3月のWBCで3連覇を目指す日本代表28名が20日、発表された。宮崎での代表候補合宿に参加した33選手のうち、投手では浅尾拓也、山井大介(ともに中日)、野手では村田修一(巨人)、大島洋平(中日)、聖沢諒(東北楽天)が代表から外れた。杉内俊哉(巨人)は唯一、3大会連続の代表入り。国内組のみの構成となったため、最年少(21歳)の今村猛(広島)、角中勝也(千葉ロッテ)ら初代表が19名を占める。山本浩二監督は「攻撃も守りも大事。いろんなことを想定して議論した結果」と選考理由を語った。
「今日の今日まで悩みました」
 28人の侍を選び終えた指揮官は、苦しい胸のうちを明かした。ただ、悩んだ理由は、どの選手も万全のアピールをしたからではない。故障者の続出に頭を痛めたからだ。

 最大の誤算は守護神候補だった浅尾の右肩痛だ。中日でのキャンプ中に右肩の張りを訴え、宮崎合宿中のブルペン投球でも本来のボールには程遠かった。この日、実施された紅白戦では1イニングを任される予定だったが、東尾修、与田剛投手コーチが「先のことを考えて投げさせない方がいいのでは」と山本監督に進言。登板回避が決まり、無念の落選となった。

 同じく外野手の大島も左ヒジを痛めたことが選考に響いた。昨季は打率3割をマークし、セ・リーグの盗塁王、ベストナイン、ゴールデングラブ賞を獲得。「投手力を含めた守り、足」を重視する侍ジャパンにはマッチした選手だった。故障がなければ代表入りしていた可能性が高い。

 また内野手の村田はキャンプ中に右手中指の爪を痛めた上に、守備が三塁に限定されることから、「戦略的なことを考えて」(山本監督)メンバーから漏れた。足が武器の聖澤は打力の面で他の選手に劣り、落選。山井は強化試合でWBC公式球への対応へ不安をのぞかせ、この日の紅白戦でも1回を投げて1失点と結果を残せなかった。

 一方で右肩に不安を抱えている前田健太(広島)はメンバーに選ばれた。宮崎合宿ではただひとり、ブルペンに入らず、17日の強化試合は広島側で先発したものの、球速は140キロに満たなかった。しかし、田中将大(東北楽天)と並ぶ若きエースを外せば、侍ジャパンにとっては大きな戦力ダウンだ。山本監督は「マエケンは状態が上がってきている」と復調を信じ、代表に入れる決断を下した。

 最後のアピールが実り、代表を勝ち取ったのは大隣憲司(福岡ソフトバンク)だろう。左腕は先発、中継ぎとも揃っていることから、当落線上とみられていたが、この日の紅白戦は2回をパーフェクトに抑えた。変化球をうまく交えるなど、公式球への適応も問題ない点も決め手となった。当初は落選の可能性がささやかれていた沢村拓一(巨人)も、ブルペンで調子の良さをみせ、評価が急上昇。紅白戦でも先発を任され、2回1安打無失点と堂々のピッチングだった。

 正式にメンバーが決まった侍ジャパンは21日まで宮崎で練習し、23日からは京セラドーム大阪でのオーストリア代表との壮行試合に臨む。しかし、過去2大会を見てもケガや故障などで大会中にメンバーの入れ替えは行われている。山本監督は外れた5人に対しても「何か事故があれば、すぐに参加してもらえるように」と告げ、代表の一員であることを強調した。

 本番まではあと10日。対戦相手の分析はもちろん、いかに選手たちのコンディションを整え、最悪の事態を防ぐか。リスクマネジメントが山本監督はじめとする首脳陣にとって、3連覇への最低条件となる。

 日本代表28名は以下の通り(数字は背番号)。

<投手>
11涌井秀章(埼玉西武)、14能見篤史(阪神)、15沢村拓一(巨人)、16今村猛(広島)、17田中将大(東北楽天)、18杉内俊哉(巨人)、20前田健太(広島)、21森福允彦(福岡ソフトバンク)、26内海哲也(巨人)、28大隣憲司(福岡ソフトバンク)、35牧田和久(埼玉西武)、47山口鉄也(巨人)、50攝津正(福岡ソフトバンク)

<捕手>
2相川亮二(東京ヤクルト)、10阿部慎之助(巨人)、27炭谷銀仁朗(埼玉西武)

<内野手>
1鳥谷敬(阪神)、3井端弘和(中日)、5松田宣浩(福岡ソフトバンク)、6坂本勇人(巨人)、7松井稼頭央(東北楽天)、41稲葉篤紀(北海道日本ハム)、46本多雄一(福岡ソフトバンク)

<外野手>
9糸井嘉男(オリックス)、13中田翔(北海道日本ハム)、24内川聖一(福岡ソフトバンク)、34長野久義(巨人)、61角中勝也(千葉ロッテ)