25日、プロ野球独立リーグ・BCリーグは都内で会見を開き、「ルートインカップ日米独立リーグ対抗戦」の開催を発表した。会見にはジャパン・ベースボール・マーケティング村山哲二代表取締役、米独立リーグのひとつ、パシフィックアソシエーションのロバート・ヤング代表、石川ミリオンスターズ森慎二監督、信濃グランセローズ岡本哲司監督、そして今回の対抗戦のアンバサダー役として今シーズンより石川でプレーする木田優夫が出席し、開催の意義や今後の構想について語った。
(写真:さらなる発展を求めて、グローバル化をすすめるBCリーグ)
 限界から感じた独自戦略の必要性

 2007年にスタートし、今年7シーズン目を迎えるBCリーグは、徐々に国際色を強めつつある。これまで10カ国の選手がBCリーグに所属しており、オフには日本人選手を海外の独立リーグに派遣している球団もある。また、昨年11月には外国人選手を対象としたトライアウトを、米国・サンディエゴで行なった。こうした国際化への道を歩み始めた理由を、村山哲二代表は次のように語った。

(写真:「子どもたちに楽しい野球を見せたい」と意気込む村山代表)
「BCリーグは1年目は4球団、2年目からは6球団でやってきた。さまざまな人たちの支えがあり、1球団も欠けることなくここまでやれてきたことには非常に感謝している。だが、経営は決して楽ではない。NPBと同じ手法ではファン獲得に限界があり、独立リーグらしい戦略を練らなければいけないということを痛感してきた。そこで数年前から国際化を進めてきたが、その中で世界の多くの若者が野球をやる環境を求めていることがわかった。そうした現状を踏まえ、もっと多くの選手を受け入れる環境をつくりたいと考えている。世界中の若者たちがBCリーグに集い、戦い、そしてMLBやNPBに行ったり、母国のリーグに帰っていく。そういう道をつくっていく挑戦こそが、BCリーグの価値につながると信じ、我々が目指す国際化のスタートとして、今回の対抗戦を行なうことにした」

 今後はさらに多くの国のリーグやチームとコミュニケーションをとり、野球を通じた「地域の国際交流」を図っていく。ひいては、それがリーグ理念である「地域と地域の子どもたちのために」となると村山代表は期待している。

 今回、対戦する2チームのうちのひとつ、イカイカマウイは11年に吉田えり投手が所属したことでも知られている。ヤングオーナーは、その吉田のエージェントを介して石川ミリオンスターズの端保聡代表取締役と知り合い、そこで交流戦の話が浮上した。実際、昨年7月に石川がハワイに赴き、9月にはイカイカマウイが石川を訪れ、それぞれ2試合ずつ計4試合の交流戦が行なわれた。さらに昨年11月には、BCリーグとパシフィックアソシエーションによる合同トライアウトを米国・サンディエゴで行なうなど、交流戦をきっかけに両リーグは手を取り合ってきた。

 その中で、将来の構想についても話し合いが行なわれ、ビジョンを共有しているようだ。「将来は独立リーグのワールドリーグを夢見ている。今回の対抗戦はその第一歩だ」とヤングオーナー。村山代表も「現在は四国アイランドリーグPlusを入れても10球団でのチャンピオンでしかない。パシフィックアソシエーションや、今後はさらに他の米独立リーグ、南米、韓国や台湾にも広げ、真の独立リーグチャンピオンを決めたい」と述べ、独立リーグならではのオリジナリティを強めることが、互いにとって生き残る術になるとにらんでいる。
(写真:「若い選手が夢見てプレーしている姿を見ることが好き」というヤングオーナー)

 未来を切り拓くチャンスに

 今回の対抗戦では、米国ラウンドと日本ラウンドに分かれている。7月30日〜8月5日の日本ラウンドは、全6球団がそれぞれイカイカマウイ、ハワイスターズとそれぞれ1試合ずつ行なう。一方、5月28日〜6月2日に行なわれる米国ラウンドでは、石川と信濃がハワイに赴き、2チームと3試合ずつ計6試合行なう予定だ。その両球団の指揮官も今回の会見に出席し、それぞれの思いを語った。

 昨年も交流戦を行なった石川の森監督は、その時の様子を次のように語った。
「チームにとって価値ある経験を与えてもらった。単純に外国人だらけのチームと海外で対戦するということだけでも、選手にはいい経験になったと思う。最初は恐怖感もあったと思うし、実際にやっても並外れたパワーに驚きもあっただろう。それでも『十分に通用するな』と自信をつけることもあったはず。外国人だからというだけで特に怖がる必要はない、ということがわかっただけでも、今後野球だけでなくさまざまなところで活かされてくると思う」

 また、森監督にとって最も印象的だったのは、ハワイで試合を行なった時のファンの笑顔だ。「選手と一緒になって盛り上がっていて、本当に野球観戦を楽しんでいると感じた」という。アナウンサーのマイクパフォーマンスなど、いろいろと趣向を凝らしている様子がうかがえ、BCリーグが学ぶべき点は少なくないようだ。

 今シーズンより信濃の指揮官となった岡本監督は「我々は親密な関係を築き、リーグの発展、チームや選手のスキルアップに努めたい。ひいては、野球を通じて日米の懸け橋となれればと思っている」と対抗戦の意味合いについて述べた。また、日本ラウンドが公式戦として行なわれることについては「勝敗を争うことによって、選手やチームは成長する。なかなか情報収集はできないので、目の前の壁に思い切ってぶつかっていく気持ちでやりたい」と意気込みを語った。

 会見の後半には、今シーズンから石川でプレーする木田優夫が派手な衣装を身に付けて登場し、会場を盛り上げた。今回の対抗戦におけるアンバサダー役を務める木田は、「若い選手たちにチャンスが広がることは嬉しいこと。今回の対抗戦でのプレーが日米のスカウトの目に留まるかもしれず、非常に意義深いことだと思う」と語った。そして、「みんなは笑うけど」と前置きをしながら、「僕にとっても可能性はゼロではない。次につながるようにしていきたい」と抱負を述べた。
(写真:会場の空気を一変させた木田。「成績よりも今後につながる活躍をしたい」と意気込む)

 今回の対抗戦は、単なる交流戦ではない。7月30日から8月5日にかけて行なわれる日本ラウンドでの試合は公式戦であり、チームや個人の成績にかかわってくる。真剣勝負となるだけに、どんな白熱した展開が見られるのか。この対抗戦が「ワールドチャンピオンシップ」の第一歩となる。

 日程は以下の通り。

〜ルートインカップ日米独立リーグ対抗戦〜
【日本ラウンド】
7月30日(火) 群馬×ハワイスターズ、福井×イカイカマウイ
  31日(水) 新潟×ハワイスターズ、富山×イカイカマウイ
8月1日(木) 信濃×ハワイスターズ、石川×イカイカマウイ
  3日(土) 信濃×イカイカマウイ、福井×ハワイスターズ
  4日(日) 群馬×イカイカマウイ、富山×ハワイスターズ
  5日(月) 新潟×イカイカマウイ、石川×ハワイスターズ

【米国ラウンド】
5月28日(火)〜30日(木)   イカイカマウイ×石川、ハワイスターズ×信濃
5月31日(金)〜6月2日(日) イカイカマウイ×信濃、ハワイスターズ×石川

(斎藤寿子)