3月のWBCに臨む日本代表の壮行試合が23日、京セラドーム大阪で行われ、オーストラリア代表と対戦した。20日の代表発表後、初の実戦となった日本は、初回に先発・田中将大が2点を失う展開。攻撃も7回までわずか1安打無得点に抑えられ、苦戦を強いられた。しかし8回、途中出場の相川亮二が起死回生の逆転3ラン。本番に向けた代表チームが結成されて初白星をあげた。24日もオーストラリア代表と壮行試合を実施する。

 杉内、能見の両左腕の好投光る(京セラドーム)
オーストラリア代表 2 = 200000000
日本代表       3 = 00000003×
(オ) オクスプリング−ルジック−ブライト−T.ケネリー−ラッセル−●ケント−ウィリアムズ
(日) 田中−杉内−○能見−S牧田
本塁打 (日)相川3ラン
 重苦しい空気を振り払う一発だった。
 2点ビハインドの8回、この試合、初めての連打で1死一、二塁。相川は「なんとかつなごう」の一心で打席に入った。

 しかし左腕のスティーブン・ケントの制球が定まらず、カウントは3−1。「真っすぐ一本。ヘンなバッティングだけはしないように意識していた」と語る36歳は、甘く入ったストレートをしっかりと振りぬいた。打球は放物線を描いてレフトスタンドへ。その瞬間、沈みがちだったベンチは全員が立ち上がり、ひとつになった。

 わずか3安打で0−7と完敗を喫した広島戦から6日、2次ラウンドで対戦する可能性もある相手に、7回までは沈滞ムードが漂っていた。広島戦と同じ打順で臨んだものの、先発の元阪神クリス・オフスプリングから次々と代わるオーストラリア投手陣に、なかなか快音が聞かれない。

 4回までに出したランナーは相手のエラーによる2人のみ。5回には9番・松田宣浩がヒットで出塁し、1死一、二塁のチャンスをつくるも、3番・坂本勇人、4番・阿部慎之助が倒れた。

 ここまで結果が出ないと、各打者からは明らかに焦りの色が見える。7回には先頭の松田が四球を選ぶも、1番の長野久義がボール球に手を出してサードゴロ。相手投手は続く鳥谷敬は四球を与え、ストライクをとるのに汲々としていた。ところが、坂本はタイミングが合わないまま、慌てて初球に手を出し、力のないセカンドゴロに終わる。打線がまったく機能せず、広島戦から続いたゼロ行進は止まりそうになかった。

 そんな中、口火を切ったのは野手最年少の中田翔だ。8回、広島戦では音なしだった若き主砲がレフト前ヒットで出塁すると、37歳の井端弘和がセオリー通りの右打ちで一、二塁間を破る。「初球で狙い通りのバッティングをしてくれた」と山本浩二監督も評価した一打で、相川の一撃を呼び込んだ。

 広島戦と違い、日本投手陣は要所を締めた。2番手の杉内俊哉が2回を1安打、3番手の能見篤史が3イニングを投げて6奪三振を奪い、オーストラリア打線に追加点を許さない。走者を背負う場面もあったが、能見が「ピンチでの投球も試したかった」と明かしたように、それは計算の範囲内だ。
「腕をしっかり振れば、バッターも振ってくれる。僕の中では収穫があった」
 そう手応えを口にした虎のエースが、本番では勝負どころでマウンドに立ちそうだ。
 
 逆転した直後の最終回には、抑え候補の牧田和久が登板。アンダースローからホップするボールで3者連続の空振り三振に仕留め、完璧な締めくくりをみせた。山本監督は「外国の打者にはタイミングが合いにくい。有力なクローザーになる」と高く評価しており、守護神に大きく前進した。 

 一方、不安が残ったのは初戦(3月2日)のブラジル戦で先発予定の田中将大だ。米国仕様に硬くしたマウンドに苦しみ、立ち上がりからボールが上ずった。初回、2番ミッチェル・デニングにフルカウントから四球を与えると、3番のルーク・ヒューズにセンター前へはじき返される。4番ステファン・ウェルチも歩かせ、1死満塁。続く元広島のジャスティン・ヒューバーにはスライダーが抜けて左ひじにぶつけ、押し出しの死球になってしまった。その後も1点が入り、いきなり2点を失った。

 2回はレフト・内川聖一の好返球で失点こそ防いだものの、2安打を浴びる不安定な内容。3回にはスライダーを連投し、感覚をチェックしながら2三振を奪って、ようやく復調の兆しをみせた。「2、3回と進むにつれて、自分なりに手応えを感じた」と本人は前を向くが、広島戦に続く初回の失点は気になる。

 また打者では上位の長野、坂本、阿部らが本来の打撃ではない。指揮官は「前回も無得点で気負いがあった。これでラクになってくれれば」と復調を祈るが、次戦は打順変更を行う考えを示した。

「勝つに越したことはない。その意味では大きな勝利。明日から乗ってくる」
 開幕までは、ちょうどあと1週間。山本監督も、1勝にまずはホッとした様子だ。

 対戦相手のオーストラリアもジョン・ディーブル監督が「日本はマークしてきた」と明かしたように、本番では侍ジャパン包囲網が敷かれているのは間違いない。それを打ち破るためにも、24日はスッキリと勝って弾みをつけたいところだ。

(石田洋之)