こんなに気持ちのいい野球観戦があるのか、というくらいの快感だった。7月7日の東京ヤクルト-広島戦である。

 

 6回が終わった時点でカープは1-7と6点のリードを許していた。あーあ。今日は負けか、と正直言えば諦めていた。ところが、3-8とした9回表、いっきょ6点を奪っての大逆転勝利である。

 

 新井貴浩の代打逆転3ランがバックスクリーン左へと伸びていく時間なんて、もう至福と言うしかない。

 

 それにしても、カープ、強いですね。人呼んで“逆転のカープ”。誰にも文句を言わせない強さである。

 

 だが、この快進撃には、何の死角もないのだろうか。あると言ったら怒られそうだけど。

 

 それでも、ある、と言っておきたい。そもそも“逆転のカープ”は素直に喜ぶべきことなのだろうか。どんなにリードを奪われても、それをひっくり返して勝つ底力があることは認める。すごいことである。

 

 しかし、リードを許すということは先発投手が先に相手に点をやっていることの証しでもある。先制して、中押しして、最後にダメ押しして勝つのが、本当に強いチームでしょう(見ている側は、退屈かもしれないが)。

 

 それよりなにより、何人もの左投手を苦手にしていることが気になる。巨人の田口麗斗、横浜DeNAの今永昇太、石田健大。同じようなタイプの左投手だ。

 

 オールスター直前のDeNA3連戦では、たしかに10日の今永には勝った。しかし、これは代打サビエル・バティスタの起死回生の逆転2ランが出たからで、それまではほぼ抑え込まれていた。11日の石田には7回を3安打2得点に抑えられて、結局負けてしまった。

 

 7月4日には田口にも7回零封を許して完封負けしている(翌日の菅野智之にやられたのは、まぁ仕方がないとしても)。

 

 これは単なる予想にすぎないが、ペナントレースはこのままカープが優勝するだろう。問題はクライマックスシリーズ(CS)である。このままいけば阪神かDeNAが相手だが、私はDeNAが勝ち上がってくると見る。

 

 すると、今永、石田、それに同じ左腕の濵口遥大をぶつけられる可能性がある。ラミレス監督はデータに基づいて選手起用しますからね。

 

 去年のリベンジがあるのだから、CSでは敗退したくない。どうしても日本シリーズで勝ちたい。そう考えると、苦手左腕はなくしておかねばならない。

 

 それから、7日の大逆転にしろ、10日にしろ、最近ホームランで決着がつくことが多すぎないか。「代打・バティスタ」は常にホームラン狙いでいいと思うが、本来は連打連打でつないでいく打線でしょう。

 

 もう1つ。クローザー今村猛が1年間もつ保証はない。そのときの抑えをどうするのか。

 無理やり死角を挙げているように感じられるかもしれないが、とにかく今年は日本シリーズで勝ちたいのである。

 

 東北楽天がくれば、クローザー左腕・松井裕樹を打ちのめしたい。福岡ソフトバンクなら強力先発陣に連打連打を見舞いたいではないか。

 

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)


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