WBCに臨む日本代表の強化試合が28日、福岡ヤフオク!ドームで行われ、巨人と対戦した。日本は主将で4番だった阿部慎之助が右ヒザに違和感を訴えて欠場。4番に糸井嘉男を入れる新オーダーで試合に臨んだ。不安視された打線は、不調だった1番・坂本勇人が4安打を放つなどつながり、6点をあげる。投手陣はソロホームランによる1失点に抑え、本番前最後の実戦を白星で締めくくった。

 代役マスクの相川も2安打(ヤフオクドーム)
日本代表      6 = 001012020
巨人         1 = 100000000
(日) ○大隣−森福−沢村−山口−牧田
(巨) 高木京−●福田−笠原−今村−西村−アコスタ
本塁打 (巨)矢野ソロ
 4番、キャッチャー、主将の不在が、むしろカンフル剤となったのではないか。3安打無得点に終わった阪神戦から打順を組み替え、2試合ぶりの2ケタ安打。「打線がつながったのは大きい」と山本浩二監督も一安心だ。阿部の状態は気がかりだが、チームとしては悪くないかたちで本番に突入する。

 阿部の欠場に伴い、オーダーは大きく変わった。キャッチャーには相川が座り、8番。4番には糸井が昇格し、2番には好調の角中勝也が入った。

 打線が機能したのはトップバッター坂本に当たりが戻ったことが大きい。ここまで対外試合では11打数1安打だった右バッターは初回、初球を叩いてセンター前へ。「結果がほしいと思っていた」と明かす切り込み隊長が波に乗る。

 5回の第3打席では一塁に松田宣浩を置いて、カウント1−1からベンチがエンドランを仕掛けた。坂本はアウトローへ落ちるボールにくらいつき、センターへ運んだ。チャンスを拡大した日本は続く角中勝也のゲッツー崩れの間に1点を勝ち越す。

 さらに6回は2死満塁の場面で打席へ。逆球で内に入ったボールを逃さず叩き、三塁線を破る。リードを広げる2点タイムリーとなった。8回も1死一、二塁から、ボールに逆らわずライト前へ運び、5打数4安打の大当たり。これまでの試合では長野久義、坂本と1番に起用した打者が機能してなかっただけに明るい材料ができた。

 また3番の内川聖一も3回に同点のタイムリー、8回にダメ押しの一塁強襲ヒットを放つなど3安打3打点と活躍した。前回大会を経験しており、本番でも3番は確定とみていいだろう。

 そして阿部の代わりにマスクを被った相川亮二も2安打と、23日のオーストラリア戦で逆転3ランを放った打撃は好調が続いている。もし最悪、阿部が初戦に出られなくても、その穴は補える。26日の阪神戦を腰の張りで欠場した松井稼頭央も代打でヒットをマークし、心配はない。対外試合で9打数無安打の稲葉篤紀、18打数1安打の長野久義、16打数2安打の鳥谷敬など快音の聞かれない選手もいるが、本番となれば、また変わってくるはずだ。

 投手陣は総じて順調な仕上がりで大会を迎える。先発の大隣憲司は先頭打者の矢野謙次に一発を浴びたものの、徐々に調子を上げて4回を1失点でまとめた。森福允彦、山口鉄也、牧田和久のリリーフ陣も危なげない内容だった。

 これで今回の代表チームが集結してからの実戦は3勝2敗(紅白戦除く)で終了した。大会前の成績としては決して満足なものではないが、ブラジル戦は、もう2日後だ。後ろを振り返る時間はない。「1戦1戦戦っていきたい」と語る指揮官に導かれ、28名の侍たちが、目の前の敵を斬り倒す。

(石田洋之)