第3回WBCが2日、いよいよ開幕する。1次ラウンドは4カ国・地域による総当たりのリーグ戦となり、上位2チームが2次ラウンドに進出する。日本はキューバ、中国、ブラジルと同組だ。順当に行けば日本、キューバの2カ国の勝ち抜けが予想されるグループだが、一発勝負だけに気は抜けない。3連覇を目指す日本にとって最初の関門となる対戦国の戦力を分析する。
 3月2日(土)19時〜
ブラジル(初出場、過去のWBCでの対戦=なし)

 昨年11月の予選でメジャーリーガーを擁するパナマを破る金星をあげ、初出場を決めた。かつて日本から多数の移民が渡った国だけに、チームの中核を占めるのは日系人や、日本に縁のある選手だ。
 
 キャプテンを務める内野手の松元ユウイチ、投手のラファエル・フェルナンデス、金伏ウーゴは東京ヤクルトの選手。また外野手の曲尾マイケ、DHの佐藤二朗(ツギオ)も元ヤクルトだ。日本の社会人でプレーする選手も、佐藤を含め7人いる。

 決して強力打線ではないが、日本流の守り勝つ野球で予選でも接戦を制してきた。本戦でも1点を争う展開に持ち込み、勝機を見出そうとしており、決して侮れない。

 今回、侍ジャパンの前に先発で立ちふさがるのが、ヤクルトのフェルナンデスだ。日本での実績はまだ1勝だが、本戦出場決定戦となった予選のパナマ戦では6回2安打無失点と好投した。150キロを超える速球に、カットボール、そして昨年から取り組んできたチェンジアップがひとつの武器になっている。これらをコントロールよく投げられれば厄介だろう。

 ただし、弱点は制球力だ。昨季も日本の1軍では12イニング3分の2を投げて10四死球。日本としては焦ってボール球に手を出さなければ、ある程度、四球で走者が見込めるはずだ。そして、ブラジルにとってのアキレス腱はキャッチャーにある。強化試合ではオリックス相手に5盗塁を許しており、機動力で揺さぶれば得点機は増えるに違いない。

 1次ラウンドは球数制限が65球で継投勝負になる。選手層が厚くないだけに、たとえヒットが打てなくても球数を放らせて、ピッチャーを数多く引きずり出せば、攻略が容易な選手が登板するだろう。ただし、マリナーズ傘下のチアゴ・ビエイラはMAX156キロの豪速球右腕。抑え役を任される予定で要注意の存在だ。

 日本の先発は田中将大に決まった。ただでさえプレッシャーのかかる初戦だけに、いきなりビハインドを背負う展開は避けたい。実戦では2試合連続で初回に失点しており、立ち上がりをいかに乗り切るかがポイントだ。


 3月3日(日)19時〜
中国(3大会連続3回目、過去のWBCでの対戦=2勝0敗)

 過去2大会は1次ラウンドで敗退しているが、前回は台湾を破るなど実力は年々、上がってきている。だが、国内ではスポンサーの撤退により、昨年はリーグ戦が行われず、その成長が頭打ちになっている感は否めない。

 加えて投手ではメジャーリーグで通算71勝をあげているロイヤルズのブルース・チェンが出場を辞退。来日後の強化試合ではオリックスと巨人相手に、いずれも8失点と苦しい台所事情が露呈した。

 強化試合ではドーム球場に慣れない野手がフライを落球するなど守備力も高くない。マリナーズで指揮経験のあるジョン・マクラーレン監督は接戦になれば、技巧派の呂建剛、速球派の朱大衛をつぎこむ作戦のようで、日本としてはそれまでに点差をつけて安全圏に入りたいところだ。

 攻撃陣は若手主体でパワーの面では劣る。ベテランの王偉は第1回大会で上原浩治からホームランを放っており、警戒が必要だ。4番にはレッズ傘下で米国からやってきた唯一の選手、レイ・チャンが座る。

 日本の先発は前田健太を予定している。右肩の不安から状態は100%ではないが、それでも中国打線が連打するのは考えにくい。前回登板のオーストラリア戦のように、四球で走者をためて一発をくらう展開さえ避ければ苦戦するような相手ではないだろう。


 3月6日(水)19時〜
キューバ(3大会連続3回目、過去のWBCでの対戦=3勝0敗)

 1次ラウンドでは最大のライバルだ。過去のWBCでは第1回の決勝、第2回の2次ラウンドで激突し、3戦負けなし。昨年11月の侍ジャパンマッチでも連勝を収めたとはいえ、強敵であることに変わりはない。

 しかもキューバは昨年の日本戦連敗を踏まえて、メンバーを大幅に入れ替えてきた。情報の少ない選手もおり、不気味だ。“赤い稲妻”と呼ばれる強力打線は今なお健在で、11月の日本戦でもソロを放ったユリエスキ・グリエルを筆頭に、国内リーグで2年連続の首位打者に輝いたホセ・アブレウ、36本塁打のアレフレド・デスパイネらと怖いバッターが並ぶ。またスイッチヒッターのフレデリク・セペダが好調で4番を務める。

 ただ、打線は水ものだ。来日前の練習試合では台湾相手に20得点を奪ったかと思えば、オランダには零封負けを喫した。となるとカギを握るのは投手力だが、こちらは日本と比べれば不安定か。20得点をあげた台湾戦では11失点。1日の福岡ソフトバンクとの強化試合でも8失点と波がある。

 エースは前回も出場したイスメル・ヒメネス。国内リーグでは2年連続最多勝をマークし、変化球を巧みに操る。ウラジミール・ガルシアは160キロの速球で打者を牛耳り、先発、抑えの両方を任せられる。ダリエン・ヌニェスは左腕ながら横手から150キロ台のストレートを投げ込み、左バッターは極めて打ちにくい。 

 日本の先発は内海哲也の見込みだ。当然のことながら、まともに勝負すればキューバ打線の餌食になる。11月の試合ではインコースに速い球をみせた上でのアウトコースへの変化球が効果的だった。今回もうまく緩急を使い、翻弄したい。

 番狂わせが起きなければ、この試合までに両チームの2次ラウンド進出は決まっているはず。したがって1次ラウンドの順位を決める一戦になる可能性が高い。2日後の8日からは2次ラウンドが始まるため、勝敗よりも、そこでの戦いを見据えながら試合を進めることになるだろう。お互いが本気でしのぎを削るのは2次ラウンドになるかもしれない。

【WBC特別ルール】

・DH制を採用する。
・延長12回を終えて決着がつかない場合、13回以降は無死一、二塁からタイブレーク制を実施。打順は延長12回終了時点から引き継ぎ、先頭打者の直前の2人が一、二塁走者となる。
・7回以降に10点差、5回以降に15点差がついた場合にはコールドゲームとする。
・投手は1試合につき1次ラウンドでは65球、2次ラウンドでは80球、準決勝と決勝では95球を超えて投げることはできない。ただし、打席中に制限に達した場合は、その打席完了まで投球できる。
・投手は50球以上投げた場合、次の登板まで中4日を空けなければならない。30球以上、または2試合連続で投げた場合、次の登板まで中1日を空けなければならない。
・予告先発制度を採用する。
・フェンス際や両翼のポール付近など、審判がジャッジすることが困難な本塁打に限り、ビデオ判定を行う。
・1次ラウンドで同率チームが出た場合、以下の優先順位で上位を決定する。
(1)直接対決で勝ったチーム
(2)同率チーム同士の対戦TQB(Team Quality Balance)が大きいチーム
 TQB=(1攻撃イニングあたりの得点)−(1守備イニングあたりの失点)
(3)(2)が等しいチーム同士の対戦ER-TQBが大きいチーム
 ER-TQB=(1攻撃イニングあたりの相手自責点)−(1守備イニングあたりの自責点)
(4)(3)が等しいチーム同士の対戦チーム打率が高いチーム
(5)コイントスで勝ったチーム