日本ラグビー協会は21日、女子代表のオフィシャルスポンサーに大正製薬と太陽生命保険の2社が決定したことを発表した。女子代表がスポンサー契約を結ぶのは初めてで、7人制、15人制両方が対象となる。7人制ラグビーは2016年のリオデジャネイロ五輪より男女ともに正式競技に採用されており、3年後へ大きなサポートが得られる形となった。都内で会見に臨んだ7人制代表の中村知春キャプテン(PHOENIX)は「2つの企業のロゴが入ったユニホームで戦えるのは光栄で心強い。大きな大会で、このユニホームをより表彰台の高い位置でアピールできるよう選手一同、頑張りたい」と決意を新たにしていた。
(写真:1月末より米国遠征を行う7人制代表14名も新しいユニホーム姿で勢揃いした)
 この日の会見に詰めかけた報道関係者は100名以上。7人制代表の浅見敬子ヘッドコーチ(HC)が「私も現役時代は日本代表でプレーしてきたが、考えられなかったこと」と驚くほどの注目度の高さだ。

 何といっても7人制が五輪競技となり、女子ラグビーには追い風が吹いている。また昨年のロンドン五輪ではサッカーの“なでしこジャパン”をはじめ、卓球、バレーボール、アーチェリー、競泳の4×100メートルメドレーリレーなど、女子の団体競技、チーム種目がメダルを相次いで獲得した。これまで以上に女子のスポーツにスポットライトが当たっている点も、楕円のボールを追う彼女たちへの後押しとなっているのは間違いない。

 そんな女子ラグビーにとって今年は重要な1年になる。まず6月は7人制のW杯がモスクワで開かれる。日本は初開催となった前回大会(2009年、ドバイ)で4戦全敗に終わった。この4年間で世界との差がどれだけ縮まったかを測る大事な試金石となる。W杯に向けた強化のため、28日にはワールドシリーズ(2月1日〜、ヒューストン)に参加するため米国へ渡る予定だ。一方、15人制では14年に開かれるW杯フランス大会に向けたアジア地区予選が年内に予定されている。日本は前回、前々回と出場を逃しており、3大会ぶりの本戦行きを狙っている。

 女子ラグビーの世界ではオーストラリア、カナダ、イングランド、オランダ、ニュージーランド、米国の6カ国・地域が強く、“トップ6”と呼ばれている。当面の目標は“トップ6”入りだ。昨年より就任した浅見HCは1年間、世界と台頭に戦うべくフィジカル強化に重点を置いてきた。海外の選手に体格で劣る部分を補う上で、「走ることを徹底し、気持ちも体もタフであることを求めてきた」と明かす。昨年の8月には「アジア・パシフィック女子セブンズ」で09年W杯覇者のオーストラリア代表を撃破。相手は若手主体のチームだったとはいえ、手応えをつかんだ。今回の米国遠征では、「12月からアタックの部分にも力を入れて練習している。守りだけでなく攻撃でもベースができる大会にしたい」とテーマを掲げて臨む。

 もちろん彼女たちが目指す頂は五輪での金メダルだ。高校時代から代表入りし、ジャパンを牽引する鈴木彩香(立正大学大学院)は「アジアのナンバーワンではなく、世界のトップを意識して練習している。これからは意識だけでなくパフォーマンスも高めていきたい」とさらなる高みを見据える。鈴木とともに高校時代から桜のジャージをまとってきた山口真理恵(Rugirl-7)は本場のラグビーを体得するため、09年よりオーストラリアに留学。昨年も約3カ月間、ニュージーランドに渡り、自身のレベルアップに務めてきた。「(日本での)女子の環境は考えられないくらい良くなっている。うれしいとともにプレッシャーに負けないよう頑張りたい」と国際舞台での活躍を誓った。

 そんな女子代表を盛り上げるべく、協会は愛称を公募することを決めた。2月いっぱい協会の公式サイトで募集し、5月に発表予定だ。近年、女子の代表チームにはサッカーの“なでしこジャパン”、バレーボールの“火の鳥NIPPON”、ホッケーの“さくらジャパン”、シンクロナイズドスイミングの“マーメイドジャパン”など、さまざまなニックネームがつけられている。ラグビーもそれらにあやかって、認知度アップをはかる。

 ちなみに選手たちの間で候補に挙がっているのは、中村キャプテンによると、“パイナップルジャパン”とか。パイナップルの花言葉が「完全無欠」であるところから出てきたネーミングらしい。浅見HCは「選手たちはひたむきにトレーニングを重ね、努力をしている。そんな彼女たちにピッタリの愛称がつけば」と、新しい名称がつくのを楽しみにしている様子だった。

「女子ラグビーは男子と変わらず、激しい。一方で女子らしい緻密さもある。最後まであきらめない姿勢を、たくさんの方に観ていただいて愛される存在になりたい」
 鈴木は目を輝かせながら、女子ラグビーの魅力を語った。会見での熱気を国内に広げられるかどうかは、まずは彼女たちの世界での戦いぶりにかかっている。会見を終えた選手たちは、早速トレーニングウェアに着替え、足早に米国遠征の直前合宿に向かった。