4日、ブラジルW杯アジア最終予選第7戦が埼玉スタジアム2002で行われ、日本代表(FIFAランク30位)はオーストラリア代表(同47位)に1対1で引き分け、5大会連続のW杯出場権を獲得した。試合は序盤から日本が攻勢を仕掛けるものの、決定機を生かせず無得点で後半に突入。後半も日本がボールを支配したが、37分、MFトミー・オアーに先制点を奪われ、そのままタイムアップかに思われた。しかし、終了間際に獲得したPKをMF本田圭佑(CSKAモスクワ)が沈め、劇的ドローに持ち込んだ。日本は勝ち点1を追加してB組2位以上を確定。3大会連続で世界最速のW杯出場となった。

 本田、値千金の同点PK弾!(埼玉)
日本代表 1−1 オーストラリア代表
【得点】
[日] 本田圭佑(90分)
[オ] トミー・オアー(81分)
 金髪の背番号4が日本をW杯へ導いた。4試合ぶりの代表戦となった本田が持ち前のキープ力で前線の起点となり、チームのリズムをつくった。所属クラブの試合から中2日の強行軍が不安視されたがフル出場。最後は重圧のかかるPKを沈めるメンタルの強さを見せつけた。

 日本は序盤からオーストラリアを押し込んだ。前半16分、MF遠藤保仁(G大阪)が本田の横パスを受けてから鋭い切り返しで相手のマークをかわし、左足でミドルシュートを狙うが、わずかにゴール上へ。19分にはMF香川真司(マンU)、本田、MF岡崎慎司(シュツットガルト)と細かくつないでPA内に侵入し、最後は香川が右足で狙ったが、GKマーク・シュウォーツァーに右手1本で弾かれた。いずれもゴールとはならなかったものの、ブルガリア戦で見られなかったゴールに向かう積極性が見られた。

 守りはDF今野泰幸(G大阪)が相手のキーマンFWティム・ケーヒルを封じ、放り込まれるロングボールも確実に跳ね返していたが、34分、ピンチを招く。FWロビー・クルースに裏へ抜け出され、GKと1対1に。しかし、これは前に出てきたGK川島永嗣(リエージュ)が至近距離のシュートを手に当てるファインセーブ。両チームの守護神の活躍もあり、試合はスコアレスのまま折り返した。

 後半も優勢に進めた日本だが1点が遠かった。後半14分、香川がPA内左から狙った右足シュートがクロスバーを直撃。後半18分には、本田が自ら獲得したFKを直接狙ったが、ボールはわずかにクロスバーの上へ外れた。なかなか均衡が崩れない状況にアルベルト・ザッケローニ監督は35分、大胆な采配で活性化を図る。前田に代えてDF栗原勇蔵を投入してセンターバックに入れ、今野を左サイドバック、DF長友佑都(インテル)を左サイドハーフにポジションチェンジした。これにより前線は1トップに本田を据え、2列目は右から岡崎、香川、長友の布陣に。長友に攻撃を重視させるかたちで1点を取りに出た。

 だが、逆に思わぬかたちでオーストラリアに先制を許した。36分、左サイドを仕掛けたオアーの山なりのクロスが懸命に伸ばす川島の腕をかすめてそのままゴールインしたのだ。負ければ予選突破は持ち越しとなる。埼玉スタジアムに嫌な空気が漂い始めた。
 1点ビハインドとなった日本は40分、内田に代えてFWハーフナー・マイク(フィテッセ)、42分には岡崎に代えてFW清武弘嗣(ニュルンベルク)を投入。立て続けに攻撃的な選手を入れてオーストラリア守備網をこじ開けにかかる。

 そんなあきらめない姿勢が結実したのは45分だった。本田が右サイドから左足で上げたクロスがDFマッケイのハンドを誘い、PKを獲得。自らキッカーを務め、ゴールど真ん中に蹴り込んだ。ブラジル行きを決定づける同点弾に、6万2172人が詰めかけた埼玉スタジアムが揺れた。そして、1対1のままタイムアップを迎えた瞬間に再びの大歓声。日本が勝ち点1を積み上げて自力でブラジル行きのチケットを手にした。

「けっこう緊張していた。真ん中に蹴って取られたらしゃあないと思っていた」
 ヒーローは値千金のゴールをこう振り返り、「勝利できなかったことは残念でしたが、W杯に行くことを決定できて良かった」と喜びを口にした。類まれなフィジカルを生かして簡単にボールを失わず、相手を引きつけてパスをさばく展開力も光った。そして両チーム最多のシュート数7本を放ち、貪欲にゴールを狙う姿勢でチームを引っ張った。

 ザッケローニ監督も「日本人離れしたフィジカルの強さでボールが収められることが他の選手とは違うクオリティー」と本田の存在感を改めて評価した。また長友が「(PKは)圭佑なら決めると思っていたので何の心配もなかった。蹴ったのは真ん中。それがメンタル(の強さ)を物語っている」と語れば、今野も「(本田が入ると)デカい。(ボールが)落ち着くし、相手も取りにいきたくてもいけないみたいな感じだった」と絶賛した。

 日本は11日に最終予選イラク戦を経て、ブラジルで開催されるコンフェデレーションズカップに臨む。グループステージではブラジル、イタリア、メキシコという強豪と対戦できる実力を試す絶好の機会だ。本田は「みなさんあまり期待していないかもしれないが、僕は優勝するつもりで行く」とサポーターに宣言した。本田とともにザックジャパンはさらなる高みを目指し続ける。