19日、東京・有明コロシアムでbjリーグ2012−13ファイナルが行われ、創設2季目の横浜ビー・コルセアーズがライジング福岡を下し、初優勝を収めた。MVPには横浜のSG蒲谷正之が選ばれた。また、3位決定戦では京都ハンナリーズが新潟アルビレックスBBを下した。
(写真:胴上げされる横浜・ゲーリーHC)

◇ファイナル
  蒲谷、両軍最多の35得点
横浜ビー・コルセアーズ 101−90 ライジング福岡
【第1Q】23−21【第2Q】17−23【第3Q】28−16【第4Q】33−30
 天国の父にささげる日本一とMVPだ。蒲谷は両軍最多の35得点の活躍で、横浜を頂点へ導いた。昨年6月、父・修平さんが他界。蒲谷のプレイが大好きで、試合もよく見にきていた。父の財布を整理していると、中からバスケットボールの技術に関するメモが見つかった。「おそらく、僕にアドバイスしようとしたんでしょう。それを見て、初心に帰って、一からやり直そうと強く思った」。その結果、チームは日本一となり、個人としては3ポイントのタイトルを獲得。「天国にいる父が見守ってくれていたんじゃないかな」と語る蒲谷の表情は、充実感で溢れていた。

 第1Qから蒲谷は全開だった。3ポイントを3つ沈め、バスケットカウント、2ポイントを含めていきなり16得点をマークしたのだ。本人も「今日はちょっと感覚が違うなとは感じていた。ゾーンに入れたというか、打てば入るという感じだった」と驚きを隠さなかった。そして、スタンドからも蒲谷がシュートを決めるたびにどよめきが起きていた。

 そんなキャプテンの活躍で第1Qをリードして終えた横浜だが、第2Qでは高い攻撃力を誇る福岡に押し込まれた。4連続ポイントを2度許すなど、40−44とリードを奪われて前半を終えた。少しリズムが狂った要因として、レジー・ゲーリーHCは「蒲谷にボールが集まりすぎていた」ことを挙げた。そこで、指揮官はハーフタイムにオフェンス面での修正を行った。

「攻撃のバランスがよくなかった。調子のいい蒲谷だけでなく、Fトーマス・ケネディやGドゥレイロン・バーンズも使うように指示した」
 指揮官の指示を受けた蒲谷は第3Qから相手をひきつけた上でパスを味方に出すようになった。蒲谷にとっては「いつもどおりのチームプレイ」だった。

 蒲谷がバランスをとることで、第3Qでは蒲谷8点、バーンズ6点、G木村実2点、Cファイ・パプ・ムール8点、G山田謙治4点とチーム全体で攻めるかたちが増えた。ここで一気に28点を奪い、68−60と8点を勝ち越しに成功した。
 第4Qはファウルゲームを仕掛けてくる福岡に対し、横浜はバーンズがフリースローを確実に決めて差を詰めさせない。得点を100点台に乗せ、直後の相手の攻撃をしのぐと、横浜にとって歓喜のブザーが響き渡った。

「10カ月という長い戦いのなかで、互いを信じ合って優勝できた仲間を誇りに思う」
 ゲーリーHCは感慨深そうに選手たちを称えた。そのなかでも別格だったのが蒲谷だろう。指揮官が「間違いなく、リーグトップのガード」と称賛すれば、ともにチームを牽引したバーンズも「今日の試合を見れば、MVPは彼のもの」と賛辞を惜しまなかった。

「最高のシーズンだった」
 蒲谷は噛みしめるように語った。チームはしばしの休息を経て、来シーズンに向けて動き出す。その時も地元出身でキャプテンというまさに横浜の象徴である蒲谷が、先頭に立ってチームを引っ張っているに違いない。

◇3位決定戦
 京都、守備立て直して過去最高の3位
新潟アルビレックスBB 72−79 京都ハンナリーズ
【第1Q】22−18【第2Q】19−16【第3Q】12−21【第4Q】19−24

 京都が地区決勝で崩れた守りを修正し、昨季を上回る3位でフィニッシュした。

 第1、第2Qはリバウンド王Cクリス・ホルム擁する新潟にゴール下を支配される苦しい展開。第2Qでは5連続ポイントを献上するなど、なかなか主導権を握れなかった。結局、京都は34−41とリードされて前半を終えた。

 続く第3Qは前日の地区決勝で1得点しか挙げられなかった印象の悪い10分間だった。キャプテンのG瀬戸山京介は「ハーフタイムのロッカールームでどこからか“昨日みたいにならないように集中しよう”という声が出た」とチーム全体が同じ轍を踏まないという意識だったことを明かした。

 浜口炎HCは「リバウンドを確保しよう。ディフェンスはもっと前からプレッシャーをかけろ」と指示を与えて、選手たちを再びコートに送り出した。
 すると、京都の選手たちの動きは見違えた。新潟の選手がペネトレイトでインサイドに仕掛けてくるところに複数の選手がプレスをかけ、しっかりと手も出していた。これで相手のシュートミスを誘い、体を張ってリバウンドを確保。新潟にいいかたちをつくらせず、12得点に抑えた。

 守りが安定したことで攻撃にもリズムが出た。片岡大晴やデイビッド・パルマーらが得点を重ね、ジーノ・ポマーレのダンクも飛び出すなど、21得点。55−53とスコアも逆転した。前日の“魔の第3Q”の呪縛から解き放たれた京都は、第4Qも終始、ペースを握ったまま勝利を手にした。

「なかなか安定しなかったシーズンだったが、最後はチームがひとつになって戦い、勝って終われてよかった」
 瀬戸山はホッとしたように試合を振り返った。前日の悔しい敗戦から心身ともに立て直す必要があったが、浜口HCは「選手たちはよくカムバックしてくれた」とそれをやり遂げたチームを称えた。そして「シーズン通して足を運び声援を送って下さったブースターの皆さんには、感謝の気持ちで一杯」とブースターへの感謝も忘れなかった。
(写真:相手と競り合う京都・瀬戸山<右>)

 レギュラーシーズンで5位に沈みながら、プレイオフにかけてまとまったチーム力は来季につながる。有明で2連勝して、ブースターに最高の笑顔を届けるため――京都の新たな戦いの幕が開ける。