第3回WBCは10日、2次ラウンドで日本代表がオランダ代表に延長戦の末、16−4で7回コールド勝ちを収め、決勝ラウンド進出を決めた。日本は初回に鳥谷敬の先頭打者ホームランで幸先よく先制すると、その後も一発攻勢で毎回得点。終わってみれば先発全員の17安打で大勝した。日本はラウンド1位をかけ、12日にオランダ−キューバ(11日)の勝者と対戦する。

◇1組
 前田、5回1安打無失点の好投(東京ドーム)
日本代表       16 = 1513114
オランダ代表      4 = 0000040 (7回コールド) 
(日)○前田−内海−山口−涌井
(オ)●コルデマンス−スタウフベルヘン−ヘイエスタク−ファンドリール−バレンティナ
本塁打 (日)鳥谷1号ソロ、松田1号2ラン、内川1号3ラン、稲葉1号ソロ、糸井1号3ラン、坂本1号満塁
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 これまで1本もホームランを打っていなかった打線が1試合で6本ものアーチを放った。大会記録に並ぶ猛打で侍ジャパンが米国行きの切符を真っ先に手にした。

 口火を切ったのは、この日、1番に入った鳥谷敬だ。ここまで大会では1本のヒットも放っていない。ただ、2日前の台湾戦では最終回に四球を選び、同点につながる二盗も決めた。選球眼と足を買われての1番起用だった。

「なんとか塁に出たい気持ちだった。甘い球を思い切っていこうと思った」
 最初の1球を見逃してのファーストスイング。やや外のストレートを叩くと打球はグングン伸びてライトスタンドへ飛び込んだ。1−0。プレーボール直後の先制弾で、大きく流れを呼び込む。

「球場全体の雰囲気が変わった。行けそうな雰囲気になった」
 そう語った稲葉篤紀が2回は1死からライト前ヒットで出塁。続く松田宣浩は初球の高めに浮いた初球を思い切って振り抜いた。当たった瞬間に、それと分かる当たりが左中間スタンドへ突き刺さった。

 こうなると、もう押せ押せだ。打順が1番に戻って、鳥谷がレフト線への二塁打でチャンスをつくると、井端弘和が四球で歩き、一、二塁とランナーがたまる。3番の内川聖一は、前の打席で見逃し三振に倒れた際のチェンジアップを待っていた。
「センターへ強く打とうと考えていた」
 ワンボールからの2球目、狙い球が真ん中に来た。確実にバットでとらえると、打球は言葉通りセンターの頭上へ。バックスクリーン左の最前列に放り込んだ。6−0と点差を大きく広げる3ラン。3本のホームランでオランダ先発のロビー・コルデマンスをKOした。

 お祭りはまだ続く。3回には稲葉がファウルで粘り、フルカウントからの9球目をジャストミート。打球は沸き返るライトスタンドに吸い込まれるソロアーチとなった。なおも4回、相手の守備の乱れもあって一、二塁の好機を迎えると、5番の糸井嘉男が迷わず初球を打った。大きな放物線はライトを守るウラディミール・バレンティンがお手上げポーズを見せるほどの完璧な一打。10−0と4回で大勢は決した。

 アーチ競演でトリを飾ったのは、坂本勇人だ。6回にオランダが4点を返した直後の7回、1死満塁で打席へ。1次ラウンドでは「ちょっとずつズレていた」と本人が明かすように打率.083と不調にあえいだ。ただ、2日前の台湾戦では一時は同点となるタイムリーを放ち、復調の兆しをみせていた。

「低めのボール球に手を出さないように修正した」と2ボール1ストライクから高めのストレートをひっぱたく。打球は観客総立ちの中、あっという間に左中間スタンドへ消えた。鮮やかなグランドスラムで16−4。再び10点差以上をつけ、ゴールド勝ちを決定付けた。
「日本はスモールベースボールと言われたのがウソみたい。おとといのゲーム(台湾戦)の勝ちで神様がご褒美をくれたのかな」
 山本浩二監督も目を丸くする長打攻勢で、パワーが売りのオランダを圧倒した。

 大勝を呼び込んだ先発・前田健太の好投も見逃せない。1次ラウンドの中国戦では5回無失点。完全に状態を上げてきた右腕はストレートとカーブで緩急をつけ、相手の強打者を翻弄。オランダのヘンスリー・ミューレンス監督が「メジャー級」と評したキレのあるスライダーでおもしろいように空振りを奪った。

 特に4番バレンティン、5番のアンドリュー・ジョーンズと日本球界に属する中軸に対しては2打席連続で三振。「シーズン中も対戦しているが、スライダーがいいいし、コントロールが良かった」とバレンティンも脱帽のピッチングだった。終わってみれば強力打線をわずか1安打。9奪三振をマークした。

「今日のほうが内容は良かった。調子は上がってきている」と満足そうに語る右腕に、指揮官は早くも「準決勝で先発させるつもり」と明言した。今大会のエースは前田であることを宣言したかたちだ。その言葉を聞いた24歳は「決勝ラウンドも僕に任せてください」とファンに力強く約束した。

 投打がかみ合うかたちで2次ラウンドを突破し、当面の目標であった「アメリカ行き」はクリアした。3連覇までは、あと2勝。メジャーリーガーの不在で苦戦が予想された今回だが、チーム状態は試合を重ねるたびに良くなってきている。

(石田洋之)

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