当にオールスターとか代表に縁がない。高校時代も2年の夏に甲子園でベスト4に入って、結構打ったんですが、準決勝で負けた東海大浦安に2年生の4番バッターがいて、その選手が代表に入ったんです。その時に「あぁ、縁がないな」と思いましたよ。そしたら、プロに入ってからもホンマに縁がなかった(笑)。

二宮: 今回のWBCもメジャーリーガーが出場しませんし、ケガさえなければチャンスだったのでは?
栗山: いやいや、付け入るスキはないですよ。候補に入っているメンバーを見ても、内川(聖一)さん、糸井(嘉男)さん、長野(久義)の3人はやっぱりすごい。スタメンは、それでほぼ決まりでしょう。代走や守備固めで入るといっても、そこにはスペシャルな人間がいますからね。肩の強さ、足の速さだけで勝負したら僕は及ばない。もし僕が代表に入るとしたら、スタメンを張れる実力をつけないと無理でしょうね。そういう選手に少しでもなれるようにこれからも頑張ります。

<現在発売中の講談社『週刊現代』(2013年1月26日号)では栗山選手の特集記事が掲載されています。こちらも併せてお楽しみください>