プロ野球はセ・リーグ、パ・リーグ、そして独立リーグも開幕してシーズン真っ盛りです。今回は香川オリーブガイナーズ出身の篠原慎平(巨人)を取り上げましょう。先日、育成出身選手として史上初の快挙、初登板初勝利を達成しました。彼とは香川時代に苦楽を共にしたので私も感無量です。

 

 「失う物は何もない」

 最初に篠原のピッチングを見たのは彼がまだ17歳のころ、新居浜球場(愛媛県)で行われたアイランドリーグのトライアウトでした。最速で144キロを記録していて、細身な体でしたが「いいボールを放るピッチャーやな」と感心して見ていました。

 

 08年、愛媛マンダリンパイレーツに入団した篠原とは何度も対戦しましたよ。1年目、2年目はすごく良かったんですが、その後、右肩をケガして手術。リハビリの末に復帰しましたが調子が戻らず、愛媛を自由契約になりました。それでもNPB入りの夢を諦められずにもう一度トライアウトを受けて、ウチ(香川)に入団したんです。

 

 香川に入ってからもリハビリ、フォーム改造と試行錯誤が続きました。本人は本当に苦しんだと思いますよ。でもそれを乗り越えて球速もマックスで153キロまで伸びました。2014年のオフ、育成ドラフト1位で巨人に指名されました。当時の篠原はまだコントロールに課題があったというか、リリースポイントが安定しなかったんですね。パワーピッチャー、私は「ぶん投げ投法」と呼んでますが、細かいコントロールよりもスピードを優先するタイプ。支配下登録されるにはリリースポイントを安定させて、コントロールをつけなければ難しいだろうなと思っていました。

 

 昨シーズン、春先に行われた巨人3軍との試合で篠原と対戦しました。そのときにキレもスピードもいまいちで「こいつ大丈夫かな」と心配になったんですよ。それが夏場以降のイースタンの試合で好投して、あと本人も言ってましたがオフに参加した台湾のウインターリーグで成長のきっかけをつかんだそうです。

 

 香川時代は一緒に食事をしていろいろな話もしたし、毎試合、御両親が郷里・愛媛県の川之江から応援に来ていたのも知っているので私も自分のことのように嬉しいです。

 

 今後は現状に満足することなく、結果を残して長く巨人で活躍してほしいですね。「失う物は何もない」と言っている篠原ですから、きっと又吉(克樹・中日、香川OG出身)や巨人の育成の星・山口(鉄也)投手のようになってくれるでしょう。

 

 スカウトが見るのはスピード

 篠原の活躍は香川だけでなくアイランドリーグ、そしてBCリーグも含めて独立リーグに所属する選手全員の励みになったと思います。篠原は7年間、アイランドリーグに在籍しました。それで育成ドラフトで指名されて支配下登録されて活躍したんですから「よし、俺たちも」と気合いが入るのは当然です。

 

 今季のアイランドリーグにもいい選手がいますよ。ただ今のところ即、NPBに指名されそうな逸材は見当たりませんね。プロのスカウトが最初に見るのは投手では球速なんですよ。コンスタントに144~145キロを出せないとスカウトの目に止まりません。

 

 ウチの新人投手、箱島(章矢)もいい素材ですが、ドラフト候補としてはまだまだですね。やはり体力をつけてスピードを向上させるのはもちろん、ピッチャーは肩のスタミナや回復力もつけなければなりません。トレーニングなどを創意工夫しながら成長してもらいたいですね。

 

 アイランドリーグの選手は伸びしろがある分、指導していても本当に楽しいんですよ。「この選手はどれだけ伸びるんだろう」「こいつはこんなに成長したのか」。こう実感できるのはアイランドリーグならではですね。

 

 香川は現在、最下位ですがこれから巻き返しますよ。今季はオープン戦が5試合と少なかったので試合勘がないままシーズンに突入しました。その分、接戦を落としたりしたんですね。試合をこなしていく中で、ここ数試合は段々と選手の調子も上がっています。高知ファイティングドッグスがひとつ抜けている状況ですが、うちも決して力負けはしていません。香川のファンの人に喜んでもらえる試合を1試合でも多くできるように頑張ります。引き続き応援よろしくお願いします。

 

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