ボクシングのダブル世界タイトルマッチが6日、東京・大田区総合体育館で行われ、WBA世界スーパーフェザー級では王者の内山高志(ワタナベ)は同級9位の挑戦者ハイデル・パーラ(ベネズエラ)に5R2分15秒KOで破り、7度目の防衛に成功した。これで内山は世界戦8試合中、7回目のKO勝利。“KOダイナマイト”の実力を改めて示した。一方、WBA世界スーパーフライ級王座統一戦は王者の河野公平(ワタナベ)が暫定王者のリボリオ・ソリス(ベネズエラ)に0−2の判定で敗れ、初防衛はならなかった。
<内山、驚異の左ボディ>

 無敗の挑戦者をボディ一発で退けた。5R、パーラが左フックを出してきたところへ、左の拳が脇腹に突き刺さる。後ろ向きに倒れてリング上に這いつくばったベネズエラ人はもう立ち上がれなかった。

「スパーで当たれば95%くらい倒れるパンチ。自信はありました」
 まさに狙いすました一撃だった。一昨年の三浦隆司(現WBC同級王者)戦で右拳を痛めてから、磨きをかけた左はさらに鋭さを増している。

 序盤は予想以上に伸びてくる相手の左ジャブに距離感をつかめなかった。3Rには珍しくジャブをまともに受ける場面もあった。なかなか得意の右を繰り出せない展開ながら、王者は左を合わせてチャンスをうかがう。

 そして4R、内山のワンツーがようやく挑戦者にヒット。ダメージを負い、足がふらついたパーラは何とか逃れるのが精一杯で、試合の流れは完全に王者に傾いていた。

 7度の防衛は日本のジムに所属した選手では歴代5位タイの記録になる。「KO回数や防衛回数にはこだわっていない」と語りつつも、「日本人の世界チャンピオンはたくさんいる。普通の試合じゃアピールできない」と日本ボクシング界を背負って立つ使命感も出てきた。

 所属するワタナベジムの渡辺均会長は「(防衛回数の)日本記録13回(具志堅用高)を抜けるように頑張ってほしい」と期待を寄せる。対戦を熱望していた同級暫定王者のユリオルキス・ガンボア(キューバ)はライト級に転向したため、今後は三浦との王座統一戦で再戦の可能性も出てきた。 

「自分のボクシングをすれば最終的に自分の手は上がっている。決められた試合を勝ちに行くだけです」
 発言や立ち居振る舞いにも王者としての自信と風格が備わっている。圧倒的な強さを誇るKOダイナマイトの快進撃はとどまることを知らない。

<河野、打ち合いに敗れる>

「打ち合いになると思う」
 戦前の河野が予想していた通りの展開だった。2Rには幸先よくダウンを奪った。だが、8Rにダウンを喫して形勢が逆転。ジャッジは1者がドロー(113−113)で、2者がソリスを支持(114−112、115−111)する微妙なものながら、王者として勝つことはかなわなかった。

 立ち上がりから、どんどんパンチを振り回してくる暫定王者に対し、河野も応戦。2Rには前に出てきたところをタイミングよく、カウンターの右がソリスのアゴをとらえる。ベネズエラ人は思わず、片ヒザをついてダウン。河野がペースをつかんだかと思われた。

 しかし、ソリスは構わず打ってくる。河野はカウンターの右フックでダウンの再現を狙うも、3Rには相手の強引な攻めで右を被弾し、足元がふらつく場面が見られた。

 ならばと王者は中盤以降、ボディで相手の出足を止めにかかる。ソリスはクリンチが目立ち、ガードが下がってきた。ボディからのストレートも顔面をとらえ、河野にリズムが出てきた。

 ところが、王者がややリードして迎えた8R、痛恨のダウンを喫してしまう。ソリスの振り回し気味の左フックをくらい、リング中央で倒される。立ち上がった河野も負けじと打ち返すが、試合の行方は分からなくなった。

 さらに痛かったのは10Rだ。河野が頼みの綱としてきたボディ攻撃がローブローと判定され、1点減点が与えられる。「低くはない」と王者は納得できない様子だったが、ボディを打つ回数が少なくなった。最後まで河野は打ち合いを挑むも、ソリスはクリンチで巧みに逃れる。お互いに決定打のないまま、試合終了のゴングが鳴った。

「勝ったと思った」
 判定結果を聞いた河野はリング上で呆然とした表情をみせた。30歳を超え、3度目の正直でようやく巻いた世界のベルト。わずか1試合で王座から陥落し、「今後のことは何も考えたくない」と悔しさが収まらない様子だった。