8シーズン目を迎えたbjリーグも、18、19日の「ファイナルズ」をもってフィナーレを迎える。決戦地である有明コロシアムには、各カンファレンスセミファイナルを勝ち抜いてきた4チームが集結する。イースタンカンファレンス(東地区)からは新潟アルビレックスBB(東地区1位)と横浜ビー・コルセアーズ(同2位)、ウエスタンカンファレンス(西地区)からはライジング福岡(西地区2位)と京都ハンナリーズ(同5位)だ。17日には、前日記者会見が行なわれ、大一番を控えた4チームのヘッドコーチ(HC)たちが、チャンピオンリングへの意気込みを語った。
(写真:ファイナル4進出チームのHCらと河内コミッショナー<中央>)
 新旧最優秀コーチ対決に注目

 東地区のカンファレンスファイナルは、東西地区制になって3度目のファイナルズとなった新潟とクラブ創設から2季連続で勝ち上がってきた横浜というカードになった。新潟は平均得点がリーグ2位、平均失点は同4位であり、横浜はそれぞれ4位と2位の成績だけに、実力はまさに互角。そのなかで注目されるのが今季の最優秀コーチを受賞した新潟のマット・ギャリソンHCと昨季に同賞に輝いた横浜のレジー・ゲーリーHCの采配対決である。

「今季は3連敗から始まり、なかなかいい出だしではなかった。しかし、選手たちに“毎日を大事に練習しよう”と言ってきたことで、チームは1つにまとまり、選手のプレー内容も向上してきた。今はコンディションもいいので、ファイナルズに向けていい準備ができている」

 こう意気込みを語ったギャリソンHCに率いられた新潟は今季、36勝16敗で初めてカンファレンス1位としてレギュラーシーズンを終えた。最大の特徴は日本人選手だけで40点を計算できる攻撃力の高さだ。新潟で7シーズン目を迎えたスモールフォワード(SF)池田雄一を筆頭に、シューティングガード(SG)佐藤公威はともに2桁の平均得点率を誇る。攻撃パターンもインサイド、アウトサイドのどちらかに偏ることがないため、相手チームに的を絞らせない。
 そんな新潟の中心選手は2年連続3度目のリバウンド王に輝いたセンター(C)のクリス・ホルム。ゴール下で圧倒的な安定感を発揮し、今季は初のベスト5にも選出された。彼がいることで、池田や佐藤らシューター陣は迷うことなくシュートを打てるのだ。クリスが存在感を示せば示すほど、新潟のペースになっているといえるだろう。

 横浜の印象として堅守を挙げた指揮官は、「あんな激しいプレッシャーディフェンスはなかなか経験できない」と苦笑する。しかし、勝利へのポイントはしっかりと考えている。
「明日は出だしからフィジカルを全面に押し出して戦う。あとはトランジション(攻守が切り替わる時のこと)で簡単にゴールを許さないこと、そしてピック&ロール(スクリーンを使ったコンビプレー)で崩されないことを意識して戦っていきたい。そうすれば勝てるチャンスがある」
(写真:健闘を誓う新潟・ギャリソンHC<左>と横浜・ゲーリーHC)

 リーグ創設から参戦する新潟悲願のチャンピオンリングを獲得するため、まずは目の前の相手に全力を尽くす。

 対する横浜は2季連続の有明進出を果たした。指揮を執るゲーリーHCは、「チームは優勝を目指し、興奮している」とチーム創設2年目でのタイトル獲得に闘志を見せた。

 昨季、リーグ最少の平均失点を記録した堅守は健在だ。プレッシャーディフェンスといった動きのある守りと組織的な守りを駆使して、相手チームに立ちはだかる。
 ただ、そんな守備重視のチームが今季は生まれ変わった。昨季のリーグMVPのジャスティン・バーレル(身長207センチ)を含む200センチオーバーの選手3人がチームを去ったことで、高さに頼らない違うスタイルを見つけなければならなかったのだ。そこでゲーリーHCが描いた新スタイルが「速くプレーし、コートにたくさんシューターを置いて得点を多く奪う」ことだった。

 そのため、横浜は昨季も所属していたGドゥレイロン・バーンズと早々に契約し、岩手ビッグブルズでプレーしていたフォワード(F)トーマス・ケネディを新たに迎え入れた。バーンズは得点力に優れているだけでなく、周りの選手もうまく生かせる。ケネディは1対1に強く、アウトサイドのシュートも得意としている。さらに指揮官が「この選手を抜きにすることはできない」と称賛するのが、キャプテンでSGの蒲谷正之だ。今季は、リーグ最高3ポイントシュート成功率を達成し、横浜を牽引した。
 このバーンズ、ケネディ、蒲谷の3人はその貢献度の高さから“ビッグ3”と称される。彼らがチームを引っ張り、周囲の選手がそれをサポートすることで、横浜はまさに一枚岩の団結力を誇っているのだ。

「新潟はどこよりも波のないプレーをしてきた。自分たちからは決して崩れないチームという印象だ。サイズもあるので、我々はベストなプレーをしないと勝てないだろう。オフェンスでは確実にシュートを決め、ディフェンスではリバウンドをサイズのある相手からしっかりと取ることが重要だ」 
 新潟戦への対策をこう述べたゲーリーHC。昨季は創設1年目のチームを3位に導く快挙を成し遂げたものの、その目にはチャンピオントロフィーしか映っていない。

 挑戦者として臨む福岡VS雪辱期す京都

 ウエスタンカンファレンスのファイナルにはチーム創設6季目で初の有明進出を決めた福岡と連覇を狙う琉球ゴールデンキングスの連覇下して2季連続のファイナルズとなった京都が激突する。

「bjリーグの聖地である有明で戦えることを大変うれしく思う」
 福岡の金澤篤志HCは噛みしめるように語った。

 今季は開幕3連敗を喫し、先行きが怪しまれたものの、6連勝を記録して持ち直すと、安定した戦いで西地区2位でレギュラーシーズンを終えた。チームの平均得点はリーグ6位、平均失点は10位とずば抜けた戦力を誇っているわけではない。しかし、外国人選手と日本人選手がうまくかみ合い、チーム初の有明までたどり着いた。

 bjリーグでのプレー経験が豊富なパワーフォワード(PF)レジー・ウォーレンはインサイドのプレーで圧倒的な強さを発揮する。また3ポイントシュートも高確率で沈めるなど、攻守における万能性が魅力だ。Cジュリアス・アシュビーはリーグ5位のブロックショットで福岡の最後の砦となっている。日本人選手ではG仲西淳が闘将としてチームを牽引し、G竹野明倫は高精度の3ポイントシュートとスキルフルなドリブルで相手ディフェンスを切り崩す。

「京都は元NBA選手を2人擁し、日本人選手も能力が非常に高い。Fデイビッド・パルマーもチャンピオンズリングを持っている。浜口炎HCもファイナルズでの経験が豊富。自分たちはチャレンジャーとして、京都戦にすべてをささげていく」
 こう語る金澤HCが、外国人選手と日本人選手を指揮し、有明に華麗なハーモニーを響かせられるか。
(写真:有明初勝利を狙う京都・浜口HC<左>とファイナルズ初出場の福岡・金澤HC)

 一方の京都は2季連続のファイナルズだが、浜口HCが「非常に苦しんだ」と振り返るようにレギュラーシーズンは5位でフィニッシュした。開幕からまさかの8連敗を喫したが、そこから脅威の8連勝で勝率を5割に戻すなど、浮き沈みの激しいシーズンだった。

 その大きな要因は、11人中8人の選手を入れ替えるというチーム改革によるところが大きい。パルマーや元NBAプレーヤーのCマーカス・クザン、日本人ではSG岡田優など即戦力を獲得したものの、チームとしての完成度がなかなか上がらなかった。

 しかし、浜口HCは「POになってチームとしてまとまってきた」と手応えを口にする。それは、西地区セミカンファレンスで昨季王者の沖縄との第3戦にまでもつれ込む接戦を制したからに他ならない。特に前後半5分ずつという変則的な第3戦では、0−9のビハインドを逆転する粘りを見せた。

 京都のデータを見て特徴として挙げられるのが、選手全員がコンスタントに出場機会を得ているところだ。指揮官は「どのメンバーを起用してもゲームをつくれるようにした」と説明した。その成果で、終盤は調子のいい選手を見極めて起用し、勝ちにつながる試合運びができていた。

「福岡は非常に個人能力の高い、どこからでも得点がとれるチーム。もちろん1対1で頑張ることも大事だが、チームディフェンスでなんとか失点を抑えていきたい」
 浜口HCは福岡戦のポイントをこう語った。昨季のファイナルズでは、地区決勝、3位決定戦ともに敗れる屈辱そ味わった。今季はもちろん、有明での2連勝を狙う。

「どこが勝っても初優勝。今までやってきたバスケを、有明の地で悔いが残ららないようにぶつけてほしい」
 河内敏光bjリーグコミッショナーは、HCたちにこうエールを送った。昨季王者の沖縄が姿を消した時点で、本命はいない。果たして、栄光のトロフィーを掲げるのはどのチームか。

〜2012−2013シーズン ファイナルズ(有明コロシアム)〜

5月18日(土)
<ウエスタン・カンファレンス ファイナル>(14:10〜)
 ライジング福岡vs. 京都ハンナリーズ
<イースタン・カンファレンス ファイナル>(18:10〜)
 新潟アルビレックスBBvs.横浜ビー・コルセアーズ

19日(日)
<3位決定戦>(13:10〜)
<ファイナル>(17:10〜)