残念でした。CSファイナルステージでの敗退。多くの論者が指摘したように、横浜DeNAアレックス・ラミレス監督は、短期決戦らしい果敢な采配が功を奏した。一方、カープの緒方孝市監督は、やはり、シーズン中の選手起用の発想から大きく変わることはなかった。これは、昨年の日本シリーズでも同様である。短期決戦2連敗というのは、反省すべきことだろう。

 

 ただ、私は、直接の敗因は安部友裕の故障離脱だったと思う。石井琢朗前コーチが「下位打線の核」と評した安部がいなくなって、明らかに得点力が落ちてしまった。

 

 鈴木誠也のケガのときは、松山竜平がものの見事に4番の代役を果たしたが、代役を担った西川龍馬には、まだ安部の貪欲なまでの迫力を求めるのは無理なのだろう。西川には来季に期待する。

 

 ところで、かの黒田博樹氏は、こう書いている。

 

「広島は、左の中継ぎ投手がいなかったのが、響いたのではないか、と思う。(略)例えば(第6戦の)5回、筒香に本塁打された場面だ。(略)ここで筒香という場面で、1人、左投手がいれば…と思ってしまった」(「日刊スポーツ」10月25日付)

 

 そして、「去年も同じだったが、課題ではないだろうか」として、稿を閉じている。

 

 これは、きわめて重要な指摘である。例えば、メジャーリーグを見ていると、肝心なときに腕の長い左下手の変則派が出てくるじゃないですか。左打者一人打ち取るためにメジャーに生き残っているような投手。たしかに、ああいうのがいたら、ピンチでの筒香は打ち取れたかもしれない。

 

 そう思いながら、今年のドラフトを見てみよう。

 

 1位の中村奨成は本当によかった。ただ、ときおり、捕手がだめでも内野が十分できる、という論評をみかける。とんでもない話だ。彼のあの肩とフットワークは、まぎれもなく「天性の捕手」のものである。

 

 それはさておき、2位、3位、5位、6位と投手である。ついでに、育成は、1位から3位まで、全員投手だ。

 

 では、黒田氏がポイントにあげた「左投手」は、この中に何人いるでしょうか。

 

 正解は、0人である。何度資料を見直しても、全員「右右」(右投げ右打ち)となっている。

 

 昨今、「育成のカープ」ということで、カープのドラフト戦略を持ち上げる議論も多い。

 

 私は、今年のオープン戦で床田寛樹を見たときには、びっくりした。こんないい左投手を3位で獲ったのか。うまくいけば、クリス・ジョンソンではないか。すばらしいスカウト力だな、と(残念ながらヒジを故障してしまったが)。

 

 今年は床田のような隠れた逸材はいなかったのかもしれない。それにしても1人くらい左を獲っておいてもよかった。それもまた、ドラフト戦略のうちではないだろうか。

 

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)


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