ボクシングのWBC世界スーパーフライ級タイトルマッチが3日、タイのシーサケットで行われ、王者の佐藤洋太(協栄)は同級8位の挑戦者シーサケット・ソールンビサイ(タイ)に8R1分23秒TKOで敗れ、防衛に失敗した。過去、日本人選手はタイで開催された世界戦は16敗1分と1度も勝ったことがなく、王者として防衛戦に臨んだファイティング原田、海老原博幸も敗れていた。佐藤は日本勢にとって鬼門と呼べる敵地で快挙を達成できず、約1年1カ月守った王座から陥落した。
“マジカルBOX”の異名をとる王者でも完全アウェーの環境でマジックをみせることは叶わなかった。
 相手のシーサケットはどんどん前に出てくるファイター。だが、軽やかなステップでパンチを繰り出す佐藤にとっては決して難敵ではないと見られていた。

 ところが、挑戦者が拳を出すだけで大きく沸き返る会場の雰囲気に飲まれたのか、王者にいつものような動きが見られない。足が止まり、ガードの上からとはいえ、相手の攻撃をまともに受けてしまう。ロープを背負う場面も増え、完全にシーサケットにペースをつかまれた。

 4Rを終えての公開採点では3者が挑戦者を支持。挽回しようと佐藤は接近戦を試みるも、かえって相手の望む展開にハマってしまった。懐に飛び込んでくる相手に思うように腕が伸ばせず、有効打を奪えない。逆に短い距離から左右のパンチを打ってくる挑戦者に追い詰められ、ボディ、フックと当てられる。

 そして7R、ロープ際に追い詰められると、連打をくらい、大ピンチに。8Rにはガードを下げるトリッキーな動きで余力が残っているところを見せたものの、足は動いていなかった。コーナーでラッシュを仕掛けられて防戦一方になり、レフェリーに続行不可能と判断された。

 予想外の完敗での王座陥落。身長、リーチで上回っていることを考えれば、アウトボクシングでリズムを取り戻すプランもあっただろう。だが、東南アジア特有の暑さも影響したのか動きにキレがなく、全く持ち味を出せなかった。これが長年、日本勢が苦しんできたタイの呪縛なのか……。