第3回WBCは6日、1次ラウンドで日本代表がキューバ代表に3−6で敗れ、2勝1敗でA組2位通過となった。日本は中盤まで毎回走者を出しながら、あと1本が出ず、ホームが遠い。逆に3回にヤスマニー・トマスのソロで先制を許すと、その後も小刻みに失点を重ね、最終回の反撃も及ばなかった。日本は8日から東京ドームで始まる2次ラウンドで、台湾代表と対戦する。

◇A組
 不調の坂本、5番起用も4タコ(ヤフオクドーム)
日本代表      3 = 000000003
キューバ代表   6 = 00110103×
(日)●大隣−田中−沢村−森福−今村
(キ)○ペレス−ゲバラ−カスティーヨ−N・ゴンサレス−イグレシアス
本塁打 (キ)トマス1号ソロ、A・デスパイネ1号3ラン
 お互いに1次ラウンド突破が決まっている、いわば“消化試合”である。勝敗はさほど大きな問題ではない。ただ、単なる1敗以上に、侍ジャパンにとっては2次ラウンドへ不安を抱かせる試合だった。

 まず、試合前からアクシデントが起こった。ブラジル戦、中国戦と3番を任されていた内川聖一が腰の張りを訴え、大事をとって欠場した。ここまでチームトップタイの打率.429を記録していたヒットメーカーの不在により、日本は3番にDHで井端弘和を起用する苦しいオーダーとなった。 

 最初のチャンスをつかんだのは日本だ。2回、糸井嘉男、中田翔の日本ハム勢がベテラン左腕のウィルベル・ペレスから連打で一、二塁と得点機をつくる。だが、今大会無安打の稲葉篤紀がレフトフライ、打撃好調の9番・松田宣浩も空振り三振に倒れ、先制点を奪えない。3回も先頭の長野久義が四球を選んだが、続く松井稼頭央が送りバントを失敗して走者を進められなかった。

 こうなると得てして流れを手放してしまうものだ。その裏、1、2回とパーフェクトピッチングを続けてきた先発・大隣憲司が痛恨の一発を浴びる。先頭のトマスにスライダーを左中間スタンドへ運ばれた。1−0とキューバが先制する。

 日本には何度も点が取れる機会があった。4回には2死から稲葉の今大会初ヒットが飛び出して一、二塁とチャンスを広げるも、松田が2打席連続の空振り三振。6回には再び日本ハム勢の糸井と中田が出塁したが、前の打席でようやく快音が聞かれた稲葉がピッチャーゴロで最悪のゲッツーに倒れた。

 あと1本が出ないことに加え、打線が機能不全に陥っている大きな原因が、長野、坂本勇人の巨人勢の不振だ。この日は長野を1番、坂本を5番に入れるオーダーで臨んだものの、長野は最初の4打席は四球ひとつでノーヒット、坂本は4タコに終わった。3試合を終えての坂本の成績は12打数1安打。単にヒットが生まれないだけでなく、タイミングの合っていない三振や凡打が目立ち、内容が悪い。

 山本浩二監督は、阿部慎之助、長野、坂本をセンターラインに据えてチームを編成してきた。結果が出ずとも起用し続けているのは復調のきっかけをつかんでほしいとの思いがあるのだろう。ただ、いよいよ決戦となる2次ラウンドでは決断を迫られる場面が出てくるかもしれない。

 そして、ピッチャーでも2番手で登板した田中将大が、再び失点した。初戦のブラジル戦では先発ながら初回に1点を失い、2回23球でマウンドを降りた。それから中3日、本調子を取り戻してもらおうとの起用だったが裏目に出た。先頭のホセ・フェルナンデスにいきなりセンター前へはじき返されると、フレデリク・セペダには初球を右中間へ運ばれる。一塁走者が生還し、わずか5球での失点。何より結果が欲しかったマウンドで出鼻をくじかれ、若きエースの表情は冴えない。

 この日は3番手の沢村拓一、5番手の今村猛も痛い点を奪われる。沢村は初球が甘く入って二塁打を打たれてからの失点。今村はアルフレド・デスパイネに1ストライクから同じく甘い変化球を左中間スタンドへ飛ばされた。コントロールミスが即長打につながるキューバ打線の怖さを身をもって感じたはずだ。

 明るい兆しを探すとすれば、田中の失点後のピッチングか。スライダーや落ちるボールで空振りを奪い、残り3つのアウトをすべて三振でとる。続く5回も変化球で翻弄して3者連続の空振り三振。立ち上がりに不安があるため、最初は慎重になりすぎてボールが浮いてしまうが、そこさえ乗り切れば強打のキューバ打線でも封じられることは証明できた。

 また攻撃でも4番の阿部はノーヒットとはいえ、第1打席で大きなセンターフライを放つなどボールを捉え始めている。最終回には長野が1死満塁からセンター返しで、ショートへの内野安打をもぎとり、1点を返す一打となった。DHで起用された井端も最終回に一、二塁間へきれいに流し打つなど2安打といい働きをしている。 

 連覇を果たした前回、前々回と日本は1次ラウンドの最終戦にいずれも敗れ、2位通過だった。この日の敗戦をむしろ“吉兆”ととらえ、切り替えて東京に乗りこむしかない。

<2次ラウンド1組日程> ※ダブルエリミネーション方式

ゲーム1 キューバ−オランダ 8日(金)12時
ゲーム2 日本−台湾 8日(金)19時
ゲーム3 ゲーム1の敗者−ゲーム2の敗者 9日(土)19時
ゲーム4 ゲーム1の勝者−ゲーム2の勝者 10日(日)19時
ゲーム5 ゲーム3の勝者−ゲーム4の敗者 11日(月)19時
ゲーム6 ゲーム4の勝者−ゲーム5の勝者 12日(火)19時

(石田洋之)