メダリストが集結、“チーム平井”に注目! 〜第89回競泳日本選手権展望〜

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 昨夏のロンドン五輪で11個のメダルを獲得した競泳日本代表の“トビウオジャパン”。世界選手権の代表選考を兼ねた日本選手権(11日〜14日)に、そのメンバーである入江陵介、松田丈志、寺川綾、鈴木聡美らが集う。今大会の注目は、“チーム平井”の面々だ。ロンドン後もオリンピックのメダリストからリオデジャネイロ五輪を狙う期待の若手まで、続々と門下をくぐっている。日本競泳界の一大勢力となった“チーム平井”を中心に好記録や好勝負が期待される。


 ロンドンに続きリオでも日本代表のヘッドコーチを務めることになった平井伯昌。これまで数々のメダリストを育てた名伯楽だが、その教え子の代表格と言えば、2月に現役続行を明言した北島康介だろう。平井に見出された北島はアテネ、北京両五輪で2種目(男子100メートル、同200メートル平泳ぎ)の金メダルを獲得した。その後は平井の下を離れ、米国を拠点に置いていたが、ロンドンでは個人種目のメダルは叶わず、オリンピック3連覇を逃した。一時は現役引退も噂されたが、“チーム平井”に戻ってきた。まだ本調子には程遠く、今年1年は“楽しむ”ことを強調しているが、今大会は50、100メートル平泳ぎの2種目にエントリー。出るからには、両種目の日本記録保持者として、半端な泳ぎは見せられない。日本競泳界の第一人者は、次代を担う後進たちの大きな“壁”となるはずだ。

 そして、“チーム平井”には、もうひとりのベテランが加入した。ロンドン五輪でトビウオジャパンのキャプテンを担い、200メートルバタフライ(銅)と400メートルメドレーリレー(銀)で2つのメダルを獲得した松田丈志である。松田は24年間ともに歩んできた久世由美子コーチと袂を分かち、平井に師事することを決めた。すべては届かなかった世界一へと挑むためだ。松田はバタフライ3種目のほか自由形2種目に出場する予定、今大会はその試金石となるはずだ。

 さらに“チーム平井”には、ピカピカの1年生が加わった。ロンドン五輪400メートル個人メドレー銅メダリストの萩野公介と、200メートル平泳ぎ世界記録保持者の山口観弘だ。平井は、所属の東京スイミングセンターのヘッドコーチに加え、3月からは東洋大の水泳部監督も兼務しており、2人はその東洋大に入学したのである。

 この世代の旗頭・萩野は、ロンドン五輪で、“水の怪物”マイケル・フェルプス(米国)に競り勝ち、銅メダルを獲得した。同種目のメダル獲得は初、高校生としては56年ぶりの快挙だった。今大会、個人メドレー2種目に加え、自由形と背泳ぎも各2種目、計6種目にエントリーしている。得意の背泳ぎでは、順当にいけば、2種目(100メートル、200メートル)でロンドン五輪メダリスト(200メートル銀、100メートル銅)の入江陵介とのメダリスト対決が実現する。萩野は4日間で最大12レースを泳がなければならないことが、懸念材料。だが、タフな日程と戦うのはオールラウンダーの宿命である。

 もうひとりの山口は、100メートル、200メートル平泳ぎで派遣記録を突破しながら、ロンドン五輪出場は惜しくも叶わなかった。同い年の萩野に水を開けられた形となったが、昨秋の岐阜国体男子200メートル平泳ぎで2分7秒01の世界記録を樹立。現在、日本男子で唯一のワールドレコードホルダーとなった。日本短水路選手権でも同種目を制覇。今大会は200メートル平泳ぎでは、ロンドン五輪銅メダリストの白石諒とのトップの座を争う。また目標である“北島超え”は、100メートルでの勝負となりそうだ。

 そして“チーム平井”以外にも、2人の同世代にはもうひとり日本競泳界のホープがいる。今春から早稲田大に進学した瀬戸大也だ。山口同様、オリンピック出場はあと一歩届かなかった。だが、その後の活躍は目ざましい。10月のワールドカップシリーズで、短水路日本新を連発。12月の世界短水路選手権では、400メートル個人メドレーで、萩野を抑えて優勝。加えて200メートル個人メドレーでは、銀メダルを獲得した。2月の日本短水路選手権では、6種目にエントリーし、4種目(400メートル自由形、200メートルバタフライ、200、400メートル個人メドレー)を制覇した。今大会は5種目(200メートル自由形、200メートル平泳ぎ、200メートルバタフライ、200、400メートル個人メドレー)にエントリーしている。メドレーではライバル・萩野と、平泳ぎでは山口と直接対決する。“萩野世代”“山口世代”ではなく、“ダイヤ世代”――。競泳界の新時代を占う戦いになるだろう。

 女子では背泳ぎの寺川綾や自由形の上田春佳など、“チーム平井”の選手に加え、平泳ぎの鈴木聡美、バタフライの星奈津美など個人種目のメダリストが続々と登場する。中でもベテランの寺川が元気だ。1月のコナミオープンで50メートル、100メートル背泳ぎで優勝。日本短水路選手権でも同2種目を制し、女子MVPに輝いた。若手では15歳でロンドン五輪に出場した渡部香生子がいる。ロンドンでは200メートル平泳ぎで準決勝敗退し、悔しさに涙した。ただ、その後は世界短水路選手権の200メートル平泳ぎで銅メダルを獲得。日本短水路選手権では100メートル平泳ぎに加え、100メートル個人メドレーを日本新で制した。勢いに乗る16歳は、日本選手権初制覇を狙う。

 世界選手権の個人種目の代表入りは最大で2枠。しかし、日本水泳連盟はロンドン五輪の個人種目のメダリスト7人に、今大会にエントリーすれば、結果に関わらず世界選手権代表の資格を与えることを決めた。つまり種目によっては、残り1枚しかないバルセロナ行きの切符を争うことになる。ベテランが意地を見せるのか、新星が現れるのか。熾烈を極める選考レースは、新潟・長岡を舞台に4日間行われる。競泳日本一を決める熱き戦いが、明日幕を開ける。

【日本選手権水泳競技大会】
・11日(木) 予選9時30分〜、B決勝・決勝16時〜
       男女50メートルバタフライ
       男女100メートル平泳ぎ
       男子100メートル自由形
       女子400メートル自由形
       男子400メートル個人メドレー
・12日(金) 予選9時30分〜、B決勝・決勝16時〜
       男女50メートル平泳ぎ
       男女100メートル背泳ぎ
       男女200メートル自由形
       女子400メートル個人メドレー
       男子1500メートル自由形
・13日(土) 予選9時30分〜 B決勝・決勝15時〜
       男女50メートル背泳ぎ
       女子100メートル自由形
       男女200メートルバタフライ
       男女200メートル個人メドレー
       女子800メートル自由形
・14日(日) 予選9時30分〜、B決勝・決勝15時〜
       男女50メートル自由形
       男女100メートルバタフライ
       男女200メートル背泳ぎ
       男女200メートル平泳ぎ
       男子800メートル自由形
       女子1500メートル自由形

※会場はすべて新潟・ダイエープロビスフェニックスプール

(杉浦泰介)

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